濱口竜介監督、村上春樹原作「ドライブ・マイ・カー」カンヌでお披露目 海外プレスからも高評価
2021年7月13日 12:00

カンヌ国際映画祭で7月11日(現地時間)、日本から唯一コンペティション作品として選ばれた濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が正式上映され、満場のスタンディングオベーションを浴びた。今回、コロナ対策によるPCR検査を受けながら、カンヌを訪れた濱口監督、三浦透子、霧島れいかの3人は、レッドカーペットでは緊張の面持ちだったものの、上映後の観客の反応を目の前に、晴れやかな笑顔を見せた。
2018年の「寝ても覚めても」以来、2度目のカンヌ・コンペティションとなった濱口監督は、「レッドカーペットをあがったところでディレクターのティエリー・フレモー氏に強く握手をして頂き、また来たね、と言われているような感じがしました。また今回2年ぶりの開催となった映画祭に対して、期するところがあったのだろうという印象もありました」と語った。上映後の反応については、「拍手の熱量を感じ、本当に気に入って頂けたのだと実感して胸を打たれました。観客のみなさんと一緒に見ることで、3時間近く一緒の乗りもので旅をしているような気持ちで見ました」と述べた。

初カンヌを体験した三浦と霧島は、「素晴らしい劇場で、たくさんの人たちと一緒に見ることができました。この経験を超えるものは二度とないだろうという、特別な空間で特別な経験をすることができ、本当に幸せです」(三浦)、「一生の思い出になりました。今日ここにいるべきキャストの方たちがいないのが残念ですが、たくさん報告すべきことができました。感謝の気持ちでいっぱいです」(霧島)と、それぞれ感動を語った。
「ドライブ・マイ・カー」は、村上春樹の短編を基に、濱口監督が大江崇允とともに脚色した作品。秘密を抱えた妻(霧島)の突然の死に向き合えないまま、孤独と悔恨を抱え生きる主人公(西島秀俊)が、自分の愛車の新しい運転手となった、個性的なドライバー(三浦)との出会いを通して再生へと向かう物語で、岡田将生のほか、台湾、韓国などの国際的キャストが脇を固める。
濱口監督は賞への期待を聞かれると、「それは本当にわからないです。でも作ったものには誇りを持っているので、それが評価されたらとても嬉しいです」と答えた。

翌日の記者会見には、3人とともにプロデューサーの山本晃久も参加。本作がほぼ3時間の長尺になったことについて、「単純に作品があるべき姿として完成すべきだという信念がありまして、濱口監督はそういう姿として作品を完成させてくれるだろうという信頼がありました」と明かした。
海外の評価は、「魅惑的なロードムービー」(ル・モンド紙)、「長尺は問題ではない。濱口監督はメロドラマへの愛着をのぞかせながら、村上春樹の原作から極めてエモーショナルなエピックを生み出した」(バラエティ誌)といった好評価が並んだ。
なお、濱口監督への評価が高いフランスでは、日本とほぼ同時期の8月に本作の公開が予定されている。(佐藤久理子)
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