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役者・仲代達矢、主演時代劇「帰郷」撮影に「最後の作品という覚悟」

2019年8月2日 19:00

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ロケ地での取材に応じた仲代達矢
ロケ地での取材に応じた仲代達矢

[映画.com ニュース]主演の仲代達矢杉田成道監督ら、2015年の時代劇「果し合い」のキャスト、スタッフ陣が再集結した時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇最新作「帰郷」の撮影風景が報道陣に公開され、役者・仲代達矢が本作にかける思いを語った。

30年以上にわたり仲代が映像化を熱望したという、時代小説の名手・藤沢周平による初期短編の傑作「帰郷」を、杉田監督が京都の熟練スタッフたちとともに映像化した本作。若かりしころ、わけあって故郷の木曾福島を出奔した年老いた渡世人・宇之吉(仲代)が、ふとした思いで故郷に帰るさまを、史上初の“8K時代劇”として描き出す。舞台となるのは信州・木曾福島。日本の原風景ともいうべき自然豊かな山里の中で、撮影は行われていた。この日、報道陣に公開されたのは、宇之吉(仲代)、おくみ(常盤貴子)、源太(緒形直人)ら3人によるラストシーン。木曾・御嶽山を望む高原を舞台に3人の人生が交錯する……。

ドラマ「北の国から」などで知られる杉田監督は常々「粘る監督」と評されるが、この日もやはり噂に違わぬ粘り腰を発揮。クライマックスの芝居を、カメラの角度を変えながら、納得いくまで繰り返し撮影する。その様子に、「やっぱりしつこいですよね」と笑ってみせた仲代は、「シーンが終わったなと思ってホッとしていると、また反対側の角度から撮ろうと言われるんですよ。オッケーと言われて安心したのも束の間、もう一度、違う角度から撮るというわけですからね」とちゃめっ気たっぷりに打ち明ける。

一方の杉田監督は「これでも、だいぶ抑えている方なんですけどね」と笑いつつも、「今回はスタイルを変えようかなと思うんですけど、始めるとついついいつも通りになっちゃうんですよ」と返してみせる。だが仲代は、それゆえに杉田監督に絶大なる信頼を寄せているようだ。「昔から杉田監督の情熱は変わりませんね。まるで役者1年生になったようにダメ出しをいただくんです。杉田ワールドに飛び込んで、役者になりたての新人のような気持ちでやっています」。

「帰郷」原作 藤沢周平(文春文庫『又蔵の火』所収)
「帰郷」原作 藤沢周平(文春文庫『又蔵の火』所収)

老いた渡世人という自身の役柄にも、ベテランになると共感するものがあるそうだ。「私もキャリアを重ねて、役者として晩年を迎えていると思っております。ベテランになると名優扱いされてしまいがちですが、やはり若いころの方が力はあるし、肉体的にも大変になってきますよね。そういう意味では、宇之吉の晩年と、私自身の晩年が重なりあっているような気がしています」。一方で本作の撮影中においては、雨の中の撮影やチャンバラシーンなどもあり、決して楽な作品というわけではなかった。「腰も痛いんですけどね」と笑いながら、「普段ならとてもじゃないけど出来ないようなアクションも、これがカメラに映って画になると思うと、不思議と痛さを忘れるんですよ。で、カットがかかると、また腰の痛さを思い出すというわけなんです」と話す。

そんな“役者・仲代達矢”のすごみに、杉田監督も熱いまなざしを送る。「宇之吉という男は渡世人で、厳しいものを持たざるを得ない役。かつて仲代さんが数々の作品で見せたすごみのようなものが裏側に存在していて、僕としては仲代さんにしか出来ない役だと思うわけですよ。さらに表情のアップを撮ると、ギリシャの彫刻を撮っているような気持ちになってくる。しみじみと名優だよな、世界の仲代だよなと感じてしまいますね」。

そうやって全精力を傾けて取り組んだ本作。仲代は「役者の晩年だと思ってやっております。もしかしたら、これが最後の作品になるかもしれません。それくらいの覚悟を持ってやっています」と語った。

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