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ロマンポルノの傑作「(秘)色情めす市場」 田中登監督が望んだ本当のタイトル、撮影や衣装秘話など 当時のスタッフが語る裏話

2022年9月10日 22:00

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「(秘)色情めす市場」製作当時の裏話が楽しめる同時鑑賞会アーカイブが公開中
「(秘)色情めす市場」製作当時の裏話が楽しめる同時鑑賞会アーカイブが公開中
(C)日活

月会費なしで映画.comが厳選した作品を鑑賞できるVODサービス「シネマ映画.com」で開催中の「ロマンポルノ映画祭」。一企画として、第78回ベネチア国際映画祭クラシック部門選出作「(秘)色情めす市場」(74)の同時再生鑑賞会が映画.comのYoutubeチャンネルhttps://youtu.be/neJznXQJQ3gで開催され、そのアーカイブが公開されている。

同作のサード助監督兼大阪ことば指導を担当した小西均氏、作家でAV監督の二村ヒトシ氏、日活映像事業部門の高木希世江氏が参加し、作品の見どころや裏話を語る。自宅のPCなどで本編を見ながら、同番組を再生することで副音声のように楽しめる。

日活が1971年に製作開始し、70~80年代に活況を呈した日活ロマンポルノは、当時3本立てで2週間興行(2本自社制作、1本買取)というサイクルで作品を量産。映画マニア青年だった小西氏は、様々な作品のアシスタントとして大阪から調布の撮影所を頻繁に訪れていたという。「一般映画では花咲かなかった監督がようやく咲き、若手はポルノ(シーン)さえ入れれば自分の作りたい作品が撮れる、という意欲と活気にあふれた現場」だったと当時を振り返る。“ポルノ”という言葉が過激な映像を想像させるが、ロマンポルノは「女優も男優も前貼りをして撮影、あくまでも演技としての撮影でした」と厳格なルールがあったことを強調した。

約1100本あるロマンポルノ作品の中で最高傑作と評する映画人も多い「(秘)色情めす市場」は、主演の芹明香が娼婦を演じ、大阪・釜ヶ崎を舞台に、たくましく生きる人々の姿を描く。「聖地巡りをされる方も多いそうです。芹明香さん演じるトメの『なんや逆らいたいんや』はロマンポルノの中でも有名なセリフ。自由を奪われることに対しての反抗では?」と日活の高木氏。

小西氏が「いわゆるワケありの人々も多いため、隠し撮りやゲリラ的な撮影を行っていました」と、リアルな風景をそのまま作品内に取り込んでいる本作の撮影について明かすと、二村氏は「現代のインターネット社会では絶対にできない演出ですね」と驚きを隠せない様子だ。

多くのドラマシーンがモノクロームで展開される。小西氏は「この後に安藤庄平キャメラマンは『泥の河』(小栗康平監督、第54回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作)を撮ります。このころから白黒映画の名手だった」「トメのドレスは秋吉久美子さんが『』という作品で着たものを流用しています。ラストは衣装部さんが、裾を継ぎ足した」と思い出を語る。

画像2(C)日活

田中監督にとっても、とりわけ思い入れの深い作品だったそうで、「田中監督はこの作品を元々はATGで撮りたかったが、できなかったのでロマンポルノになった。タイトルは『受胎告知』。スタッフはずっと『受胎告知』と書かれた台本で撮影をしていた」と小西氏。さらに、「田中監督は撮影中にお嬢さんを亡くす悲劇があり、それを乗り越えた作品でもある。完成後の上映会で原題『受胎告知』と入れてほしいと言っていました」とそのこだわりを語る。また、「大阪の撮影の後、調布の撮影所のセットで、実夫(さねお)がトメの子宮の中にうずくまっているというシーンを撮りましたが、尺の都合で使われませんでした」という逸話も披露した。

本編鑑賞後に二村氏は「キリスト教的な宗教色もあり、現代の見方で言ったら、カラーになったシャッター街は人類滅亡後のよう。モノクロは暴力と売春の異世界。カラーになって現実味が増す。田中監督の意図はわかりませんが、その演出によって、ニワトリを抱えた少年が我々と地続きになる、ものすごい映像の力だと思った」と感想を語る。「人間を映した映画」「これだけ語れる映画はなかなかない」と、参加者全員が作品の力に打ちのめされていた。

昨年より「日活ロマンポルノ」50周年記念プロジェクトとして新作3本が製作され、今年9月からの公開を控えている。ロマンポルノ記念の年を盛り上げるべく開催されるシネマ映画.com「ロマンポルノ映画祭」では、映画.comがセレクトしたバラエティ豊かな旧作12本を紹介している。

(秘)色情めす市場」以外のおすすめ作として小西氏は「私は神代辰巳監督の助監督も務めたので『黒薔薇昇天』。また、小原宏裕監督は個人的に友人でもあったので、『桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール』を見てほしい。軽いスポーツ映画のようで、こういった映画もあるんだよ、という意味でも。亜湖さんと竹田かほりさんコンビの絶妙な面白さ。そして、ロマンポルノの予告編にも是非注目して欲しい。チーフ助監督が予告編の監督を担当し、予告編だけのカットもあり、それが現在残っているのが素晴らしい」と見どころを挙げている。

(秘)色情めす市場」(74)同時再生鑑賞会は映画.comのYoutubeチャンネルで公開中。「ロマンポルノ映画祭」(https://cinema.eiga.com/romanporno/)は「シネマ映画.com」で開催中。

画像3(C)日活

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