【コラム/細野真宏の試写室日記】「名探偵コナン 緋色の弾丸」は初の興行収入100億円を突破できるのか?
2021年4月15日 08:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
まず「名探偵コナン 緋色の弾丸」を見て思ったのは、作画のクオリティーが高かった、ということです。
おそらく興行収入90億円台となった第22作目「名探偵コナン ゼロの執行人」あたりから制作費が増えた気がしています。
このように、「作画のクオリティーが高い」という状態が保たれることは、作品のレベルを上げていくための必須条件だと思います。
そして、肝心の脚本ですが、本作は、第22作目「名探偵コナン ゼロの執行人」を担当し、「相棒」シリーズでも知られる櫻井武晴が脚本を手掛けていて、「名探偵コナン ゼロの執行人」に匹敵するレベルの面白さとなっています。
また、たまに“爆弾”となるゲスト声優ですが、本作では浜辺美波だけで、しかも上手いのでプラスに働くと思います。
さらに、本作のエンディング曲は東京事変の「永遠の不在証明」で、こちらも久しぶりに作風と上手く調和していて良かったです。
ただ、内容が意外と盛り沢山で、本作は「赤井ファミリー」が重要なカギとありますが、そもそも「赤井ファミリー」のことを知っているのは、原作マンガかTVアニメを見ている人たちでしょう。
そこで、今回は、映画を最大限楽しめるように、「赤井ファミリー」に関して最低限必要な知識から解説します。
本作のメインは「赤井秀一」ですが、まずは余談から。
「赤井秀一」は、劇場版では第18作目「名探偵コナン 異次元の狙撃手」から登場していますが、「名探偵コナン ゼロの執行人」でメインとなった「安室透」と同様に、この2人のキャラクターは「機動戦士ガンダム」のパロディー(リスペクト?)なのです。
「機動戦士ガンダム」では、主人公のアムロ・レイ(声優:古谷徹)、“赤い彗星”のシャア(声優:池田秀一)と呼ばれるライバルの2人が特に人気が高くなっています。
「名探偵コナン」の原作者・青山剛昌も、このキャラクター2人のファンのため、通常では絶対に実現不可能に思える“壮大な遊び”をしているのです。
まず、「名探偵コナン」の「安室透」(あむろ・とおる)の本名は、公安警察の「降谷零」(ふるや・れい)で、これはアムロ・レイと、声優の古谷徹からもじっています。しかも、その「安室透」の声優を古谷徹に任せる徹底ぶりです。
そして、本作のメインの「赤井秀一」は、“赤い彗星”から名字を、声優の池田秀一から名前をとって「赤井秀一」となっています。もちろん「赤井秀一」の声優は、池田秀一になっています。
このように、この2人は原作者にとっても、かなり思い入れのあるキャラクターのようです。
それを客観的にも理解できるのは、この2人のキャラクターがそれぞれメインとなった第22作目「名探偵コナン ゼロの執行人」と、本作「名探偵コナン 緋色の弾丸」で、共に甲乙つけがたい力作となっています。
私は第22作目の「名探偵コナン ゼロの執行人」を見たときに「最高傑作」だと思いましたが、第24作目の「名探偵コナン 緋色の弾丸」を見て、少し揺れています。
「名探偵コナン ゼロの執行人」を見た時には、正直「子供には難しいかな」と思っていました。
ただ、「これは大人を中心にリピーターが続出する作品になるだろう」と想定していました。
一方、「名探偵コナン 緋色の弾丸」ですが、こちらも子供には少し難しい面があります。ただ、「本作の方が、子供の満足度は高いだろう」と思っています。
なぜなら、細かい点は気にしなくとも、それなりの爽快感があるからです。
そして、大人のリピーターについては同様に出ると思われます。
この意味で言うと、本作は「名探偵コナン ゼロの執行人」からの“進化”があり、やはり「最高傑作」という言葉が相応しいのかもしれません。
ただし、本作では、子供も大人も楽しむための「最低限知っておきたい登場人物の予備知識」があります。
それは劇場に置いてあるチラシにも載っている「カギとなる赤井ファミリー4人に関する予備知識」なのですが、ここでも簡単にまとめておきます。
まずは「赤井秀一」ですが、このメインとなる人物は「FBI捜査官」で、狙撃の名手です。
ちなみに、本作のタイトルに使用されている「緋色(ひいろ)」というのは、黄色っぽい「赤」(明るめの赤)という意味で、これも“赤い”にかかっています。
この「赤井秀一」に関して少し面倒なのは、「赤井秀一」は「ある事件で死んだ」ということになっていて、普段は「沖矢昴」(おきや・すばる)という別人に変装しています。(声も変声機で変えているので声優も別です)
つまり、「沖矢昴」と「赤井秀一」は同一人物なので、これは覚えておいてください。
そして、赤井秀一には「羽田秀吉」(はねだ・しゅうきち)という現在「将棋界の六冠王のプロ棋士」の弟がいます。
名字が「赤井」ではないのは、本格的にプロ棋士になるため、高校卒業後に羽田家の養子になったからです。
ちなみに、「羽田秀吉」の恋人は、本作でも登場する警視庁の「宮本由美」婦警です。
この弟「羽田秀吉」は、「赤井秀一」が生きていることを知っています。
また、赤井秀一には「世良真純」(せら・ますみ)という「女子高生」の妹がいます。
名字が「赤井」ではないのは、母親方の名字を使っているからです。
妹「世良真純」は、新一や蘭と同じ高校に通っていて、「女子高生探偵」として活躍しています。
この妹「世良真純」は、「赤井秀一」が生きていることを知らないのです。
さらに、赤井秀一には「メアリー」という、イギリスの秘密諜報機関「MI6」(エム・アイ・シックス)に所属している母親がいます。
名字は旧姓が世良で、「メアリー・世良」が本来の名前です。
母親「メアリー」は、工藤新一(=江戸川コナン)や灰原哀のように身体が小さくなっています。
母親「メアリー」は、娘「世良真純」と一緒にホテルで身を隠すように暮らしていて、イギリス諜報機関「MI6」関連の仕事も娘「世良真純」に手伝ってもらっています。
この母親「メアリー」も娘「世良真純」と同様に、「赤井秀一」が生きていることを知りません。
とりあえず「赤井ファミリー」については、このくらいの予備知識は知っておいた方が、より楽しめると思います。
本作は「名探偵コナン ゼロの執行人」と同様に、意外と設定等が入り組んでいるので、そもそもの「基本の人間関係」では混乱せずに内容を楽しみたいものですね。
そのため、本作に関しては、「赤井ファミリー」にフォーカスを当てたTVアニメシリーズ特別総集編「名探偵コナン 緋色の不在証明」を映画館で2021年2月11日から「3週間限定公開」するなどの、念の入れようです。
ちなみに、これは私の想像ですが、このTVアニメシリーズ総集編「名探偵コナン 緋色の不在証明」という期間限定の作品は、日本テレビの金曜ロードショー用のテコ入れ的な作品だったのではないかと思っています(笑)。
ただ、これは劇場版「名探偵コナン」の人気の熱量を知る上では重要な事象ですが、TVアニメの総集編「名探偵コナン 緋色の不在証明」は3週間限定公開だったにもかかわらず好評を博しました。そのため、続映が決まり公開規模も拡大され、公開期間も2月11日から未だに続いていて、すでに「通常の映画」のヒット水準の興行収入12億円を突破しているのです。
このように、熱心に予習をしている層がこれだけ多いことからも、本作「名探偵コナン 緋色の弾丸」への期待の高まりが見てとれます。
さて、本題の「名探偵コナン 緋色の弾丸」の興行収入ですが、少なくとも平時であれば、念願の興行収入100億円は突破できるはずです。
それは、何といっても「作品の完成度の高さ」。
そして、第22作目「名探偵コナン ゼロの執行人」からの「ファン層の拡大傾向」。
さらには、これまでは小出しにしてきた単価の高い「IMAX、MX4D、4DX、DOLBY CINEMA」といった特殊上映を、本作では劇場版「名探偵コナン」史上初めて「同時上映」という“フル装填”での展開となっているのです。
しかも、「IMAX、MX4D、4DX、DOLBY CINEMAでは入場者特典【原作者の青山剛昌描きおろしの『緋色の“再装填”(リロード)カード』】が先着20万人に付く」ので、この特殊上映の稼働率もそれなりの結果を出しそうです。
極めつけが、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」で日本の映画館が学んだ、いわゆる“劇場版「鬼滅の刃」モデル”というべき成功体験があります。
この“劇場版「鬼滅の刃」モデル”は、大ヒットが見込める映画に対して、機会損失が出ないように、全国の映画館が座席数を「全集中」させてその作品を上映するという手法で、まさに今週末は本作「名探偵コナン 緋色の弾丸」に対して行われることになります。
ちなみに、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」でも行われましたが、上映時間の関係(「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は2時間35分、「名探偵コナン 緋色の弾丸」は1時間50分)もあり、「名探偵コナン 緋色の弾丸」の方が回転率が良く、より多くの回で上映が可能になるのです。
唯一の心配は、いよいよ新型コロナウイルスの第4波がやってきてしまったことです。
しかも、今回は感染力の強い「変異株」の影響で広がり方が早く、「変異株」の実態も含めて影響は未知数という面があり、先が見通しにくくなってしまいました。
とは言え、本作は劇場版「名探偵コナン」シリーズ初の興行収入100億円突破という悲願が何とか達成できるのではないかと思われます。
奥の手としては、それこそ本当に金曜ロードショーで、最も本作への興味を引き出せるTVアニメシリーズ総集編「名探偵コナン 緋色の不在証明」をテコ入れで放送するという“バズーカ砲的な援護射撃”もあり得ます。
いずれにしても、まずは「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のように、初速はかなりの勢いがあると思われるので、どのような結果になるのか注目したいと思います。
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