【「モーリタニアン 黒塗りの記録」評論】グアンタナモ収容所での不当拘禁 「これは真実の物語である」という言葉があまりにも重い
2021年10月24日 08:00

「This is a true story.(これは真実の物語である)」。実話をベースにした作品では、大抵の場合、このような意味合いの文言が挿入される。ジョディ・フォスター、ベネディクト・カンバーバッチの共演によって描かれた「モーリタニアン 黒塗りの記録」も同様だ。鑑賞後に、この文言を思い返す。「そんな話があったのか」と驚くだけに留まらない。この事実、あまりにもヘビーだ。
2015年、1冊の本が発売された。アメリカ政府による検閲で多くが黒く塗りつぶされた「グアンタナモ収容所 地獄からの手記」だ。そこにつづられていたのは、当時、キューバ・グアンタナモ米軍基地に収容されていた著者モハメドゥ・ウルド・スラヒの“壮絶な体験”。映画では、モーリタニア出身の青年モハメドゥがグアンタナモ収容所で体験する地獄の日々に、人権派弁護士ナンシー・ホランダー(フォスター)と軍の弁護士スチュアート中佐(カンバーバッチ)の奔走を絡めていく。
モハメドゥの身に生じたのは、9・11に関与した人々を勧誘した“リクルーター”という疑惑だ。悪名高き収容所に収監されてからの日々は、スタンダードサイズで描出。その画面の狭さも相まって、囚われの身の息苦しさが伝わってくる。不当な拘禁は“正義の鉄槌”を望む政府によって正当化されていく。確固たる証拠「自白」を引き出すために行われたのは、精神と肉体を抉る尋問という名の拷問。この描写があまりにも強烈で惨い……。思わず目を伏せたくなるだろう。
「モハメドゥを守る」「モハメドゥを死刑にする」という両極の立場に身を置くホランダーとスチュアート中佐。2人の行程は、まるで登山のようだ。別々のルートを辿り、霧のかかった山頂へ。理性的で落ち着き払った彼らの呼吸は、頂上に隠された“真実”に近づくほど、荒くなっていく。国民感情、隠ぺい、上層部の圧力、仲間とのすれ違い――立ち塞がる数多くの困難。まるで酸素が徐々に薄まっていくかのような、緊迫のストーリー構成に引き込まれた。
第78回ゴールデングローブ賞では、フォスターが最優秀助演女優賞を受賞。モハメドゥ役のタハール・ラヒムは、惜しくも最優秀主演男優賞の受賞を逃しているが、その迫真の演技には是非注目してほしい。また、本作では、とある現実が「This is a true story.」ど同じく、テロップとして明らかになる。僅かな尺を割いて伝えられる情報は、かなり衝撃的だ。これによって“物語の重み”が、飛躍的に増していることは間違いない。
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