【「ジュラシック・パーク」評論】単なる「テーマパーク映画」ではない、恐竜スペクタクル映画の傑作
2020年6月28日 14:00

[映画.com ニュース] 新型コロナウイルスの影響により、多くの新作映画が公開延期となり、映画ファンの鑑賞機会は減るばかりです。映画.comでは、「映画.comオールタイム・ベスト」(https://eiga.com/alltime-best/)に選ばれた、ネットですぐ見られる作品の評論を毎週お届けいたします。今回は「ジュラシック・パーク」です。
あるシーンが、ビッグバジェットの恐竜スペクタクル映画「ジュラシック・パーク」にリアリティを与えている。
ビジネス界の大物であり「ジュラシック・パーク」の経営者ジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)と、古生物学者のグラント博士(サム・ニール)とサトラー博士(ローラ・ダーン)、数学者のマルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)が、生きた牛が檻の中にクレーンで落とされ、姿の見えないヴェロキラプトルに食べ尽くされるのを見るシーンだ。
そのシーンでは、左側から管理者のマルデューンがヴェロキラプトルの問題解決能力についてグラント博士に報告、同時に右側ではパークを運営することへの金銭的不安を払拭したいハモンドが施設の安全性についてサトラーに確認する。交錯するこの2つの会話は、おそらくセットの中で同じブームマイクを通して、同時に収録されている。その会話の背後に響き続けるラプトルの叫び声は、ハモンドに警戒心を覚えさせる。
このシネマヴェリテのような瞬間は、当時のトップクラスのCGIレンダリングや操り人形と同じくらい複雑にデザインされているように感じる。その理由の一つは、スティーブン・スピルバーグ監督が俳優たちに多くの自由を与えているからだ。この不穏な場所に集まっている面々が覚える自然な感覚をそのまま捉え、キャラクターに深みを与える機会として許容している。さらに重要なのは、多方向から同時に聞こえる会話によって、観客に、危険な状況に身を置いていると認識させることだ。
そして「ジュラシック・パーク」は、ゆっくりと観客を捕食する。科学者たちがハモンドの孫と一緒にパークの自動ジープツアーに出発、子どもたちは恐竜が動物園と変わらない人工的な環境の中に隠れているのを見て、がっかりする。だがその後、すべては悪い方向へと向かう。ハリケーンが島に上陸、パークのシステムエンジニアがシステムをハッキングし、恐竜のDNAを盗んで逃げようとする。
その時、私たちは凶悪な恐竜の姿を初めて目の当たりにすることになる。最初のT-Rexは、雷のストロボライトに照らされ、檻を破って現れた。本部に戻ると、リドリー・スコットの「エイリアン」のように暗い廊下から恐竜が飛び出してくる。
マーティン・スコセッシは最近、ハリウッドの大作映画はもう映画ではなく、単なる遊園地のアトラクションだと苦言を呈したが、「ジュラシック・パーク」は、そうした「テーマパーク映画」を応援する側なのかもしれない。しっかりしがみついて!
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