【「孤狼の血 LEVEL2」評論】白石和彌監督版「仁義なき戦い 広島死闘篇」に見る敗者の美学
2021年8月15日 11:00

壮絶なクライマックスを見届けた直後に感じたのは、「孤狼の血 LEVEL2」は白石和彌監督版「仁義なき戦い 広島死闘篇」という位置づけになるということ。それも当然といえば当然の話で、柚月裕子が手がけた原作小説が「仁義なき戦い」シリーズと「県警対組織暴力」にオマージュを捧げながら執筆されているのだから、むしろ必然とすらいえる。
熱狂的なファンを生んだ前作では、広島の架空の都市・呉原を舞台に暴力団と警察組織を手玉に取り違法捜査をいとわないマル暴の刑事・大上(役所広司)が、シリーズの進むべき道筋を作っている。その大上がある事件を捜査中に水死体で発見されたことで、相棒だった新人刑事・日岡(松坂桃李)が大上の遺志を継ぎ、暴力団同士の抗争を終結させるまでの刑事へと成長するまでを描いた。
原作では日岡が地方の派出所へ左遷させられるが、映画第1弾では異なるエンディングで締め括ったため、続編となる今作はオリジナル作品として紡がれている。舞台は前作から3年後、大上のやり方を踏襲するどころかアップデートして広島の治安を守り、裏社会でも顔が利く存在となった日岡の前に刑務所から出所したばかりの上林成浩(鈴木亮平)が現れる。
この上林が、刹那的な悪役として際立った存在感を放ち、日岡がまとめてきた広島の暴力団の危うい均衡をいとも簡単にぶち壊していく。上林が心酔する五十子会会長・五十子正吉(石橋蓮司)は前作で刺殺されているが、この死に疑問を抱き、真相を突き止めようとするなかで、黒幕が日岡であることを知る……。
己が信じる道を突き進むのは、日岡も上林も同じ。ただ今作での勢いは上林に多少の分があるか……。というのも、圧倒的な暴力でしか生き抜く術を持たない上林の生き方では長生きできそうにないというのは誰の目にも明らか。一方で、日岡は「抗争なき広島を実現したのは自分」という自負があるだけに、裏社会のパワーバランスが崩れることをこれ幸いと、今まで黙認していた警察上層部からも問題視され孤立を深めていく。ましてや詳述は避けるが、刺され、撃たれ、落下するなど満身創痍の状態で焦燥感を募らせていく日岡を体現してみせた松坂の表現力は秀逸である。
上林とのガチンコ対決は、どういう結末になったとしても日岡にとっては言わば「負け戦」。だがしかし、この「負け戦」にどう落とし前をつけるかにハードボイルド作品の極意が詰まっている。松坂と鈴木が奏でる極限の表情とともに、作品世界を飄々と生きる中村梅雀、日岡と深い関係にあるスナックのママに息吹を注いだ西野七瀬の存在が、今作に意義深い彩りを添えたことも加筆しておく。そして最後になるが、エンディングで見せる日岡の眼差しは、まだ終わりを告げていない。
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