作曲家ヨハン・ヨハンソン監督作「最後にして最初の人類」ポスター、場面写真、推薦コメント公開
2021年6月2日 06:00

映画「メッセージ」のオリジナルスコアなどを手掛けた作曲家ヨハン・ヨハンソンの初長編監督作品であり、遺作となったSF映画「最後にして最初の人類」のポスタービジュアル、場面写真、小島秀夫氏ら著名人からのコメントが公開された。
映画は、もともとシネマコンサートの形式で生上演されていた素材を、ヨハンソンが監督した16ミリフィルムの映像としてスクリーンに投影し、女優のティルダ・スウィントンが朗読を加え、ヨハンソンによるスコアをオーケストラが生演奏するという構成の作品だ。ヨハンソンの死去後、16ミリフィルムの撮影監督を務めたシュトゥルラ・ブラント・グロブレンを中心とした参加スタッフが、1本の長編映画として完成させた。
原作は、英国の哲学者で作家オラフ・ステープルドンの「最後にして最初の人類」(1930/邦訳は絶版)。20世紀を代表するSF作家の一人であるアーサー・C・クラーク(「2001年宇宙の旅」)にも大きな影響を与えたといわれるSF小説の金字塔で、20億年先の未来に生きる人類第18世代のひとりが、20世紀に生きる第1世代の私たちにテレパシーで語りかけてくるという物語だ。
ポスターに写し出された大きな石碑は、旧ユーゴスラビアに点在する「スポメニック」と呼ばれる巨大な戦争記念碑で、映画に登場する数々のモニュメントを場面写真で確認できる。
7月23日から、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテにて全国順次公開。
静かに唸るヨハン・ヨハンソンの“音”に、
20億年先の未来から届くティルダ・スウィントンの“メッセージ”が重なる。
観客は幾何学的な記念碑(モニュメント)をただ仰ぎ観る。
いつの間にか、それらは“モノリス”へと変わり、宇宙と終焉への畏怖に繋がる。
これは亡きヨハン・ヨハンソンが奏でる最後にして最初の「2001年宇宙の旅」なのだ。
死は終わりではない。
20億年後の未来という超越的なこの体験は、
まさに数万年前、原始の人類が宇宙を理解せんとしたときの追体験でもある。
即ち本作は、人類の知の始まりと終わりとを同時に体験させ、
真に世界へ耳を澄ませるための装置なのだ。
ステープルドンが残した未来の人類からの警告は、
ヨハン・ヨハンソンの途方も無い音と映像によって壮大な抒情詩となった。
我々はこの作品を通じて、自分たちの中に潜む重要な感受性を呼び覚ますことになるだろう。
サラエボで映画を学んでいた頃にスポメニックをいくつか訪れたことがある。
重厚で硬質なそれらは土地のもつリニアな時空間に属さず、イモータルであるかの如く圧倒的に異なっていた。
20億年先の子孫たちが送ってきたメッセージは、虚無への誘惑になりえると同時に、
瞬きの中に生まれる悦びを思い出させる。(一部抜粋)
最初から最後まで、終始一貫無駄も隙もなく、荘厳かつ美しい音と映像で鑑賞者の姿勢を試してくる。
もしもあなたがクリエイターだったら、この作品を鑑賞して背筋が伸びる思いをするだろう。
想像した事もない神聖な生物を見たかのような、畏怖と歓喜。
あのなんとも神秘的で奇妙な音楽と映像、そして言葉の世界に完全に取り込まれた私の体は次第に鉛のように重くなり、沈まないように必死であった。
一世一代の貴重な体験。
望むと望まざるとに関わらず、自らの生涯をこの作品の内容に重ね合わせることで、
作品世界と一体化したヨハン・ヨハンソンは、
「人間というこの束の間の音楽を美しく」奏でたアーティストとして、
永遠に記憶されるだろう。
有名なSF映画のある構築物を連想させる冒頭のシーン。
だが、本作の風景を織りなすのは、実在する荒々しくも美しいコンクリートの記念碑群だ。
その幾何学的な造形は、音楽と共鳴し、未来の遺跡として圧倒的な存在感を放つ。
永劫の果ての時間旅行、それはあの日あの時、
己がたった一人で対峙したスポメニックに抱いた遥かなる精神の飛翔そのものだった。
過去の遺物に宿りし未来への警笛は、星の瞬きを超脱するあたたかで無機質な救済。
オシロスコープが受信した未来の黙示録は、
戦争と芸術を発明した最初の人類、つまり我々の物語であった。
スポメニックとヨハン・ヨハンソンの音楽が、存在しない楽園を夢見て共振する映像は、
人類最後の、あるいは最初の映画のように、ただ美しい。
描かれていないものを浮かび上がらせる映像と音楽/音響。壮大で重厚な美しい時間。
ヨハンソンのことを考えながら観始めましたが、最後には彼の不在は不在でなくなり、
ある境地にたどり着いたような幸せを感じました。
(C)2020 Zik Zak Filmworks / Johann Johannsson
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