アートディレクター・大島依提亜「パターソン」「アメリカン・アニマルズ」ポスター製作秘話を語る

2019年9月2日 18:30

国立映画アーカイブの岡田秀則氏と大島依提亜氏
国立映画アーカイブの岡田秀則氏と大島依提亜氏

[映画.com ニュース] 書籍「時代と作品で読み解く映画ポスターの歴史」(玄光社)の先行発売を記念したトークショーが9月1日、東京・六本木のTSUTAYA TOKYO ROPPONGIで開催された。同書の監修を担当した国立映画アーカイブの主任研究員である岡田秀則氏と、数多くの映画ポスターのデザインを手掛けるアートディレクターの大島依提亜氏が登壇した。

「時代と作品で読み解く映画ポスターの歴史」は、映画ポスターを通して映画のムーブメント、デザインを担当したアーティストのスタイル、政治や社会情勢の移り変わりを紐解いていく文献。お気に入りのポスターについて、岡田氏は「カメラを持った男(これがロシヤだ)」「オルフェ」「ギルダ」「白銀のレーサー」「唇からナイフ」「スティング」「オール・アバウト・マイ・マザー」、大島氏は「黄金の腕」「ローズマリーの赤ちゃん」「ロブスター」を挙げた。

本国版のビジュアルをほぼ採用した 「アメリカン・アニマルズ」
本国版のビジュアルをほぼ採用した 「アメリカン・アニマルズ」

リタ・ヘイワースの主演映画「ギルダ」のポスターは、煙草をくゆらせる鮮やかなドレス姿のヘイワースを切り取ったもの。岡田氏は「AFI(American Film Institute)の『アメリカンクラシック映画ポスターベスト100』で1位になって、アメリカの業界でも、ものすごく評判が高いポスター。映画の内容は南米のバーに流れ着いた歌姫が、純粋な男と裏街道の男に奪い合われるファムファタル(運命の女)の話」と紹介。大島氏は「このポスターでは煙草を吸っていますけど、今このポスターを作ったら劇場には掲示できないですね」とコメントした。

映画作品のグラフィックデザインを手掛けてきた大島氏は、「海外版のビジュアルが良ければ率先して使い、日本のマーケットに齟齬がある場合は変えるスタンス」だという。ポスターデザインを手掛けた「アメリカン・アニマルズ」は本国版のビジュアルをほぼ採用し、日本版ではタイトルのフォントを変更。「(日本版は)新聞の見出し文字のゴシック体を使っていて、大学生による強盗事件を描いたセンセーショナルな部分、本当の事件をモチーフにしているというジャーナリスティックな部分を出すために、フォントを調整しました」と説明した。

日常の中の3日間を切り取った「パターソン」
日常の中の3日間を切り取った「パターソン」

さらに大島氏が携わったジム・ジャームッシュ監督作「パターソン」は、「1週間の日常を完全にリフレインする映画なんですけど。最初のシークエンスが必ず朝起きたところ、ベッドの中の俯瞰ショットから始まるんですね。日常の3日間を並べると差が出るし、日々の所作も表せるかなと思って使ってみました」と振り返る。本国版に使用されている、主演アダム・ドライバーの筆跡から作られた“アダム・フォント”に関しては、「アダム・ドライバーの文字がうますぎるというか……(笑)。ジャームッシュの映画は、ぎこちなさや不器用さがあります。日本人にジャームッシュを説明する場合は、少しぎくしゃくして拙い感じを出したくて、違うフォントにしました」と明かす。そして、「アダム・ドライバーに『片仮名で書いてもらえませんか?』ってお願いしようとしたけど、全く読めない字が来たらどうしようと思っちゃって。でもボツにはできないので、断念しちゃった」と裏話も飛び出し、会場は笑いに包まれた。

最近はアーティストとコラボレーションし、ポスターの多彩なバリエーションを製作する活動を始めたという大島氏。「アメリカン・アニマルズ」ではヒグチユウコ氏、羽鳥好美氏、イラストレーターユニット「100%ORANGE」にポスターの絵を依頼した。「宣伝ポスターの日本版にはハードルが高い部分があって、アート性の高いポスターを宣伝ビジュアルに使うのはなかなか難しい状況ではありますね。今のソーシャルメディアの世の中で、確立したメインビジュアルだけで走らせるんじゃなくて、多角的に訴えるために、いろんな層の人に訴えかけられるようなポスターをいろいろ作っていいんじゃないかと思い始めたんですね」と、今後のデザイン活動への思いを明かした。

(映画.com速報)

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2004年に4人の大学生が時価1200万ドル(約12億円相当)のビンテージ本強奪を狙った窃盗事件を映画化。

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