野村周平×ANARCHY「WALKING MAN」撮影現場に潜入 下町の中華屋で何が起きたのか?
2019年8月13日 10:00

[映画.com ニュース] 野村周平が主演し、カリスマラッパー・ANARCHY(アナーキー)が映画監督に初挑戦する「WALKING MAN」の撮影現場に映画.comが潜入した。
極貧の母子家庭で育ち、幼いころから吃音症とコミュ障に悩む主人公・アトム(野村)。不用品回収業で生計を立てるなか、偶然出合ったラップに突き動かされ、バカにされながらも最底辺の生活から抜け出すべく奮闘していく物語。
主人公たちが暮らすのは、神奈川県川崎市の工業地帯という設定だが、物語の雰囲気に合った場所を求め、東京都内や千葉県木更津市などでもロケが行われた。このほど公開されたのは、2018年、年の瀬も迫った11月下旬の夕刻、葛飾区新小岩の中華料理店での撮影模様だ。

劇中の中華料理店「大三元」は、中国人らしき店主とその妻が店を切り盛りし、伊藤ゆみが演じる韓国人のキムが、ホール係として働いている。柏原収史が扮する、アトムの職場の先輩の山本が行きつけという設定。何かの理由があり、アトムが山本にかつて連れて行ってもらった大三元を再び訪れる…という一場面が公開された。
「何件か回って、ここだと思ったんです。イメージどおりだな、と」ANARCHY監督が選んだ店舗は、赤色を基調としたレトロな内装で、昔ながらの町の中華屋という印象的だ。しかし、撮影されたのは営業を終えた後の「大三元」を訪れたアトムと、何かを警戒して外を伺いながらドアを閉める店主と妻、というワケありな雰囲気の場面。言いたいことがあっても言葉にできないアトムを野村が繊細な表情の演技で、石橋蓮司と渡辺真起子が怪しげな夫婦を、ベテランの風格で作り上げた。店内で一体何が起こっているのか、本編への期待が高まるシーンだ。
撮影は、近作では吉田大八監督「羊の木」、黒沢清監督「旅のおわり世界のはじまり」などを担当した芦澤明子氏。真剣な表情でモニタを凝視するANARCHY監督は、名カメラマンとして知られる芦澤氏に全幅の信頼を寄せているようで、芦澤氏がいくつか異なったカメラ位置からの撮影をANARCHY監督に提案する場面も確認できた。

撮影の合間に取材に応じたANARCHY監督は「キャストも含め、初めての方ばかりですが、僕がいちばん素人だと思っているので、いろんな人に話を聞いて、ロケハンから何カ月もかけてコミュニケーションをとり、その距離はどんどん縮まってきているような気がします」と映画製作の現場を身を以って体験した感想を述べ、「ものづくりということでは音楽と一緒かもしれませんが、僕とパートナーだけでできるものではない。今まで、一軒家を建てていたのが、お城を建てるような感じ。いろんな人の力を借りないとできない。出来上がったときの達成感は、もっとすごいものになるのではないかと。今は撮影中ですが、ワクワクしています」と初の映画作品完成へ期待を寄せる。
商店街に程近く、通行人の多い通りに面した場所だけに、否が応でも目立ってしまう撮影班。帰宅途中の女子高生たちに気づかれ、撮影の合間に声を掛けられても、にこやかに応対する野村の自然体な姿が印象的だった。

わずか10日間という急ピッチの撮影を駆け抜けた野村は、もともと友人同士だというANARCHY監督の現場をこう振り返る。「最初は戸惑っている部分もたくさんあったように感じましたが、後半からとても監督らしくなってきました。とても斬新なカットを撮り始めて、凄くよかったです。喧嘩のシーンやアクションのシーンでは、皆と会話がかみ合わなくなっていくんですけど(笑)、そういうところも含めてANARCHY監督ならではだなと思いました」
そして、今回ANARCHY監督の指導の下、初めてラップにも挑戦。「やはり、“リアル”なんです。自分の経験したことを語るとき嘘がないですし、きちんと相手をディスることができますし、褒めることもできるんです。ディスるだけじゃないラッパーなんです。ちゃんとハッピーにできるラッパーなんです」とラッパーANARCHYの魅力を説明する。

ANARCHY監督は、「アメリカのヒップホップの映画と違って、銃やギャングが出てくるわけでもありません。主人公は平凡だけれど、いろんな怒りが溜まりまくって、ラップになる。それを表現できるのが、アトムというキャラクター。言えなかったことを言葉にする、そこがポイント。普段元気がなかったり、なにかを言えない子ってたくさんいると思うので、そういう子に対して、それがラップじゃなくても、自分の気持ちを言ったり、やりたいことができるような一歩になるような映画にしたい」と本作に込めた思いを吐露する。
また、世界的に見て、まだまだ認知度が高いとはいえない日本のヒップホップカルチャーに一石を投じたいという思いがあるそうだ。「日本のヒップホップ文化を小さくしているのは、『それはヒップホップじゃねえ』とか言い合う、日本でヒップホップをやっている奴ら。俺は、そういうのをぶっ壊したくて。こういう映画が、そういうものを壊すチャレンジになると思うし、壊していく責任が自分にはあると思っています」と力強く語った。
「WALKING MAN」は10月11日全国公開。
(C)2019 映画「WALKING MAN」製作委員会
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