阿部寛&北村匠海、親子役で初共演 瀬々敬久監督が重松清「とんび」を映画化
2021年1月28日 04:00
累計発行部数60万部を突破した重松清氏のベストセラー小説「とんび」が映画化され、阿部寛と北村匠海が親子役で初共演することがわかった。「8年越しの花嫁 奇跡の実話」「糸」の瀬々敬久監督がメガホンをとる。
物語の舞台は、広島・備後市。市川安男(ヤス)は、愛妻との間に待望の息子・旭(アキラ)を授かる。しかし、妻の事故死により、ようやく手に入れた幸せは無残にも打ち砕かれてしまう。親の愛を知らずに父になったヤスは、仲間たちに助けられながら、不器用にもアキラを愛し育てていく。
同作はこれまで、2度にわたりドラマ化されてきた。2012年にNHKで放送された作品では堤真一と池松壮亮、13年のTBSドラマでは内野聖陽と佐藤健が共演。初の映画版となる本作では、オリジナルエピソードを交えながら、いつの世も変わることのない親子の不滅の絆を描き出す。「HOKUSAI」や瀬々監督の「護られなかった者たちへ」が控える阿部が、破天荒で愛すべき父・ヤスを演じ、「とんかつDJアゲ太郎」「さくら」など主演作が絶えない北村が、真っ直ぐな大人へと成長していく息子・アキラに扮し、新たな“とんびと鷹”の親子を体現する。
阿部は、「(本作は)昭和30年代から令和までという長い時間を描いています。今、世の中が世界的に分断され、さらにコロナウィルスで人々の間に亀裂が入り、距離が生じている時だからこそ、人々が助け合って生きるこの物語が、皆様に届いてくれればいいなと思います」と思いの丈を述べる。また共演した北村について、「伝えることに対しての才能が素晴らしい。それは饒舌とかじゃなくて、一つ一つの言葉が心地よく伝わってくる。役柄でもダメな父を理解し、母を亡くした父の苦悩を背負うアキラを見事演じてくれた。匠海くんとなら『とんびと鷹の物語』ができると感じました」と話している。
北村は、「テレビドラマに続き3度目の映像化で、出演のお話しをいただいた時にプレッシャーはありましたが、監督から『北村匠海のアキラでいい、何にも引っ張られる必要はない』という言葉をもらい、アキラという人間を、自分なりに自由に演じられると思いました」と述懐。「この作品で描かれている、家族の愛という形だけではなく、アキラを皆が大切に育ててきた、そういう愛を心に受けて育ってきたアキラという人物を演じられるということ、それを届けられるということが非常に幸せだなと感じました」と心情を吐露した。
原作者の重松氏は、「阿部寛さんのヤス、北村匠海さんのアキラ、監督は瀬々敬久さん……もう、この組み合わせだけで、ワクワクしてしまいます。映像化は3度目。しかし、原作こそ同じお話でも、それぞれに独立した『とんび』です。だからこそ、原作者として『新作』を誰よりも楽しみにしています」と期待を寄せる。
「原作者の重松清さんの自伝的な部分が、息子のアキラに投影されていて、僕はちょうど重松さんやアキラと同世代に当たるのでその時代感覚に親しいものを覚えました」と語る瀬々監督は、「高度経済成長期に小学校で、30歳になる前に昭和が終わり、やがてバブル崩壊。あの生き生きと活気があり、隣近所の人たちは、皆知り合いだった時代を知っている世代。一も二もなく引き受けました」と振り返る。「映画では令和の時代まで描いています。そこはオリジナルの部分です。あの時代とは何だったのか。そしてあの時代にあった親と子の関係、それは今でも共通するものだろうし、人と人が一緒に生きること、その素晴らしさ。私たちはどこから来て、どこに行くのか。そこを探ってみたいと思いました」とコメントを寄せた。
「とんび」は、20年11月14日に撮影がスタートし、12月24日にクランクアップ。重松氏の故郷である岡山を中心に、兵庫、関東地区などで撮影が行われた。22年に全国公開。