【「グラディエーター」評論】真面目な問題提起を含んだ、血みどろのファミリー映画
2020年5月24日 15:00

[映画.com ニュース] 新型コロナウイルスの影響により、多くの新作映画が公開延期となり、映画ファンの鑑賞機会は減るばかりです。映画.comでは、「映画.comオールタイム・ベスト」(https://eiga.com/alltime-best/)に選ばれた、ネットですぐ見られる作品の評論を毎週お届けいたします。今回は「グラディエーター」です。
1995年に「ブレイブハート」が大ヒットした影響なのか、その頃から「スパルタカス」(1960)や「ベン・ハー」(1959)式の叙事詩のような歴史スペクタクル映画が活発に制作されるようになった。なかでもリドリー・スコット監督の「グラディエーター」は世界中の映画館で大ヒットを記録。歴史的に正確かどうかは疑わしいが、分かりやすいストーリー、社会正義をめぐる考察、死へと向かう主人公の運命など、単なる娯楽だけではない、真面目な問題提起を含んだ作品になっている。
穂の表面に手を滑らせながら小麦畑を歩く印象的なオープニングの後、ローマ軍を率いるマキシマス将軍(ラッセル・クロウ)は、炎の矢の飛び交う戦場へ突撃する。ゲルマニア遠征のため、本作の翌年に公開された「ロード・オブ・ザ・リング」のオーク軍のような蛮族と戦っているのだ。
ローマ皇帝はマキシマスの勇気を尊敬し、正統な帝位継承者である皇子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)の代わりに、マキシマスに帝位を継承させようとする。もちろん、コモドゥスは怒り狂い、皇帝を殺し、マキシマスと彼の家族の死刑を命令する。マキシマスは家族を救うため馬で故郷へと向かうが間に合わない。疲れ果て気を失ったマキシマスは奴隷商人に捕らえられ、奴隷市場で見世物試合を行う「剣闘士(グラディエーター)」として売り飛ばされる。
皇帝に国政を託されるほどのマキシマスは、すぐに一流のグラディエーターになる。彼が名を揚げた同時期、大闘技場でコモドゥスが主催する試合が行われ、宿敵である二人は再開を果たす。コモドゥスは自分の立場を危うくするマキシマスを抹殺するため、一騎打ちを申し入れる。民衆に愛されるマキシマスと、悪評高い統治者コモドゥス。非情な統治者を打ち倒せと、民衆は大闘技場の観客席から声援を送る。政治的なメッセージをはらんだ剣と拳による壮絶なアクション。血や四肢が吹き飛ぶ戦いは、決して無意味ではない。
ストーリーの複雑さが足りないとはいえ、「善」と「悪」に振り切った主役二人の演技は最高だ。ラッセル・クロウはこの役でアカデミー主演男優賞を受賞し、ホアキン・フェニックスが「ジョーカー」で表現した悪役のルーツを見ることができる。広大な土地に組み上げられた巨大な撮影セットにリアリティを与え、衣裳デザイン賞、録音賞、視覚効果賞も受賞した「グラディエーター」には、リビング・ルームにいながら遊園地にいるかのように感じさせる、催眠術のようなパワーがある。
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