「ドライブ・マイ・カー」オスカー受賞記念 東京ミニシアター3館、濱口竜介監督作の特別上映を企画
2022年3月30日 10:00
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「ドライブ・マイ・カー」で日本映画史上初のアカデミー賞作品賞ノミネートを成し遂げ、国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督。自主制作作品からメジャーデビューに至るまで、濱口作品を上映してきたユーロスペース、ポレポレ東中野、シアター・イメージフォーラムの東京ミニシアター3館が、今回の快挙を祝した特別上映「濱口竜介監督作品 ミニシアター合同特別上映ウィーク」を企画した。
濱口監督は、東京大学文学部卒業後、映画の助監督やTV番組のADを経て、東京藝術大学大学院映像研究科に入学。在学中は黒沢清監督らに師事し、2008年の修了制作「PASSION」がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスで高い評価を得た。その後、酒井耕監督と共同制作した「東北記録映画3部作」と呼ばれるドキュメンタリー群、4時間を超える長編「親密さ」などを経て、15年に発表した「ハッピーアワー」でロカルノ国際映画祭やナント国際映画祭など、数々の国際映画祭で主要な賞を受賞し、一躍注目を集めた。
商業映画デビュー作品「寝ても覚めても」はカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出。ベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞した黒沢清監督作「スパイの妻 劇場版」では共同脚本を担当。村上春樹氏の短編小説を映画化した「ドライブ・マイ・カー」はカンヌ国際映画祭にて、日本映画史上初となる脚本賞を獲得。同作は、ゴールデングローブ賞非英語映画賞も受賞している。
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濱口監督の初期の代表作「PASSION」はユーロスペース、コアな濱口ファンを生み出した「親密さ」はポレポレ東中野、5時間半という長尺にも関わらず大ヒットした「ハッピーアワー」は、シアター・イメージフォーラムでそれぞれ公開。この3作品が再び“聖地”に凱旋することになった。
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演技未経験のワークショップ参加者と徹底的に本読みする独自の演出法、「ハッピーアワー」「親密さ」にみられる異例の長さの上映時間など、商業的な側面から見ればかなり果敢な試みを行ってきた濱口監督。そんな濱口監督の作品群は公開されるたびに、劇場に観客が駆けつけ、それらを“語る声”が新たな観客を引き寄せた。そうした状況に応えるように、ミニシアターは濱口監督の作品を上映し続けてきた。
今回、特別上映を企画した3館は「自主制作からアカデミー賞ノミネートに至るまで、濱口作品を支えた続けたのは間違いなくこうして劇場に足を運んだ観客です。そして、これらの作品と観客たちをつなげたのは日本独自の“ミニシアター”文化だとも言えるでしょう。2022年3月、日本映画史上初の米国アカデミー賞作品賞ノミネート、そして国際長編映画賞受賞という快挙を祝して、私たち映画館はこの3作品を上映します。観客のみなさんと作り上げたこの文化を一緒に喜ぶ機会となれば幸いです」とコメントを寄せている。
上映作品の概要、各館代表者のコメント、スケジュールは、以下の通り。
東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作となった作品。大学の同級生だった男女6人が、久々に会うことになった。その再会の席で、あるカップルが結婚を発表。しかし、男の過去の浮気が発覚してしまう。さらに、その場にいた別の男も“浮気”に深くかかわっていた。人生の転機を迎えた男女たちが揺れ動くさまを、一夜の群像劇として描出。その後、濱口作品の常連となる渋川清彦、河井青葉、占部房子が出演している。
初めて観た時の驚き。堂々たる風格と繊細な感情表現。これが大学院の修了制作作品かと感嘆した記憶がまざまざとわいてきます。計算されたものなのか偶然がもたらしたものなのかはっきりとわからない場面に直面して、無神論者の私ですら映画の神が選ばれたものに力を授けてくれるのだと確信しました。
映画や演劇、俳優養成の専門学校「ENBUゼミナール」の演技コース修了作品としてスタートした企画から生まれた長編作品。「親密さ」という演劇を作り上げていく過程を描いた劇映画の前半部分と、実際の舞台の上演を記録した後半部分の2部構成で、それぞれの中に虚構と現実が交錯する。新作舞台の上演を間近に控えた演出家の令子と良平は、コンビで演出を手がけている。しかし、そのやり方に次第に限界が見え始めてくる。
初めて観たのは2013年2月のオーディトリウム渋谷でのオールナイト。生涯忘れられない夜明けを体験した。あの日あの場所がなかったら、その後ポレポレ東中野での単独上映もなかったかもしれない。「親密さ」という作品の色褪せない輝きを底から照らしているのも、そんな一期一会に他ならない。この企画がなければ集うはずのなかったキャストやスタッフによるひとつの結晶の形。それが1本の映画となって私たちの前に運ばれてくることはやはり奇跡なんだ。その後も様々な映画館で上映され、多くの観客との出会いを果たした本作を、今回オールナイトで上映記できることが嬉しい。
演技経験のない4人の女性を主演に、ごく普通の30代後半の女性たちが抱える不安や悩みを、総時間317分の緊迫感あふれるドラマとして描いた作品。第68回ロカルノ国際映画祭では、主演の田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りらが最優秀女優賞を受賞している。30代も後半を迎えた、あかり、桜子、芙美、純の4人は、なんでも話せる親友同士だと思っていた。しかし、純が1年にわたる離婚協議を隠していたことが発覚。そのことで動揺した4人は、つかの間の慰めにと有馬温泉へ旅行にでかけ、楽しい時間を過ごすのだが……。
この作品を見てまず感じたのは、“すごいな、なんかすでにクラシック映画の風格がある!”ということです。できたての映画なのに“クラシック映画みたい”な鑑賞感。どういうことだろう?と。でも“クラシック=古典”というものは、できたその場からクラシックなのかも。酒井耕さんとの東北記録映画三部作に圧倒された記憶も新しかったので、その監督の次回作がこれか!!と言葉を失うような痺れを感じたのも未だに覚えています。作品を紹介された時に真っ先に思った、“5時間半もあるのか…。”どうやって番組組めるだろう…。”という不安も一瞬で吹き飛びました。
(C)2015 神戸ワークショップシネマプロジェクト
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