峯田和伸×古舘佑太郎×石橋静河が爆笑トークで解き明かす「いちごの唄」
2019年7月7日 11:00
NHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」の脚本家・岡田惠和氏とロックバンド「銀杏BOYZ」の峯田和伸が共同名義で執筆した同名小説を原作にした「いちごの唄」(菅原伸太郎監督)はまさに、“いちご”のような甘酸っぱい青春ストーリーだ。原作・音楽・出演の峯田、純粋無垢な青年コウタを演じた古舘佑太郎、ヒロイン役の石橋静河の3人が爆笑トークで作品の魅力を語ってくれた。(取材・文・写真/平辻哲也)
同作は「ひよっこ」の脚本・岡田氏、出演の峯田のコンビが、「銀杏BOYZ」の名曲「漂流教室」「ぽあだむ」などをイメージソースに、純真無垢な青年コウタ(古舘)が中学時代、密かに「女神」と崇めていた初恋の相手、千日(石橋)と10年後に再会し、恋心を抱く姿を描く。原作・音楽・出演の3役をこなした峯田は、原作の物語について「岡田さんの色と自分の音楽がどういうふうに結びつくのか、と思っていました。でも、なんとなく予想はしていて、銀杏BOYZの曲もシリアスなものもあれば、ちょっと甘めのやつもあるので、そのふたつがあわさったファンタジーのよう。読み物として、すごく面白かったです」と話す。
物語は、思ったままに行動するピュアすぎる青年と、過去に大きな秘密を抱える少し影のあるヒロインという対照的なふたりの姿が魅力的だ。特にコウタの走る姿が物語を生き生きとさせている。主演に選ばれたのは、同じく「ひよっこ」の出演者で、ミュージシャン、俳優として活躍する古舘だ。
「お世話になった峯田さんと岡田さんが作った小説が映画になるという喜びとと同時に、自分が主軸に入るということにはプレッシャー、不安はありました。ちゃんと役に向き合ってやっていかなければ、という自覚みたいなものが大きかった」。ヒロイン役の石橋は製作陣たっての希望で選ばれた。「脚本は、千日という役を意識して読んでいたので、これは大変な役だなと思っていて、そこに引っ張られる部分がありつつも、物語は青春を肯定しつつ、最後はすごく明るい話でいいなと思っていました」と振り返る。
古舘と石橋は本作が初共演。互いの印象はどうだったのか。 「石橋さんの喋っているときのような感じで、セリフを言う人なのかなと勝手に思っていました。僕は技術もそんなにないですし、全部大きく芝居をしているな、というのがずっとあったので、やりづらいと思われちゃったらどうしようと思っていたんです。僕自身、コウタ役に悩んで、試行錯誤していた時だったんですけども、石橋さんは全部それを受け止めてくれ、プラスの方に感じ取ってくれました。石橋さんじゃなかったら、最後までこられなかったんじゃないかな。劇中のコウタのように『女神だ』と思っていました」と古舘。
一方の石橋はその“女神”発言に笑みを浮かべながら、「もちろん、決まったコースはないと思うのですが、(古舘は)音楽、お芝居をやっていて、何か新しいやり方をされている方なのかな、という印象でした。私自身、(千日役を)どう演じようかと迷っていたんですが、衣装合わせでお会いしたら、もうコウタにしか見えなかった」と話す。
そんなふたりが決まり、峯田も“映画としての物語が生き生きと動き出した”と語る。「古舘くん目線、コウタ目線で始まって、コウタの息遣い、心拍数、歩調、そのリズムが原作の世界観は合っていると思うし、あーちゃん(石橋演じるヒロインのニックネーム)が登場すると、あーちゃんの速度になるんですよね。それは石橋さんのすごさだし、その速度の違いが対照的で、面白かった」と話した。
峯田は、ふたりを出会いからずっと黙って見守るラーメン店の店主役でも出演。「原作から携わったので、本当は映画には出たくなかった。やっぱり、自分の音楽がかかるものに、出るっていうのはうれしいけども、恥ずかしい。ふたりの距離が縮んでいったり、離れていったりっていうのを遠くから見ている役なので、『頑張れ、コウタ!』と思っていましたね」と振り返る。
この3人の共演シーンは劇中、何度か登場するが、全て序盤にまとめて撮影したものだという。古舘は、このシーンがあったからこそ、コウタになりきれた。「この現場に峯田さんっていう存在がいるっていうことが、僕らふたりにとってみれば、心強かった。途中の取材でも、『ふたりが演じてくれ、よかった』と言ってくれ、支えになりました。峯田さんにハンコを押してもらったような感じがして、以降の撮影の自信になり、よりエンジンかかった」と古舘。石橋も「峯田さんがいてくれ、安心感がありました」と話す。
古舘は「あそこで、峯田さんに見てもらわなかったら、撮影が終わって、初号のときに見てもらうことになる。そう思うと、ゾッとしますね。峯田さんがいたことによって、道連れじゃないけども、『峯田さん、いたよね』と言えるわけで」と言うと、峯田は「それは気を遣いすぎだって。オレは原作で関わっているけど、あくまでも、これは映画だからね。だから、オレがどうこうなんて、気にしないでくれ。撮影に入る前に、(古舘から)『この役をどうしたらいいですかね』とメールが来たけれども、オレは返さなかったもん。そんなことを言えるタマじゃないし、そんなことは意識しなくてもいいと思っていた。たとえば、忌野清志郎さんの映画にオレが出ることがあったとして、オレもどうしようかと思うだろうけど、それを意識していたら、清志郎さんも喜ばないと思うし、自分のやりたいようにやった方が喜んでもらえるはず。そう思わない?」と返す。
「でも、(その場で)『よかった』とは言わなかったよね」と峯田が笑って否定すると、古舘は「僕はポジティブすぎるのかもしれないけど、そう感じましたよ。最終的に、自分の思い通りにやることができました」と感謝する。
古舘が峯田を意識していたのには、自身が「銀杏BOYZ」の大ファンだったことが大きい。「銀杏BOYZの楽曲はいろんな感情がひとつの塊のようになっている印象がありました。乱暴さとやさしさ。怖い部分とキュートな部分が120%で共存している感じで、その中から、かわいい部分を抽出していったのが、この物語という印象がありました」と話す。
「銀杏BOYZ」の楽曲から生まれたコウタという主人公は、峯田の分身とも言える存在だが、古舘は「僕個人はあんまりピンときてないんです。峯田さんの作る楽曲と、岡田さんが描きたい少年が合わさったような印象があって、分身とはあまり感じませんでした。だから、峯田さんの真似をしようとは思わなかった。この世界の主人公になろうと思ったんです」と語る。
峯田自身も、コウタには自分の要素はありつつも、むしろ、古舘自身に近い、と言う。古舘は「うーん、そうですね。自分とコウタは似ている部分と似てないがあって、変な感じです。似ているところは、思い込みが激しいところ、全部ポジティブなところ、自分流に解釈しちゃうところ、人の話を聞いているようで、聞いてないとか……。そういうところがちょっと似ているなって思うんですけど、僕自身はコウタのように、ここまで人に対してクリーンには思えないし、ここまで純粋か、と言われたら違うんですよ」と否定する。
そんな古舘の姿に、峯田は「でもさ、コウタも(古舘と)同じことを言うと思うよ。『コウタじゃない』というけど、コウタなんだって! 岡田さんは古舘くんのことばかりを考えて、当て書きした部分があったと思うよ。オレは古舘くんのことがどういう人かを知っているけど、映画館で初めて見た人は実際、こういう人なんだろうな、と思うはず。実際、オレから見ても、古舘君とコウタは近いなと思う」と笑い。それは峯田なりの、最大限の賛辞の言葉だ。
最後に、石橋に、「コウタみたいな男って、女性から見ていかがですか?」と水を向けると、峯田は「(石橋に)イコール古舘くんみたいな男はどうですか?って、ことですよ」と“補足”。石橋は少し当惑顔で、「ピュアで、かわいい純粋な男の子ですよね。一途、純粋でやさしくて、要素で言ったら、とても素敵だと思うんですけども……」と言いかけると、古舘は「あ、その後は言わないで!」とストップをかける。
石橋は「いやいや、違います。(古舘のことではなく)コウタのことですから。……素敵だと思います!」と笑みを見せる。
古舘は「男って、最低だけど、カッコいいというのが一番いいじゃないですか。僕はその逆なんです。『いいやつだけども、男としては……』って。それを今、言われたような気がして……」とポツリ。峯田は「それがいいんだよ!」と優しくフォロー。そんなやりとりは、まるで映画の続きを見ているよう。最後まで笑いが絶えなかった。
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