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【コラム/細野真宏の試写室日記】「鬼滅の刃」VS「鬼魂の刃」? 「銀魂 THE FINAL」で銀魂は本当に終わるのか?

2021年1月6日 18:01

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「銀魂 THE FINAL」1月8日公開!
「銀魂 THE FINAL」1月8日公開!
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable (C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)


劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、想定通り冬休みと紅白歌合戦効果で加速し「V12」と共に、現時点で興行収入350億円を超えた状況だと思われます。

いよいよ興行収入400億円という未知の領域への挑戦が始まりますが、首都圏の1都3県を対象に緊急事態宣言が出される可能性が高く、見通しは不透明です。

ただ、映画業界は今のところ規制の対象に入っていないため、それほど大きな影響はないのかもしれません。

画像2(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

今週末公開作品で勢いがありそうなのは、やはり1月8日(金)公開の「銀魂 THE FINAL」でしょう。

まず、「銀魂」という作品を知っている人は問題ないのでしょうが、知らないと怒りだす人もいるのかもしれないので、簡単に紹介を。

「銀魂」は、週刊少年ジャンプで連載されていたマンガで、テレビアニメ化されました。

そして、アニメ版が映画化され、さらには実写版も映画化されています。

どれか1作でも見ていれば分かりますが、一言で言うと、「銀魂」という作品は「治外法権」です。

普通の世界では許されない話も、「銀魂」でなら許される、といった不思議な世界観を有しているのです。

だから、まともなツッコミとかは不要です。只々ユルイ世界観に身を委ねていればいいわけです。

空知英秋描きおろし<炭治郎&柱イラストカード>
空知英秋描きおろし<炭治郎&柱イラストカード>
(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

本作「銀魂 THE FINAL」の第1週目の入場者特典は、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」のメガヒットを受けて、「(原作者の)空知英秋描きおろし『鬼滅の刃』(イラストカードが)もらえる!」となっています。

これが「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の上映前の予告編で流れるので、この露骨な手法に客席では軽い笑いが起こっています。

このように、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の観客に狙いを定めたりもしているのです。

画像4(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

さて、今回の「銀魂 THE FINAL」はアニメ映画版です。

一応「THE FINAL」となっているので、終わるのでしょう。

ただ、これすら「本当かな~?」と思わせる作風なので、今回はこれを中心に考察してみたいと思います。

まず、2003年12月に週刊少年ジャンプで連載がスタートし、2006年からアニメ化されています。

その流れで2010年4月24日にアニメ映画版の「劇場版 銀魂 新訳紅桜篇」が公開されました。

「劇場版 銀魂 新訳紅桜篇」
「劇場版 銀魂 新訳紅桜篇」
(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

ただ、この「紅桜篇」は、すでにテレビアニメ版でもやっていた話です。一応「新訳」となっていて少し違っていますが、当初はそれほど期待されていなかったようで、全国90館という規模の作品でした。

ところが、週末に満席が多く出るなどしたため、公開規模も拡大していき、最終的には興行収入10.7億円を記録したのです。

ちなみに、この「紅桜篇」は、福田雄一監督によって2017年に実写版「銀魂」として映画化され、興行収入38.4億円を記録しました。

テレビアニメ、アニメ映画版、実写映画版、とそれぞれ微妙に内容に違いがありますが、私は実写映画版が一番メリハリが効いていて気に入っています。

アニメ映画版は、「週刊少年ジャンプ創刊45周年記念作品」として2013年7月6日から第2弾となる「劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ」が公開されます。

「劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ」
「劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ」
(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

このタイトルが象徴的ですが、もうこの頃から“終わる終わる詐欺”を始めることになりました(笑)。

まず、アニメ映画版は「集英社の幹事作品」なので、「少年ジャンプ作品関連のイジリ」は許されると思います。

ただ、この第2弾では、京都アニメーション×TBSの「けいおん!」や、スタジオジブリ×日本テレビの「風立ちぬ」さえもサラッとdisっていたりと「本当に大丈夫なのかな?」と、こちらが心配するレベルの作風となっています。

この第2弾「劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ」は原作者自ら映画用の原案を作った「劇場版完全新作エピソード」となっていて、新鮮味がありました。

全国127館で公開され、こちらも週替り特典などが功を奏し興行収入17億円というヒットを記録しました。

そして、2018年に週刊少年ジャンプで原作の連載が終わるはずが、終わらず、という“終わる終わる詐欺”をネタに引っ張り、遂に2019年6月に無事「完結」したのです。

画像7(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

まさに本作「銀魂 THE FINAL」は、その原作の中で「銀魂」の無数の人気キャラクターが、文字通り「激闘」を繰り広げる「最終章」に相応しいものとなっています。

ただ、本当にこれで「最終章」なのかは、こればっかりは「作風が作風」なので、正直分かりません…(笑)。

一つ予想できるのは、おそらく「銀魂」スタッフは、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の大ヒットを予見できていなかったんだろうな、と思いました。

もし制作時期がズレていたら、きっと少し違った作品になったんだろう、という予感がしています。

画像8(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

とは言え、本作では、第1週目の入場者特典が「(原作者の)空知英秋描きおろし『鬼滅の刃』イラストカード」という素早い対応で感心しますが。

さて、この「思いっきり『鬼滅の刃』便乗作戦」がどこまで功を奏するのかは興味深いです。

ちなみに、私は、本気で「鬼滅の刃」の画に似せてきたものであれば、欲しいかな、といった感じでした。

どうも「銀魂」風の“鬼魂の刃”<炭治郎&柱イラストカード>には、それほど魅力を感じられませんでした。(すみません)

私は、どちらかと言うと第2弾、第3弾の(原作者の)空知英秋が描いた「銀魂 THE FINAL」の原画のほうに関心があります。

ただ、この原画というのは、アニメーションが好きな人には良いのですが、一般の人には「塗り絵と何が違うの?」という感じのようなので、どこまで訴求力があるのかは未知数です。

さすがに今となっては実現困難だと思いますが、私なら「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の外崎春雄監督の描きおろし「竈門炭治郎×坂田銀時」や「煉獄杏寿郎×志村新八」、「胡蝶しのぶ×神楽」が欲しかったですね。

なぜなら、外崎春雄監督はアニメ映画版の「劇場版 銀魂 新訳紅桜篇」では原画のトップにクレジットされているほど「銀魂」でも活躍されていたからです。

画像9(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会

今回の「最終章」(第3弾)となる「銀魂 THE FINAL」は、200館規模でのスタートと、明らかに過去最高の興行収入を狙ってきています。

福田雄一監督の実写版で作品の認知度はさらに上がったはずですし、加えてどこまで「鬼滅の刃」ファン層にも切り込めるのか。

平時であれば興行収入20億円台は狙えそうですが、緊急事態宣言の影響が不透明なため、明日の国からの発表を待つしかないのかもしれません。

場合によっては初速が凄くなり「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の「V13」を阻止する可能性さえあるため、緊急事態宣言の中身と共に注目したいと思います。


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