【映画プロデューサー・北島直明を知ってるか!? 第7回】連続ドラマ「ネメシス」をプロデュースする理由
2021年4月7日 18:00
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「ちはやふる」シリーズ、「キングダム」「AI崩壊」「新解釈・三國志」など、精力的に映画をプロデュースし続ける北島直明氏に密着する不定期連載の第7回。今回は、広瀬すずと櫻井翔が主演を務める日本テレビ系の連続ドラマ「ネメシス」について。映画畑を近年ひた走ってきた北島氏がなぜ連ドラ制作に乗り出したのか、その理由に迫るべくクランクイン直後の2月下旬、都内某所で取材した。
広瀬と櫻井が主演する「ネメシス」は、天才すぎる助手の美神アンナとポンコツ探偵の風真尚希が難解な事件を次々と解決していく、1話完結で描きながらも、各話に最終回までの壮大な伏線を詰め込んだ全10話の完全オリジナル作品。北島氏と入江悠監督が3度目のタッグを組んでいるが、今村昌弘(「屍人荘の殺人」)、藤石波矢(「今からあなたを脅迫します」)、周木律(「眼球堂の殺人」)、降田天(「女王はかえらない」)、青崎有吾(「体育館の殺人」)という人気ミステリー作家陣が脚本協力として参加するという凝りようだ。
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キャストも、大作映画でもこれほどの顔ぶれを揃えるのは至難の業といえるほどの面々が集まった。主人公の2人が勤める探偵事務所の社長を江口洋介が演じると発表されて以降、勝地涼、中村蒼、富田望生、仲村トオル、真木よう子、石黒賢、山崎紘菜、大島優子、上田竜也、橋本環奈と戦略的に小刻みな発表を続けてきた。
「そうですね、『50回目のファーストキス』の発表くらいから役衣装というか、最初から作品の世界観に入ってもらえるような見せ方をしています。誰が出演しているかというのは、もちろんファンにとって重要な情報ですが、作品目線で楽しまれるお客様を無視することなんてできませんから。『ネメシス』も本来だったらもっと早めに発表しても良かったんですが、情報が洩れることを恐れてこちらの戦闘態勢が整っていない段階で走り始めたくはなかったんです。外でロケをしていれば、SNSがここまで浸透した社会ですから盗撮をされて拡散されることも時にはありますよ。でも、そんな些細な事に振り回されるよりも、作品を第一に考え、公式発表の一発目でお客様に何をお見せできるかということの方が大事だと思うんです」
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「この企画は、約2年半前から動いているんです。数年来、配信の波が来ているなかで、これから10年、20年先を考えたときに『映画しか出来ません』っていう自分が嫌だったんです。映画、映画館はもちろん素晴らしいんですが、連ドラでしか表現できないことだってあると随分前から思っていました。企画を考えるとき、『これは映画向き、こっちはドラマ向き』ってありますよね。ちゃんとキャラクターを育てていけるのが、ドラマの強み。映画でそれをやろうとすると、題材がしぼられてしまいますから」
「キャラクターを育て、作品を育てるという意味では連続ドラマってすごく良いプラットフォームだと思います。とはいえ、もし、お客様が強く望んでくれるドラマであれば、ドラマの世界から飛び出したっていいと思います。成長したキャラクターが映画にいっても良いし、配信や舞台の世界にいったって良いじゃないですか。強いコンテンツ、お客様に支持される作品であれば、時代が変わってもその都度、カスタマイズできると思うんです。時代は目まぐるしく変わっていくし、コロナによって予期できないような変化が起きたように、今後もたくさんの変化が起こっていくように思います。そんな時に、すぐそばに“どんな状況にもアジャストできる”強い武器を持っておきたいと感じたんです。そういう意味では、『ネメシス』が一生付き合っていけるコンテンツになったらいいなあと考えています」
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「正直なところ、最近はテレビドラマって全然見ていなかったんですよ。ワクワクする要素が見当たらなかったから。僕が見ていた90年代のドラマってどこか余裕があったし、ファンタジーっぽさがあり、憧れも詰まっていて、テレビドラマからスターが生まれていた時代だったと言えますよね。最近のドラマはすごくリアリティがあって、主人公が比較的辛い環境に置かれた設定が多かったように感じるのですが、ただでさえ、みんな大変な世の中。テレビをつけても自分の生活と大差なければ、そりゃあ面白くなくなるよな……と」
「僕もそう思います。荒唐無稽でちょっとぶっ飛んでいてもいいから、ワクワクするものを視聴者の皆様が求めているということですよね。最近でいえば、やはり『半沢直樹』が挙げられるのではないでしょうか。今はどうしたって配信系に目を向けなければいけない時代になっていますが、テレビの最大の強みって、同じ時間に同じ内容を全国津々浦々の誰も彼もが共有できるということに尽きます。『ネメシス』の放送が始まる日曜日の午後10時30分は、みんながテレビの前に集まってくれるような作品を目指したいですね」
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「映画とドラマの違いって、圧倒的な視聴人数だと思っています。映画の場合、興行記録を打ち立てるような作品は別にして、観客動員100万人、200万人で大ヒットと言われる世界。ドラマは、何千万人という単位になります。映画よりも多くの方に見られているということは、本来はスターが生まれやすい土壌のはずなんです。ひとりでも多くそういうスターが生まれるように、工夫しながらキャスティングを今回もしています。今までお仕事をさせていただいた方々は、全員が共通して言葉では説明できない“何か”を持っています。そういう才能に出会えた瞬間は何度だって嬉しいですしね」
「推理ものを考えるうえで、当然ながら僕らが考えても限界があります。そこはもう、24時間365日、推理やトリックのことを考えている作家の方々に参加してもらった方が良いに決まっています。これは、連ドラを作る企画の段階から決めていました。毎回、『あれ? 同じドラマだっけ?』と錯覚するほどカラーが違いますよ。作家の方々もそれぞれ、密室ものが得意な方、時間のトリックが得意な方といったように、個性が異なりますから。どうしてこんなに面倒臭いことをしているんだろう……って、後悔することがあるくらい丁寧に取り組んでいます」
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「変わらず、オリジナルにはこだわっています。入江監督もこれまで連ドラを撮ってきたなかで、『連ドラにふさわしい題材ってなんだろう?』と2人で考えたとき、それが探偵ものでした。とはいえ、全10話の連ドラというのは、僕らの引き出しにないことをやろうとしているわけですから、『ショートムービー10本作るようなつもりでやりませんか?』というのがスタート。そして毎週見てもらうという縦軸があってこそ、ドラマをやる意味が見出せる。すごく壮大なテーマなのですが、初回から見続けていただき、8話でそれがどんなものなのかが分かる仕組みになっています」
意味深長なコメントを残した北島氏だが、精力的な姿はこれまでと全く変わらない。今後も大作映画など撮影が控えてはいるが、かつて憧れた連続ドラマを制作することで、どのような相乗効果をもたらすのか、今後も目を離すことができそうにない。
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