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第79回ベネチア国際映画祭、金獅子賞はローラ・ポイトラス監督のドキュメンタリー 3年連続女性監督が受賞

2022年9月11日 09:17

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金獅子賞を受賞したローラ・ポイトラス監督
金獅子賞を受賞したローラ・ポイトラス監督
Photo by Andreas Rentz/Getty Images

第79回ベネチア国際映画祭が現地時間の9月10日に閉幕し、金獅子賞に、アカデミー賞受賞監督のローラ・ポイトラスによる、写真家ナン・ゴールディンのドキュメンタリー、「All the Beauty and the Bloodshed」が輝いた。女性監督が3年連続、金獅子に輝く結果となった。一方、ドキュメンタリーが金獅子を受賞したのは、ジャンフランコ・ロージの「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」(13)以来、9年ぶり。深田晃司監督の「LOVE LIFE」は、残念ながら賞を逃した。

審査員グランプリは、これが初長編フィクションであるアリス・ディオップの「Saint Omar」に、審査員特別賞は、イラン政府から映画制作を禁止されているなかで作品を撮り、刑務所に拘留されているジャファル・パナヒの「No Bears」に与えられた。受賞会見ではパナヒの名前を冠した椅子が空席のままもうけられ、監督の代理で俳優のレザ・へイダリとミナ・カバニが出席。パナヒ監督からメッセージをもらったというへイダリは、「わたしのせいでトラブルに巻き込まれることのないように、という気遣い溢れる言葉でした。この受賞によって、刑務所にいても映画を作り続ける監督のメッセージが世界に伝わることはとても喜ばしいです」と語り、カバニは、「パナヒ監督は何があっても映画を撮り続けるでしょう。すでに次回作を考えているそうです」と明かした。

前評判の高かった「Bones and All」は、ルカ・グァダニーノに監督賞が、ティモシー・シャラメを相手に強い存在感を見せたテイラー・ラッセルに、新人俳優に与えられるマルチェロ・マストロヤンニ賞が授与された。

同じく批評家に絶賛されていた「イニシェリン島の精霊」は、監督、脚本家のマーティン・マクドナーが脚本賞を受賞するとともに、主演のコリン・ファレルが男優賞に輝いた。一方、女優賞はこちらも下馬評の高かったトッド・フィリップスの「TAR」で、国際的な指揮者に扮したケイト・ブランシェットに渡った。

監督ばんざい賞は、新作のウェスタン「Dead for a Dollar」をアウト・オブ・コンペティション部門で披露したウォルター・ヒルに、栄誉金獅子賞は、カトリーヌ・ドヌーブと、新作「Master Gardener」がアウト・オブ・コンペティションで上映されたポール・シュレイダーにそれぞれ贈られた。さらにクラシック映画部門における最優秀復元映画賞を、鈴木清順の「殺しの烙印」が受賞。本部門でアジア映画が受賞するのは初めてとなった。

今年のベネチアは強豪揃いで、評価が高かったにも拘らず無冠に終わった作品もある。審査員長のジュリアン・ムーアは授賞式後の記者会見で、賞の選択がとても困難だったことを明かし、「どの賞も満場一致のものはありませんでした。審査員はみんな異なるバックグラウンドを持ち、異なる意見を持っていた。でもわたしたちは4時間ぐらいディスカッションを重ね、みんなが納得のいく結果にできたことに誇りをもっています」と語った。

金獅子作品については、「とてもパワフルな映画。ひとりの女性が困難な人生を乗り切っていく様子を美しく語っているのみならず、社会的な問題を取り上げ、複雑で心に響く、人間的な作品です」と、強く印象付けられた様子だった。本作は、ゴールディンの悲劇的な家族の物語とともに、危険な薬を販売し続ける製薬会社のオーナーに対し抗議活動を続ける社会活動家としての姿を浮き彫りにしている。

また「女性の活躍において映画界は変わりつつあると思うか」という質問に対しムーアは、「今夜の結果を見てもらえば明らかでしょう。状況は変わりつつあるし、これからからも進化することを期待しています」と強調した。(佐藤久理子)

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