【パリ発コラム】フランス政府は海外からの観光客条件付きで受け入れを準備 7月開催予定のカンヌ映画祭はどうなる?
2021年5月2日 18:30
パンデミックの影響で、5月から7月に開催が延期されたカンヌ国際映画祭のオープニング作品が、レオス・カラックスの新作「Annette」に決定した。前作「ホーリー・モーターズ」(2012)以来9年ぶりとなる本作は、主演かつ共同プロデューサーも務めるアダム・ドライバーが、「ロック・オペラ」と呼ぶミュージカル。一説にはセリフの95パーセントが歌とも言われる。主人公はハリウッドのスタンダップ・コメディアンと人気シンガーのセレブ・カップルという設定で、ヒロイン役は当初ルーニー・マーラ、ミシェル・ウィリアムズ、リアーナなどの名前が次々に挙がっていたが、最終的にマリオン・コティヤールに落ち着いた。コティヤールは「NINE」(09)以来のミュージカルとなる。
カラックス映画のご多分にもれず難産だった本作に、6年前から関わってきたドライバーは、「この映画のために長年監督と話し合いながらスケジュールを調整してきただけに、実現できて本当に嬉しい。カラックスは唯一無二の存在。現代の偉大な監督のひとり」と称賛する。
一方コティヤールは、「脚本を読んでその奇抜さ、形容しがたい深味に魅了されました。カラックスの詩的な天分、あふれるイマジネーションに心を奪われたのです」と、そのインパクトを語っている。キャストは他にサイモン・ヘルバーグ、歌手のアンジェール、福島リラ、水原希子、古館寛治ら。音楽を手がけるのはアメリカのロック・バンド、スパークス。すでに公開されているフッテージを見る限り、「ホーリー・モーターズ」と「ポーラX」を足して2倍にしたような、壮大でファンタジックな世界だ。
映画祭ディレクターのティエリー・フレモーはさらに、昨年の「カンヌ・レーベル」に選ばれつつ、未公開のままであるウェス・アンダーソンの「フレンチ・ディスパッチ」と、やはり昨年から噂に上がっていたポール・バーホーベンの新作「Benedetta」のコンペ入りも明らかにした。残りのラインナップは5月27日に発表される。
だが、目下の問題はセレクションよりも、果たして本当に今年のカンヌは実現できるのか、ということにある。なんといってもフランスは、この原稿を書いている4月27日の時点で、いまだ娯楽施設や飲食店、不要不急のブティックは閉まったまま、再開日も決定していない(一応5月半ばの再開を目指すと言われている)。だがそれでもカンヌ側は7月開催に強気である。その理由は、欧米におけるワクチン接種が、夏までにはかなり行き渡ることを予想していることが考えられる。実際アメリカとともにイタリアやスペインでも、映画館がすでに開き始めている。
また4月18日にCBSのインタビューに答えたマクロン大統領が、アメリカを含む海外からの観光客を、ワクチン接種済み、またはPCR検査陰性の者に限り、5月あたりから受け入れられるよう準備中であると語ったことも、後押ししているだろう。もしそうなれば、今年の審査員長に決まっているスパイク・リーをはじめ、アメリカからスターを迎えることが可能となり、ある程度体裁を保つことができる。だがもちろん、世界各国が同じ状況とは言えず、ワクチンを普及させられるか否かで参加できる国・できない国の格差が出てしまうのは避けられない。
残念ながらどうあがいても、2021年のカンヌは完全にこれまで通りとはいかないだろう。だがそれでもリアルな開催にこだわるのは、作品の受け取られ方、情報の流通が、オンライン開催とは圧倒的に異なるからである。レッドカーペットがあれば、それだけ世界にも配信されやすい。また作品鑑賞や取材に関しても、どうしても違いが出てくる。マーケットのディールはオンラインでできても作品はやはり大きい画面で観なければと言う人々が、プロのバイヤーにもたくさんいる。リアルかオンラインかによって製作側も、どの映画祭を狙うかが分かれる。
映画業界人にとっては、これから7月に向けて落ち着かない日々が続くのである。(佐藤久理子)
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
犯罪が起きない町で、殺人事件が起きた――
【衝撃のAIサスペンス】映画ファンに熱烈にオススメ…睡眠時間を削ってでも、観てほしい
提供:hulu
映画料金が500円になる“裏ワザ”
【知らないと損】「映画は富裕層の娯楽」と思う、あなただけに教えます…期間限定の最強キャンペーン中!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
【史上最高と激賞】人生ベストを更新し得る異次元の一作 “究極・極限・極上”の映画体験
提供:東和ピクチャーズ
予想以上に面白い!スルー厳禁!
【“新傑作”爆誕!】観た人みんな楽しめる…映画ファンへの、ちょっと早いプレゼント的な超良作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。