稲垣吾郎×新垣結衣 朝井リョウ原作「正欲」岸善幸監督のメガホンで映画化 23年公開
2022年9月12日 09:00
原作は、「桐島、部活やめるってよ」「何者」で知られる朝井氏が、作家生活10周年で書き上げた渾身の一作。21年3月に発売されるやその内容が波紋を呼び、第34回柴田錬三郎賞を受賞した。朝井氏は同書を「小説家としても一人の人間としても、明らかに大きなターニングポイントとなる作品」と語る。
家庭環境、性的指向、容姿。本作は、様々に異なる“選べない”背景を持つ人たちを同じ地平で描写し、人が生きていくための推進力になるのは何なのかを炙り出していく。衝撃的なストーリーをある種のラブストーリーとして映画化するのは、「あゝ、荒野」「前科者」でタッグを組んだ岸監督と脚本家の港岳彦。生きていくための原動力が「当たり前」とは違う形である人たちの人生を、大胆な演出表現で映像として浮かび上がらせる。
稲垣が演じるのは、横浜検察庁に務める検察官で、マイホームを持ち、妻子を養う寺井啓喜(てらい・ひろき)。稲垣は「脚本を読み終えた時、この作品に関われる事を嬉しく思いました」と語り、「難しい題材にチャレンジする、監督、スタッフの皆様と共に丁寧に演じていきたい」と意欲をのぞかせている。
一方、新垣は、広島のショッピングモールで契約社員として働く桐生夏月(きりゅう・なつき)役に扮し、特殊性癖を持つことを隠して生きる難役に挑む。新垣は、「原作を読んで、何かを問われたような気持ちになりました」と明かし、「考え続ける事、想像し続ける事をいつも以上に大切にしながら、制作に臨めたら」と語っている。
稲垣、新垣、岸監督、原作者の朝井氏のコメント全文は以下の通り。
脚本を読み終えた時、この作品に関われる事を嬉しく思いました。難しい題材にチャレンジする、監督、スタッフの皆様と共に丁寧に演じていきたいと思います。
原作を読んで、何かを問われたような気持ちになりました。
それは、「何が正しいか」とかそういう単純なものではないような、でも実はとてもシンプルなことのような気もしました。
考え続ける事、想像し続ける事をいつも以上に大切にしながら、制作に臨めたらと思っています。
岸監督とは初めてご一緒しますが、初顔合わせから親身に役についての相談などを聞いてくださり、とても心強く、感謝しています。
撮影では、自分なりに、夏月達が生きる世界を必死に生きたいと思います。
原作の衝撃と感動がずっと消えません。朝井さんの“視点”が生み出した登場人物たち、その感情をどう表現するべきか、模索が続いています。
稲垣吾郎さん、新垣結衣さんをはじめとするキャストの皆さんとの対話を重ねて、少しずつ輪郭が浮かび上がってきたところです。
人と人のつながりを描こうと思います。大切なのに、難しい、つながり。世界から「普通ではない」と片づけられてしまう人たちの、歪みのないつながりを描こうと思います。
言葉にするとは線を引くということです。明確に名付けがたい感情や現象に無理やり輪郭を与えてしまうのが、言葉です。
映画には、表情、声色、沈黙など、言葉以外のものが沢山映ります。それらが、私が書きながら取りこぼしていったものたちを一つでも多く拾い上げてくれることを願っています。
そして、この物語の核が、いい映画を創るという意思以外の部分で歪められることのないよう、緊張感とともに祈っています。
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