映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック
その他情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

池田エライザが芝居で体現してみせた“ジャズ”な生き方

2022年1月17日 12:00

リンクをコピーしました。
穏やかな口調で取材に応じる池田エライザ
穏やかな口調で取材に応じる池田エライザ

女優、歌手、モデル、映画監督など多ジャンルで活躍する池田エライザが、二宮健監督の最新作「真夜中乙女戦争」で好演を披露している。劇中では、ジャズのスタンダードナンバー「Misty」を情感豊かに熱唱。実母がジャズシンガーであることは周知の事実だが、池田本人の全身から滲み出るジャズな空気の源に迫った。(取材・文/大塚史貴、写真/間庭裕基)

若者を中心に圧倒的な支持を集める作家Fの同名小説を永瀬廉(King&Prince)主演で実写映画化した今作は、平凡で無気力な大学生の“私”(永瀬)が、「かくれんぼさーくる同好会」で凛々しく聡明な“先輩”(池田)に出会うところから始まる。先輩に惹かれながらも、人の心を一瞬で掌握する謎の男“黒服”(柄本佑)と運命的な出会いを果たす。やがて“私”の退屈な日々は一変し、「真夜中乙女戦争」という名の東京破壊計画に巻き込まれていく。

画像2

映画では、「コロナのなかった2020年」というパラレルワールドの世界が描かれているが、そこに至るまでには紆余曲折あった。クランクインを間近に控えた20年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で撮影は延期に。そこから二宮監督が脚本の改稿を重ね、練りに練られた23稿で完成したという。

画像3

今作は私、先輩、黒服の3人の関係性が軸になっているが、本編も文字通り3人芝居の様相を呈している。それぞれの芝居場をじっくりと見入ることの出来る構成にもなっているが、なかでも池田は聡明で正義感の強い先輩をアンニュイな雰囲気を漂わせながら、独特の存在感を放っている。

「大学生である彼、彼女は圧倒的に未熟なので、心が折れるほどのことではないけれど演じるうえで苦心したことは結構あって、私の尺度で役を図れないというのは大変でしたね。どうしてそういう行動に至るのかというのを私が考えている時点で、先輩の行動とはイコールにならない。役の上で先輩に賛同、肯定して、言動のひとつひとつを自分の腑に落とす作業というか……。若くて無知で、勢いだけはあって、そうやって大人になっていく過程ですよね。先輩は成熟しているように見せているけれど、全く普通の大学生。それを私のエゴでは図らないという作業は難しかったですね」

■胸くそ悪いと思えることに、どれだけ救いがあるか…

画像4

今作を鑑賞した感想として、筆者は「新感覚の胸くそ悪さ」という言葉を池田に伝えたところ、「すごくホッとする言葉。胸くそ悪いと思えることに、どれだけ救いがあるか……。この作品に共感して、ときめいたりしたら危ういじゃないですか。胸くそ悪いと口に出して言えるって、心が生きているって感じるんですよね」と屈託なく笑う。

池田は本編中、永瀬との共演シーンが多かった。昨年12月に行われた完成披露イベントで、永瀬は池田と柄本に対して「兄貴と姉貴に囲まれながら楽しく撮影させていただいた」と謝意を示している。現場の近いところで永瀬の芝居、立ち居振る舞いに接して、どのような特筆すべき点を見出したのだろうか。

画像5

「弱音を吐かないというのが、非常に人間らしく感じました。プレッシャーとの向き合い方とか、ちょっとしたことなんですけどね。私は寒い時に寒いと言ってしまうのですが、彼がそういうことを言っているのをあまり聞かない。どんなにセリフが長くて大変だろうが、やってのける。座長然としているところは現場の士気を高めたりもしますから、リーダー感というかカリスマ性は持っていると思います」

そんな永瀬を見つめながら、劇中で先輩としてジャズのスタンダードナンバー「Misty」を歌い上げているが、これ以上ないというくらい効果的にふたりの揺れる心情を表現している。楽曲を起用した理由を、二宮監督は「“先輩”自身が惹かれつつある“私”に対する期待と不安。“私”は、自分の拠り所なのかそれとも最大の敵なのか。そして、“先輩”自身が引き返せない状況に来てしまい迷子になってしまっていること。引き裂かれそうなアンビバレントな気持ちを抱えつつも、今夜はロマンを魅せながら歌いたい。そんな瞬間を表現出来たら」と狙いを明かしている。

■曲に嘘がないから、私は何も考えていません

画像6

「Misty」は、1950年代に活躍したジャズピアニストのエロル・ガーナーが54年に発表した楽曲。飛行機でシカゴへ移動中だったガーナーが、霧中を飛行する機内から外を眺めているうちにメロディを着想したものの、独学で音楽を学んだため楽譜の読み書きが出来ず記録することが出来なかった。そのためシカゴ到着までメロディを反芻し続け、急行したホテルのピアノで演奏したものをテープレコーダーで録音して事なきを得たという。

このエピソードと、楽曲を聴いたガーナーの友人が「霧のようにぼんやりした曲だ」と評したことから「Misty」と命名されたというのは、有名な話だ。後に作詞家ジョニー・パークが歌詞をつけ、ジョニー・マティスが歌ったことで大ヒットして以降、多くのシンガーがカバーして現代でも世界中で愛されている。

画像7

飛行機からホテルへ急行した話は知っていた池田は、楽曲のそういった意図を完全に把握していたように筆者は感じた。「曲に嘘がないから、私は何も考えていません」と微笑む池田は、「歌っている人の意志を継いでいるというか……。オリジナルに嘘がなければ、歌い継いだ時に自分の言葉になるものなんですよね。見栄がないから」と控えめに補足してみせる。

池田が「ELAIZA」名義で音楽活動を行っていることはもちろん、実母がジャズシンガーであることも本人が公にしていることだが、それらのことに焦点を合わさずとも池田からはジャズのリズムが響いてくる。

■自由奔放でいることが格好いいんじゃない

画像8

「ふふふ、育ちがジャズですからね(笑)。ジャズっておっしゃってくださいましたけど、まさにその通りなんです。私もよくたとえるのですが、皆が一定のルールや秩序を保ちながら自由にセッションするのがジャズ。自由奔放でいることが格好いいんじゃなくて、秩序を知っていればいるほど、足並みが揃って集まった時に弾けるというか……。お芝居も自分の奔放さや本質はもちろん大事にすべきですが、芝居について学ぶ姿勢や貪欲さはもっと素敵ですよね。知ろうとしたり、学ぼう、考えようとすればするほど、本番が始まってセッションになった時に、ギュッと集中力が高まって、終わった後に拍手が生まれるようなラッキーが生まれる。それこそジャズですよね。だからこそ、私は芝居のことがずっとよく分からないんです」

画像9

分からないというのは、「何がいい芝居なのか」についてだという。「芝居が出来ている感覚は一切なくて、自分がいい芝居ができたとか、成長できたという実感もなくて、不得手だからこそ何年もやれているんでしょうね。ただただ楽しい」。

「Misty」に関しても、「英語だから良かったんだと思います。私、曲を作るときに一番恥ずかしい本音はいつも英語にしちゃうんですね。本音は言いたいんだけど、日本語だと恥ずかしいといういじらしい部分が私にもありまして(笑)、英語だからこそ先輩の一番情けない顔が歌っている時に出たなって感じています。歌詞の通りなので、ある意味ではセリフ感覚といえるかもしれません」と意外な思いを明かしてくれた。

池田が銀幕に初めて登場したのは「高校デビュー」。実に10年が経過し、これまでに20本の映画に出演してきたことになる。ジャズな生き方をする池田は、どのような映画体験を経て今に至ったのだろうか。

■音楽はディストピアが好きだけど、映像は救いがあるものを撮りたい

画像10

「親がシンガーということもあって、音楽は色々なジャンルを聴いて趣向も偏っていますけれど、映画はピクサー作品とかホッコリしたものが好きでした。世代的には『ハリー・ポッター』も。映画って自己投資に近いのかなって思うんです。予告編を見て『きっと面白いはず』と感じた自分の感性に従い、お金を払って映画館へ行くというアクションって素晴らしいこと。子どもの頃も、たくさんの映画があるなかで、どれが一番楽しめるかを一生懸命考えていた気がします。自分本位でいられるところが映画の面白いところかもしれません。作る側になると違うんですけどね。それに公開後、自分とは全く違う解釈をして人生の糧にしてくれたりもする。監督や作り手の意図とは違う解釈で大切にしてくれることもあるので、良いループを生んでいるのが映画なのかな。ただの娯楽じゃない。配信もいいけれど、映画館へ映画を観るために交通費を出して行く行為が、すごい財産だと思うんですよね」

池田が映画、そして映画館にそこはかとない愛情を抱いていることは、自らが原案・監督を務めて20年12月に封切られた「夏、至るころ」を見れば一目瞭然。福岡出身の池田が同県田川市でオールロケを敢行し、故郷への思いや自らの経験を織り交ぜたオリジナル作品を生み出した。2人の男子高校生が初めて自分の人生と向き合い、それぞれの一歩を選び取るまでを丁寧にすくい取っている。コロナ禍を経験して、いま描きたい題材、切り取りたい画はどのようなものか聞いてみた。

「撮りたいものが色々あるんですよね。ただ、田舎の方を撮りたいというのは変わらないかも。歌手のビョークも田舎の方に住んでスローライフを送っているそうなのですが、そういう思想云々ではなく色々なものに感謝しながら自己肯定感を高く持っている方たちについて、ポジティブに描きたいと思っています。音楽に関してはディストピアが好きだけど、映像は救いがあるものを撮りたい。何度だって自分の環境を整えるタイミングがあってもいいんじゃないかとか、子どもの頃に決めた夢に対して責任を取らないといけないわけじゃない、逃げてもいいんだよ……というようなことを書いてみたいと思っています」。

フォトギャラリー

池田エライザ の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

コンコルディア Concordiaの注目特集 本日配信開始 注目特集

コンコルディア Concordia NEW

“20年間、犯罪が起きていない町”で殺人事件が起きた――熱烈にオススメしたい社会派AIサスペンス

提供:hulu

レッド・ワンの注目特集 本日公開 注目特集

レッド・ワン

見たことも聞いたこともない物語! 私たちの「コレ観たかった」全部入り“新傑作”誕生か!?

提供:ワーナー・ブラザース映画

十一人の賊軍の注目特集 注目特集

十一人の賊軍

【本音レビュー】嘘があふれる世界で、本作はただリアルを突きつける。偽物はいらない。本物を観ろ。

提供:東映

知らないと損!映画料金が500円になる“裏ワザ”の注目特集 注目特集

知らないと損!映画料金が500円になる“裏ワザ”

【仰天】「2000円は高い」という、あなただけに教えます…期間限定の最強キャンペーンに急いで!

提供:KDDI

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声の注目特集 注目特集

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声

【人生最高の映画は?】彼らは即答する、「グラディエーター」だと…最新作に「今年ベスト」究極の絶賛

提供:東和ピクチャーズ

ヴェノム ザ・ラストダンスの注目特集 注目特集

ヴェノム ザ・ラストダンス

【最悪の最後、じゃなかった】最高の最終章だった…エグいくらい泣いた感動体験、必見!

提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

八犬伝の注目特集 注目特集

八犬伝

【90%の観客が「想像超えた面白さ」と回答】「ゴジラ-1.0」監督も心酔した“前代未聞”の渾身作

提供:キノフィルムズ

関連コンテンツをチェック

シネマ映画.comで今すぐ見る

HOW TO HAVE SEX

HOW TO HAVE SEX NEW

ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。

愛のぬくもり

愛のぬくもり NEW

「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。

卍 リバース

卍 リバース NEW

文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。

痴人の愛 リバース

痴人の愛 リバース NEW

奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。

凶悪

凶悪 NEW

死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。取材のため東京拘置所でヤクザの死刑囚・須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、3つの殺人に関与しており、そのすべてに「先生」と呼ばれる首謀者がいるという告白を受ける。須藤は「先生」がのうのうと生きていることが許せず、藤井に「先生」の存在を記事にして世に暴くよう依頼。藤井が調査を進めると、やがて恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていく。ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く藤井役を山田孝之、死刑囚・須藤をピエール瀧が演じ、「先生」役でリリー・フランキーが初の悪役に挑む。故・若松孝二監督に師事した白石和彌がメガホンをとった。

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版 NEW

内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。

おすすめ情報

映画.com注目特集 11月8日更新

映画ニュースアクセスランキング

映画ニュースアクセスランキングをもっと見る

シネマ映画.comで今すぐ見る

他配信中作品を見る