24歳の新鋭・須藤蓮の初監督&主演作「逆光」製作決定 共同企画&脚本は渡辺あや
2021年5月13日 12:00
「ジョゼと虎と魚たち(2003)」「メゾン・ド・ヒミコ」や、NHK連続テレビ小説「カーネーション」を手掛けた脚本家・渡辺あやと、NHKドラマ「ワンダーウォール」に主演した若手俳優・須藤蓮が企画したオリジナル作品「逆光」の製作が発表された。7月17日から撮影地・尾道にて先行上映が始まり、全国順次公開されることになった。
企画の発端は、渡辺が脚本を担当したNHKドラマ「ワンダーウォール」。同作で知り合った渡辺と須藤は、尾道を訪れたことがきっかけとなり、「逆光」の着想へと至った。渡辺あやがオリジナル脚本として紡ぎだしたのは、真夏の尾道を舞台にした青年2人の情愛を描く官能的な物語。監督・主演を弱冠24歳の須藤が担当し、完全な自主企画映画として製作された。
1970年代、真夏の尾道。22歳の晃は大学の先輩である吉岡を連れて帰郷する。晃は好意を抱く吉岡のために実家を提供し、夏休みを共に過ごそうと提案をしたのだった。先輩を退屈させないために、晃は女の子を誘って遊びに出かけることを思いつく。幼馴染の文江に「誰か暇な女子を見つけてくれ」と依頼して、少し変わった性格のみーこが加わり、4人でつるむように。やがて、吉岡は、みーこへの眼差しを熱くしていき、晃を悩ませるようになる。
須藤が主人公・晃役、晃が憧れる大学の先輩・吉岡役を中崎敏(「花束みたいな恋をした」)が扮し、「リバーズ・エッジ」などで堅実なバイプレイヤーとして活躍する富山えり子、オーディションで見出された木越明が出演。音楽は、数々の映画音楽を手がける大友良英が担当。また「浅田家!」「ナラタージュ」などを生んだ小川真司氏がエグゼクティブプロデューサーとして参加。渡辺と「ジョゼと虎と魚たち(2003)」「メゾン・ド・ヒミコ」以来のタッグを組むことになった。
須藤、中崎、渡辺、小川氏のコメントは、以下の通り。
この度、初めて映画を撮りました。企画の立ち上げからお金の計算まで、全て自分達でやるんだ!と意気込んで始めたものの、まさに「言うは易し、行うは難し」、その大変さは想像をはるかに上回るものでした。正直なめてました。
一方で、ただただ自分の感覚と仲間たちの才能を信じながら突き進んできたこの数ヶ月、鬱屈していたエネルギーがぐるぐると循環し、満身創痍になりつつも物を作る喜びを噛み締めた時間は、まさに青春そのものでした。僕は自他共に認めるお喋り男なのですが、いざ作品について説明を求められると急に一つとして言葉が出てこなくなることに、自分でびっくりしています。なぜ、このあらすじなのか、時代設定なのか、カメラワークなのか、そもそもなぜ尾道で撮ったのか。どんな質問にも「どうしてもそうしたかったから」としか答えようがなく、それはちょうど恋心を説明できないようなものなのかもしれないと思っています。
言葉にならない僕の宝物、「逆光」をぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。
この作品のイン前、監督須藤蓮は「衣装、ロケ地、撮り方全部 最高のものを用意してあるので絶対に魅力的に撮ります」と力強く言ってくれました。その真っ直ぐな目と愚直なまでの行動力は疑念を生む一切の隙を許さず、自分のみならず周りを惹きつけて更にポテンシャルを高めました。その言葉通り、細部までこだわり抜いた絵作りは画面に映る全てのものに光を当てその物の持つ生来の輝きを何倍にも膨らませます。大人になるにつれて陰の部分に物事の本質を見るようになりがちでしたが、それは光の当たる部分に魅せられているという大前提があってこそというのを思い出させてくれました。須藤蓮の初監督作品、 五感をフルに使ってお楽しみください。
一度でいいから、どこからの依頼でもなくなんの企画会議も通さず、ただ純粋に「作りたい」という理由で作品を作ってみたいものだと思いながら、そんな自由は叶わぬ夢だと長らく諦めていました。
ところが去年、突如「よし、そういうのを作るぞ」と思いたったのは、やはり緊急事態宣言下という、あらゆる仕事が吹っ飛び、日常がすべて崩壊したような時間の中で、それはかつてなく切実な、作家としての生存本能のような衝動だったと思います。
そうして須藤蓮監督とお互いの持続化給付金を持ちよって、若い役者やスタッフたちに声をかけ、ただ「自分たちが作りたいものを作る」ことを唯一のルールとして、この世に生まれてきたのがこの「逆光」です。
闇の中にみずから土を持ち上げて芽吹く緑が時々底知れぬ力を見せてくれるように、本作もその完成に至るまでの過程の中で、びっくりするような希望の景色を私にたくさん見せてくれました。
本作のそんな生命力が、これから誰かの心に「生きたまま届く」ことを夢みて、ワクワクしております。
「逆光」のラッシュを初めて見たときの印象は鮮烈だった。正直、須藤蓮がここまでちゃんと監督できるとは想像してなかったので、編集で意見を求められたときにはかなり真剣に応えてアドバイスした。結果、その流れで公開の手助けをすることになったわけだ。しかし何やらこれは必然だったように思えて仕方ない。繊細に構築された作品世界に魅力があったというのももちろんあるのだが、コロナ禍に遭った時代の節目にあたる今、「匂い」や「手触り」を主たる豊穣さとする「映画」を持続可能にするために、制作から公開までまるっとリノベーションしようという「映画ゲリラ」と呼びたくなるような無謀な志がこんなところから出てきたのかという発見に心が躍ってしまったのだ。「逆光」は時代に逆行しているようで逆行していない。それを証明できるのは、私と同じように時代に差し込まれる光を待ち望んでいる映画ファンなのだと信じている。同志よ、来れ!
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。