映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック
その他情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

ウォン・カーウァイとの仕事はどうだった? バズ・プーンピリヤ監督が明かす「プアン」裏話

2022年8月7日 10:00

リンクをコピーしました。
インタビューに応じたバズ・プーンピリヤ監督(中央)
インタビューに応じたバズ・プーンピリヤ監督(中央)
(C)2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.

バッド・ジーニアス 危険な天才たち」で注目を集めたタイのバズ・プーンピリヤ監督。その才能に惚れ込んでプロデュースを熱望したのが、名匠ウォン・カーウァイだ。「気鋭の監督×世界的名匠」という奇跡のタッグは、甘くて苦い青春ロードムービーを生みだした。

「プアン 友達と呼ばせて」は、プーンピリヤ監督の半自伝的物語。白血病で余命宣告を受けた男ウード(アイス・ナッタラット)が、親友・ボス(トー・タナポップ)とともに元カノ巡りの旅へ。過去と現在を交錯させつつ、2人の旅は終着点へと向かっていく。しかし、この“終わりの地”こそ、新たな物語が語られる“始まりの場所”だった――。

日本公開に際して、来日を果たしたプーンピリヤ監督。ウォン・カーウァイとの仕事を振り返りつつ、作品へのこだわり、そして今後の展望についても語ってくれた。

画像2(C)2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
――本作の企画は、ウォン・カーウァイ監督から「一緒に映画を作ろう」と声をかけられたことでスタートしていますよね。そもそもプーンピリヤ監督にとって“ウォン・カーウァイ”とは、どのような存在だったのでしょうか?

ウォン・カーウァイ監督の影響を受けていることは否定しません。大ファンなんです。私が若い頃に名を成した方ですが、彼の作品は、映画に対する視点を変えてくれました。それまでの私は、映画を“娯楽”としてとらえていました。ですが、ウォン監督の作品を観た後は、もっともっと映画を追求したくなりました。ストーリーだけでなく、気持ちも語っていると思えたからです。登場人物の行動や理由よりもアート・ディレクションやカメラワークが重要であり、ストーリーは非常に立体的で面白い。本当に素晴らしいと思えたんです。

――思い入れの深い作品はありますか?

好きな作品は「恋する惑星」。そして「ブエノスアイレス」です。「ブエノスアイレス」は、30~40代の男性の気持ちをよく表していますし、何より心に響く作品ですよね。例えるならば「恋する惑星」はポップミュージック。「ブエノスアイレス」はジャズと言えるでしょう。

画像3(C)2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
――ウォン・カーウァイ監督のアドバイスで、最も印象に残っているものはなんでしょうか?

今回の作品は「映画を作っている」というよりも、「絵を描いている」というような気持ちで撮影に臨んでいます。ウォン監督から教わったのは「自分の本能を信じる」ということ。これまでの私は、与えられたテーマに対して、その題材に沿った作品を生みだしていくということに慣れていました。ウォン監督からは「自分自身が何を聞きたいのか。そして、どんなストーリーにしたいのかということを大切にする」ということを教わりました。

画像4(C)2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
――ウォン・カーウァイ監督は、撮影現場には一度も来なかったそうですね。プーンピリヤ監督は「ウォン・カーウァイ監督に捧げるような画作り、光の使い方を心掛けた」と仰っていますが、何故そうしようと思ったでしょう?

ウォン・カーウァイらしさ”というのは、ウォン監督と脚本のことを話し合っている時から決まっていました。確かに、一度も撮影現場には来ていません。ですが、ウォン・カーウァイ映画の雰囲気、味わいに通じる“魂”が、脚本にこもっていたんです。ですから、私は監督として、その“魂”をビジュアルに落とし込むだけでした。

(ウォン監督とのやりとりは)タイのプロデューサーと仕事をする時と変わりません。例えば、人生や世界に対する視点について。それらに関して、ウォン監督と私の視点を拡大していった結果「プアン」になりました。さまざまな方が、こんなことを考えているそうです。「ウォン監督は、このプロジェクトをどれほどコントロールしたのだろう」と。

ウォン監督は「あなたは何をしてもいい。あなたが信じていることであれば」と仰ってくれました。色々なアイデアを提案していただき、それについて議論をする。アイデアに対して、監督として向き合うということを心掛けていました。ウォン監督は、私が働くための“余白”のようなものを、かなりたくさん残してくれていました。

このプロジェクトをスタートさせる前、周囲の人から脅しを受けていたんです。「ウォン・カーウァイ監督はめちゃくちゃ細かい」と(笑)。でも、そんな一面は全く見えませんでした。編集に対してのコメントはありましたが、脚本作業が終わった後は「撮影してください」とだけ。細かなことは何も言ってこなかったんです。

画像5(C)2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
――本作は、プーンピリヤ監督が自分自身を投影した作品です。ウォン・カーウァイ監督から提示されていた「バケットリスト(死ぬまでにやりたいことリスト)ムービー」というアイデアを一度捨て去り、新たに生み出したのが「死にゆく男性が、元カノたちに感謝と謝罪、そして最後のさよならを言いに行く」という内容でした。当時「最も描きたかった物語」だったそうですね。

なぜそのような心境になったのかと言えば、年齢的なもの、周囲の人の状況が作用していました。人生における「死」を考えるようになっていたからです。「死」を考えるということは、現在を見直すということ。「今、価値のあることをやっているのか?」「自分や周囲のためにすべきことをできているのか」。そんなことに思いを馳せるようになりました。

画像6(C)2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
――本作のラストには「ロイドに捧ぐ」というテロップが挿入されています。ロイドさんは、プーンピリヤ監督がニューヨークで暮らしていた頃の友人。脚本を書き上げた2週間後、ロイドさんが、ウードと同様に余命宣告を受けたことを知ったそうですね。そんな大変な状況にありながらも、ロイドさんは作品づくりに協力しています(その後、本作の完成を待たずに他界。ラストのテロップは、感謝を込めたもの)。どのような面でアドバイスを受けたのでしょうか?

彼は良き友だちでした。ただし、性格はウードとは似ていません。でも、ウードと同様に「ある日、この世を去らなければいけなくなった」というバックグラウンドは同じものでした。協力してくれたのは、ウードの外見に関してです。アイスさんは、実際の末期患者(=ロイドさん)を目の前にすることで、ウードというキャラクターを深く理解することができました。

画像7(C)2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
画像8(C)2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
――“元カノ巡り”を経て、物語はウードの告白によって、意外な展開を見せます。このパートは非常に新鮮で、驚きに満ちていました。

よく聞かれるんですよ。「監督には、実際にウードのような友だちがいるんですか?」って。答えは「いません」です(笑)。ウードとボスは、自分自身から生まれたキャラクターでもあります。彼らは、過去と現在の自分です。過去の自分が、現在の自分に語りかけている――あの告白のシーンは、自分の心をセラピーしているような場面でもあります。

――タイの映画界は、今どのような状況になっているのでしょうか?ぜひ教えてください。

世界と共通することかもしれませんが、タイの映画界の大きな問題は「映画館に足を運ぶ人が減ってしまった」ということです。オンラインで気軽に映画が観られるような状況になってしまった。映画館に行く機会は、多額の予算で作られた大規模な映画、もしくはスーパーヒーロー映画の鑑賞が中心となってしまっています。

この状況には、長所もあると思います。配信プラットフォームが増えれば、コンテンツも増加する。映画製作者にとっては、コンテンツを作るチャンスが増えます。さまざまな方法で、映画が人々に届いていく。これは観客が増えているということでもありますよね。その一方で「自分の作った映画が映画館で上映されない」という欠点にも繋がっていると思います。

画像9(C)2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
――今後の展望についてお聞かせください。

現在進行形のプロジェクトもあるんですが、監督として考えていることがあります。「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」は“観客のための映画”でした。「プアン 友だちと呼ばせて」は“自分のための映画”です。次は“社会のためになる映画”を作りたいと思っているんです。娯楽以上の意味を持つ……そんな作品が作ってみたい。これは私の映画監督としての目標です。そして今は、この目標を達成できるタイミングだと思っています。

バズ・プーンピリヤ の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

関連コンテンツをチェック

シネマ映画.comで今すぐ見る

aftersun アフターサン

aftersun アフターサン NEW

父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。

愛のぬくもり

愛のぬくもり NEW

「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。

HOW TO HAVE SEX

HOW TO HAVE SEX NEW

ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。

卍 リバース

卍 リバース NEW

文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。

痴人の愛 リバース

痴人の愛 リバース NEW

奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版 NEW

内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。

おすすめ情報

映画ニュースアクセスランキング

映画ニュースアクセスランキングをもっと見る

シネマ映画.comで今すぐ見る

他配信中作品を見る