【「ファイブ・デビルズ」評論】冷たい湖で泳ぐ女と火を放った女の愛、時をかける娘 ジャンルレスな妖しい魅力
2022年11月19日 08:00

「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマ、「TITANE チタン」のジュリア・デュクルノーらを輩出したフランスの名門校FEMIS脚本コース出身のレア・ミシウス監督による、初の日本劇場公開作だ。
「ファイブ・デビルズ」という山々に囲まれた北の町が舞台。高校時代に新体操で活躍し、現在は水中エアロビクスの講師をしているジョアンヌ。消防士の夫との間に生まれた娘のヴィッキーは香りに異常な執着を持ち、その嗅覚に不思議な力があることがわかる。ある日、夫の妹ジュリアが約10年ぶりに一家のもとを訪れたことから、家族のパンドラの箱が開く。
ミシウスはアルノー・デプレシャン、ジャック・オーディアール、クレール・ドゥニらフランスの名匠たちの脚本を手掛けており、そのストーリーテリングの才能は既に折り紙付き。「ツイン・ピークス」「シャイニング」「アス」など、傑作スリラーへのオマージュを公言しており、田舎町の閉塞感、恐ろしくも美しい“異形”のものたちへの視線、そして登場人物たちの秘められた愛と情欲を35ミリフィルムで映し取る。
主人公の少女ヴィッキーが母ジョアンヌの過去にタイムリープする、という超能力が物語の軸となる。娘を連れ、冷たく澄んだ冬の湖での水泳を愛するジョアンヌ。そして映画の冒頭では彼女が激しい火事を体験したことが示唆される。物語の早い段階でジュリアが放火したと明かされるのだが、その理由は――。白人のジョアンヌとセネガルからの移民の夫ジミー、寒色と暖色を効果的に用いた映像など、視覚的にもさまざまな対比が確認できる。
どこにでもありそうな小さな町を舞台に、スリラー、SF、ラブストーリー、家族の物語、人種差別や同性愛差別問題など、複合的な要素を巧みに織り込み、保守的な社会で“正しい”とされる規範から外れ、密かに苦悩する人物たちが奏でる悲しく甘美な物語に魅了された。「アデル、ブルーは熱い色」で仏新世代のトップ女優の一人となったアデル・エグザルコプロス、ヴィッキーを演じた子役のサリー・ドラメの抜群の存在感にも注目だ。
(C)2021 F Comme Film - Trois Brigands Productions - Le Pacte - Wild Bunch International - Auvergne-Rhone- Alpes Cinéma - Division
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