「King Gnu」井口理、当て書きされた役で映画初主演 「ひとりぼっちじゃない」で馬場ふみか&河合優実と共演
2022年9月13日 08:00
人気バンド「King Gnu」の井口理が映画初主演を務め、「世界の中心で、愛をさけぶ」「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」などで知られる脚本家・伊藤ちひろの初小説が原作の「ひとりぼっちじゃない」が、2023年春に公開されることが決定した。初監督の伊藤が脚本も兼ね、行定勲(「窮鼠はチーズの夢を見る」「ナラタージュ」)が企画・プロデュースを担当。馬場ふみかと河合優実が共演することも発表された。
原作は、伊藤監督が10年かけて執筆した、不器用でコミュニケーションがうまくとれない歯科医師・ススメの日記形式の同名小説(KADOKAWA刊)。映画脚本を執筆する際に、ススメを井口に当て書きしたという。「劇場」「余命10年」などに出演してきた井口は、伊藤監督のロケハンに同行するなど、並々ならぬ意欲で役を構築した。馬場(「てぃだ いつか太陽の下を歩きたい」)はススメが恋をする謎多き女性・宮子、河合(「少女は卒業しない」)は宮子の友人でありながら、ススメを惑わせる蓉子を体現。そのほか相島一之、高良健吾、浅香航大、長塚健斗(「WONK」)、じろう(「シソンヌ」)、盛隆二、森下創、千葉雅子、峯村リエが共演した。
歯科医師のススメは、マッサージ店で働く宮子に恋をする。しかし、彼女は部屋に鍵をかけず、突如連絡が取れなくなったりする、つかみどころがない女性だった。それでも彼女と抱き合っていると、ススメは自分を縛っている自意識から解放される気がしていた。自分で自分を理解できないのに、宮子が理解してくれていることに喜びを感じる一方で、自分は彼女を理解できていないと思い悩むススメ。ある日、蓉子はススメに、宮子の身に起きた驚きの事実を告げる。
あわせて披露された予告編では、謎めいた宮子に恋をするたび、ススメの日常が歪んでいくさまが切り取られている。ススメの狂気に満ちた笑い声とともに、道路に横たわる女性、車椅子に座るススメ、「誰か来たね」と呟く宮子など、意味深なカットが連続。「恋の果てにあるのは――純愛か? 狂気か?」というテロップがおさめられ、甘美で不穏な世界観が垣間見える映像となった。本ビジュアルは、寄り添いながら眠るススメと宮子の幸せなワンシーンを写しながらも、ふたりの姿が歪み、移ろっているような仕上がりとなっている。
「ひとりぼっちじゃない」は、23年春に公開される。井口、馬場、河合、伊藤監督のコメント(全文)は、以下の通り。
本作の主人公、ススメとの出会いが自分にもたらしたものはとても大きかった。人とコミュニケーションが取れない彼に向き合った約半年という時間の中で、自分自身が今まで人に伝えられず蓋をしていた気持ちとも同時に向き合うことになったからだ。自分と向き合うということ、それは今まで極力避けてきたことだったが今回の撮影を終えて、それがとても大きな財産になったと実感している。
コミュニケーションがうまくいかないもどかしさは誰しもが感じるものであり、そこで生まれる葛藤はおそらく今回ススメという人間として形を成した。この作品に関わった全ての人に、出会いに、感謝します。そしてみなさんがご覧になったとき、少しでもやさしい気持ちで明日を生きていけますように。映画が完成した今、そう強く願います。
当初は、一見すると柔らかくて温かいようで、内面はすごくドライで冷たさを持っている宮子をどう演じればいいのか戸惑いましたが、伊藤ちひろ監督との本読みや衣装合わせを進めていく中で、実は自分の本来持っている性質に近い部分があると気付きました。
そのことに恐ろしさを覚えつつも、この役を演じられたことに運命めいたものを感じています。監督の創り上げる世界にどっぷり浸かりきっての撮影は、苦しくもあり宝物のようでもあり、不思議な時間でした。一人でも多くの方にこの作品が届きますように。
お話をいただいて脚本を読み始めたとき、すぐに心奪われたのを覚えています。語弊を恐れずいえば、繰り出される数々の「ヘン」な描写に胸が躍り、また新しく、興味深い本に出会えたことが嬉しかったです。
井口さんと馬場さんとそれぞれまったく違うパーソナリティを持ち込み、お互いの色を混ぜた結果どうなるのか全くわからない中で起こることを楽しんでいました。
完成を見て、伊藤ちひろ監督の感性をどこまで素直に、純粋に保てるかの戦いだったんだなと改めて感じました。
純粋さはいつでも強いものを産むなと思います。ぜひご覧ください。
相手の真意を察することの難しさ、妄想は広がっていくけど、なかなか答えに辿り着けない、そういう経験をしたことのある方は多いはず。これが恋となれば、ひどく自分の感情がこじれていく。相手の表情や言葉にいくら注意を向けても心を丸ごと見透すなんて不可能だから、コミュニケーションの向き合い方にうまく折り合いをつけられないと苦しくなっていく。その感覚をそのまま映画にしようと思いました。
初めて監督として立つ現場で限られた時間の中いくつもの判断を下していくことは、とても困難なことでしたが、この作品はキャストに恵まれました。
捉えどころのない漆黒の魅力を内包する馬場ふみかさん、鋭い視線で魅惑的な妖気が漂う河合優実さん、そして、わたしの曖昧なイメージを具現化し愛すべきキャラクターに創り上げてくれた井口理さんの存在に支えられてこの映画は誕生しました。
井口さんは、ススメという人物を演じるうえで次々と芽生える羞恥などのデリケートな感情を、そのまま晒すことも破壊してみせることもできる表現者で、彼から放出される異彩なムードがこの作品の世界を息が詰まるくらいに充してくれました。
ある意味、この映画はホラーです。楽しんで頂けたら幸いです。
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