ポーランド映画祭2022が開幕 アンジェイ・ワイダ監督作、コッポラの「ドラキュラ」、ウクライナ戦争を考える作品など上映
2022年11月24日 13:00
日本未公開作からクラシック、そして最新のポーランド映画を紹介する「ポーランド映画祭2022」が11月22日に開幕した。
2012年に始まり、今年で11回目を迎える今年は、本映画祭の監修イエジー・スコリモフスキが、今年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した「EO(原題)」をはじめ、「ウクライナ戦争を考える」と題し、アグニエシュカ・ホランドの「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」など全10作品が上映される。
ポーランド広報文化センター所長のウルシュラ・オスミツカ氏は「今回、米国アカデミー賞のポーランド代表に選ばれているイエジー・スコリモフスキ監督の『EO(原題)』、評論家から高く評価されたダミアム・コツル監督の『パンと塩』、ダンプリングスのボーカルでもあるユスティナ・シフィエンスのデビュー作となったトマシュ・ハボウスキ監督の『愛についての歌』といった最新作を上映できることは、この上ない喜びです。そして皆様には、非常に特別な一本をお勧めしたいと思います。それはアグニエシュカ・ホランド監督の『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』という映画です。この作品はソビエト連邦の全体主義について描いたもので、現在ウクライナで行われている戦争と完全に適合しています。映画をご覧になって、ポーランドへの関心を一層強めることを願っています」と見どころを語る。
23日には、アンジェイ・ワイダ監督がポーランド文学の最高傑作と言われるアダム・ミツキェビチの長編叙事詩を映画化した「パン・タデウシュ物語」が上映され、ポーランド文化、歴史の専門家である久山宏一氏が解説を行った。
「あらゆるレベルでの争いのむなしさを描いた物語。久々に本作を観て、恋愛、財産、時には国家対国家の争いを含め、人間は和解し合わないといけない、争うことの愚かしさを感じた」と感想を述べた久山氏。
本作のテーマについて、「(原作者の)ミツキェビチは、『未来に備えるに際しては、思いを過去に引き戻す必要がある。(中略)しかし、過去に溺れてはいけない、未来への助走でなければならない』と述べています。ワイダ監督が20世紀が終わるときに『パン・タデウシュ』を映画化したのか考えると、ミツキェビチと同郷のポーランド東部出身であったこと、1998年に過去に目を向ける必要性を感じ、我々は誰なのか、どこに向かっているのかという問いに答えようと考えた。それは、ちょうどポーランドがヨーロッパの一部になろうとしていた時代に、ポーランド民族の独自性とは何かを考えるため。そして、一番大事なのは、原作の詩で書かれた韻文を全くそのまま現代語訳しないという大胆な決断がなされたこと。ポーランドの観客は200年前のポーランド語を2時間半にわたって聞き続ける。しかもそれを十分に理解できるいう稀有な体験をしたと思います」と説明した。
本作を含め、ポーランドの国民的作曲家ボイチェフ・キラルの特集として、ワイダ監督作、フランシス・フォード・コッポラ監督の「ドラキュラ(1992)」も上映される。
「キラルがワイダ監督のために、初めて音楽を提供したのは、1975年の『約束の土地』です。以後、5回共同作業を行っており、その数は多いわけではありませんが、ワイダ監督の作風は非常に多彩で、戦争もの現代もの文芸ものという3ジャンルを行き来し、作品のテーマに合わせて撮影監督と作曲家を選びました。キラルとコンビを組んだのは、19世紀が舞台の『約束の土地』『パン・タデウシュ物語』や戦争中が舞台の『愛の記録』と『コルチャック先生』など。ワイダ監督にとってキラルの音楽とは、これらの時代を描写するものだったのでしょう。『約束の土地』と、同じ時代のルーマニア、イギリスが舞台の文芸映画『ドラキュラ』でキラルに音楽を委嘱したフランシス・フォード・コッポラも、同じようにこの作曲家を評価していたのかもしれません」と分析した。
本映画祭は11月27日まで、東京都写真美術館ホールで開催。詳しいラインナップ、スケジュールは公式サイト(http://www.polandfilmfes.com/)で告知する。
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