ジョン・トラボルタ、「ファナティック」撮影休憩中も“ストーカー”になりきっていた
2020年9月5日 14:00
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[映画.com ニュース] 「グリース」「アーバン・カウボーイ」「パルプ・フィクション」といった多種多様なジャンル作品に挑んできた人気俳優ジョン・トラボルタ。そんな彼が「ファナティック ハリウッドの狂愛者」(公開中)でチャレンジしたのは、狂気に満ちたストーカー役だ。役柄への思い、演技へのアプローチについて語ってもらった。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)
本作は、ロックバンド「リンプ・ビズキット」のフロントマンでもあるフレッド・ダースト監督が、自身の実体験を基にメガホンをとった作品。映画オタクのストリートパフォーマー・ムース(トラボルタ)は、人気俳優ハンター・ダンバーの熱狂的なファンで、いつの日か彼のサインをもらうことを夢見ていた。念願叶ってサイン会に参加したものの、ハンターに冷たくあしらわれたことから、ムースの愛情が歪みはじめる。
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大スターであるトラボルタが“映画オタクのストーカー”という真逆の立場で演じている点が魅力的だ。また、SNSの普及によって生じた「スターへの誹謗中傷」「距離感が縮まったファンへの対応」など、人々が考えるべき現代ならではの問題にも言及している。突飛なキャラクターに扮したトラボルタだが、ムースには共感を抱く部分があったそうだ。
トラボルタ「奇妙に思われるかもしれないが、誰もがスクリーンに映る俳優、スポーツや音楽の分野で活躍している人々に、憧れの眼差しを向けていたことはあるはず。僕自身も憧れの人物に、(ストーカー行為ではないが)抑えられない感情を表現したいとは考えたし、ムースのように、スターへの思いを自由に表現できたら良いなぁと思ったことはある」
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やがて、幼少期を振り返り「子どもの頃、俳優のジェームズ・キャグニーになりたかった。彼が出演した『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』を何度も見返すほど。完全にジェームズ・キャグニーの虜になっていた」と告白。実際にキャグニーと会うこともできたようで「彼が80歳になった時に初めて対面して、それから亡くなるまでの6年間、友人になることができた。初対面の時の僕は、ムースのように動揺していたよ」と明かしていた。
トラボルタ「(脚本を読んだ時)ムースだけを切り離して考えずに、我々と同様にあらゆる複雑なことを抱えている人物だと思った。今作を鑑賞する観客は、ムースを応援することもあれば、逆に彼の行為が行き過ぎだと感じることもあるだろう。ムースのアパートには、全て自分にとって何らかの意味合いを持つものが飾られていて、彼はそれらを墓場まで持っていくほど気に入っている。それらを売ることができないほどの“真のファン”でもある」
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一方で、ムースが憧れる俳優ハンター・ダンバーについては「一見、良い父親で、忍耐強くも見えるが、セレブとしてはとても対応の悪い人物」と説明。「おそらく、ハンターのムースへの対応は、きっとどんなセレブもしないような扱いをしている。ただ、どんなセレブでも機嫌が悪い時はあるし、誰もが思いがけない行動をすることもある。本作で注目してほしい点は、両者には何度か行き過ぎた振る舞いがあり、どちらにも罪深い部分もある。つまり、誰もが白黒はっきりせず、明確な人物たちではないところが魅力なんだ」
ムースを演じるうえで、かなりダークなアプローチを行ったと予測できる。どのように役柄に肉付けしていったのだろうか。
トラボルタ「ほとんどの部分は、脚本が導いてくれた。普段は、まず脚本のキャラクター描写のなかで、本能的に惹かれていく部分を見つける。そして、そのキャラクターの土台となるアイデアを自ら形成し、幾重にもなる人物像を、レシピを見て料理をするように丁寧に作り上げていった。もっとも、今作での僕は、一度ムースになりきったら、休憩中でさえもムースのままだった。だから撮影クルーも『ムース、今日は何していたの?』『ムース、今日は、何を食べたの?』『今日は、どんな有名人にあったんだい?」とあえて声をかけてくれた。僕はムースになりきったまま、即興でそれらの質問に返答していた」
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「ムースに関しては、フレッドも同様の意見を持っていた。でも、彼は自身の音楽(メタル)を通して、ファンと強烈な感情で繋がっていたため、僕が持っているファンに対する概念とは異なっていた。ただ勘違いしないで欲しいんだけど、フレッドは僕が丁寧に作り上げたムースというキャラクターを気に入ってくれたよ」と語るトラボルタ。「フレッドにとっては、映画に向かう道程に音楽があっただけ。カメラの後ろに立てることに、撮影中は心地よさを感じているようにも思えた」と打ち明けてくれた。
ムースについて注目すべきポイントは、映画に関しての“良いセンス”を持っているというもの。「ハンターに『この脚本はヒドイから、あなたは出演するべきじゃなかった」と平気で言って批判する。一見、ハンターの全てを愛しているように見えるが『今、ハンターは何をすべきなのか?』という考えも持っている。そのこだわりがあるという点が面白いんだ」。
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トラボルタのファンサービスは有名で、映画館で新作のイベントを行うと、その会場にいたファンひとりひとりと写真を撮ってあげることもあるほど。ファンのためならば、自らの“栄光の証”も世に放出しているようだ。
トラボルタ「長年、自分が出演した映画の記念品を所有していたいと思っていた。でも、その記念品が誰かの手に渡り、より重要な価値を生むことになったとしたら……。『グリース』『サタデー・ナイト・フィーバー』『アーバン・カウボーイ』の記念品は、僕が所有しているよりも、大きな意味を持つことになると考えた。誰かの手に渡った方が喜んでもらえる。だから、記念品はあえて所有しないことにしていったんだ」
(C)BILL KENWRIGHT LTD, 2019
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