ベルリン映画祭でアン・リーと是枝裕和が対談 お互いの好きな作品を上映
2020年2月29日 12:00
[映画.com ニュース]第70回ベルリン国際映画祭で、70周年を記念するスペシャル・イベントとして企画された監督対談「オン・トランスミッション」シリーズにおいて、アン・リーと是枝裕和両監督が顔を合わせた。本企画は、7組の監督がそれぞれ互いのフィルモグラフィーのなかから好きな一作を選び、上映と対談をおこなうもの。お互いに尊敬しているというふたりは、アン・リーが是枝監督の「ワンダフルライフ」を、是枝がリー監督の「ブロークバック・マウンテン」を選んだ。
リー監督はその選択の理由を、「とてもユニークで、特別な作品。初めて見たときには衝撃を受けました。いったいどこからこのような映画のアイディアが浮かんだのだろうと思いました。静かなのに、感情が深く残る。悲しくもあり、優しくもあり、とても美しい作品。」と語った。一方、是枝監督は「ブロークバック~」について、「冒頭の3カットを見て、すでにこの作品は傑作だろうと想像できます。そして最後まで一瞬もそれが裏切られることがない。キャスティングも脇役に至るまで的確で、ひとつの理想型としてこういう映画を作りたいと思わせられる作品です」と語った。
ふたりはこの後、お互いのキャリアや作品に対して感想を言い合うとともに、質問をぶつけあった。是枝監督は、「初めてリー監督の作品を見たのは「ウェディング・バンケット」でしたが、その後「いつか晴れた日に」を観て、アジア人でもアメリカで、言語の壁を越えてキャリアを築いていけるのだ、ということを認識させられました。リー監督とは以前も対談したことがあるのですが、そのときに言葉の壁について質問をしたら、とても楽天的に「なんとかなるよ」と言われたので、そうなのかなと思いました(笑)」と語り、そのことが、フランスで撮影した最新作「真実」でも励みになったことを語った。さらに、「じつは2000年以降に「ワンダフルライフ」をリー監督がリメイクするという話があったものの、結局実現しないままになってしまった。大変申し訳ないと思っています」と、リメイク話があったことを明かした。
リー監督は、「わたしは小さいときは中国映画を見ながら育ちましたが、その後日本の巨匠たちの作品を発見しました。中国と日本映画の違いは、日本映画の方がより東洋的、そして悲しさと優しさがあると思います。わたしは日本映画が大好きです」と日本映画愛をアピール。さらに「『ブロークバック~』はアメリカの典型的西部の世界と言えますが、原作者は女性で監督のわたしはアジア人。ですから西洋的云々というものはあまり意識しませんでしたし、テーマは普遍的だと思います。この原作は、読んでからずっと何年もわたしの心のなかに取り憑いていました。ブロークバック・マウンテンとはなんだろう、ということを自分なりに解釈して描きました」と語った。
終始おだやかで訥々(とつとつ)と語るリー監督に、どちらかといえば是枝監督が機会を得ては質問する、といった対談はおよそ1時間に及び、満席の会場を魅了した。(佐藤久理子)
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。