高齢者売春クラブを描く、実在の事件をもとにした群像劇「茶飲友達」 23年2月公開&特報完成
2022年10月21日 12:00
13年10月、高齢者売春クラブが警視庁に摘発された。クラブの会員は男性1000人、女性350人、最高齢は88歳。まさに超高齢化社会の日本が抱える、老人の孤独死、介護問題などの不安が反映された事件として、話題になった。長編デビュー作「燦燦 さんさん」が、14年の第38回モントリオール世界映画祭に正式招待され、「ソワレ」が評判を呼んだ外山監督が、同事件をもとに、“擬似家族”と化した高齢者専用売春クラブを通して、現代社会に横たわる閉塞感や、高齢者と若者がともに抱える寂しさを描き出す。
本作は、ワークショップでキャスティングされた俳優たちとともに、商業映画とは一線を画す作品を世に届けてきたENBUゼミナール「シネマプロジェクト」の記念すべき10作目。これまで同プロジェクトは、上田慎一郎監督作「カメラを止めるな!」をはじめ、今泉力哉監督作「退屈な日々にさようならを」、二ノ宮隆太郎監督作「お嬢ちゃん」などを製作してきた。
29歳の佐々木マナは、高齢者専門のコールガールクラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」を設立。新聞の三行広告に「茶飲友達、募集」と掲載し、集まってきた男性のもとへ、高齢女性を派遣するビジネスを始める。マナは「世の中の保健室を作りたい。誰でも逃げ込める場所を」という思いから、ひとりでも多くの孤独な老人を救うという理想を掲げ、シニア世代の影のセーフティネットの役割を担うようになる。
「ティー・フレンド」に在籍する通称“ティー・ガール”たちのなかには、介護生活に疲れた女性、ギャンブルに依存した女性ら、さまざまな事情を抱える人々がいた。一方、マナの下で「茶飲友達」を運営する若者たちもまた、出口の見えない社会のなかで、閉塞感を抱えて生きていた。そんなままならぬ高齢者や若者を束ねるマナは、彼らを“ファミリー”と呼び、擬似家族のような絆を育んでいく。
NHK連続テレビ小説「わろてんか」や映画「弥生、三月 君を愛した30年」の岡本玲が、ワークショップのオーディションを勝ち抜き、高齢者の孤独に寄り添いながら、自身も心に寂しさを抱え、ファミリーのなかに居場所を求めるマナを演じた。そのほかワークショップには、応募総数677人から選ばれた、年齢差57歳という幅広い世代のキャスト33人が参加。撮影前に行われたクラウドファンディングでは、製作応援サポーター767人、目標額をはるかに超える800万円以上が集まるなど、インディーズ映画ファンの間で注目が高まっている。
特報では、マナの「孤独を抱えた高齢者と若者たちが家族になった」というナレーションをバックに、「茶飲友達」のビジネスを企てる人々の日常を活写。やがて、ファミリーの平穏な日々を揺るがす出来事が起こり、「常識とか、皆洗脳されてばっかだから、誰も幸せそうじゃないんじゃん!」と怒りを爆発させるマナの姿が切り取られている。ティザービジュアルは、男性が下着姿のティー・ガールの胸に手をあてる写真に、「誰だって、ひとりは寂しい。」というコピーが重なり、不思議な温かみを感じさせる仕上がりだ。
「茶飲友達」は、23年2月に東京・渋谷のユーロスペースほか全国で順次公開される。岡本、外山監督のコメントは、以下の通り。
ワークショップオーディションから始まりコロナ禍での撮影中止を乗り越え、大切に育ててきた「茶飲友達」がついに完成しました。万人が納得する正しさを求められる社会で、傷つきながら器用に生きる現代人。目を逸らして投げ捨てられてきた痛みを拾いあげた映画です。時にぶつかり合いながら、スタッフキャスト、そしてクラウドファンディングに参加してくださった皆様と、みんなで愛を注いだ作品です。多くの方の目に留まることを切に願います。
いつか高齢者が「おじいさん・おばあさん」の役割を脱ぎ捨てた映画を作りたいと願っていました。私がシニアの光と影や若者の閉塞感を撮り続けてきた中で、もっとも快活で愛おしい映画です。老いも若きも、誰だってひとりは寂しい。それなのに社会が、法律が、同調圧力が、人々をより孤独に向かわせて生きづらい世の中にしていると私は思います。今こそ「茶飲友達」をお届けしたいです。
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