醍醐虎汰朗&森七菜「天気の子」で“最上の正解”を探り続ける! 本編アフレコに密着
2019年6月19日 08:00
[映画.com ニュース]新海誠監督(「秒速5センチメートル」「君の名は。」)の最新作「天気の子」の本編アフレコ収録が5月25日、都内のスタジオで行われた。
さかのぼること3月16日、予告アフレコ収録の場で、主人公・森嶋帆高(もりしま・ほだか)&ヒロイン・天野陽菜(あまの・ひな)に初めて息吹を注いだ醍醐虎汰朗と森七菜。当時は「(手が)プルプルしてるよ」(醍醐)、「泣きそうなくらい緊張してる!」(森)とプレッシャーに圧し潰されそうだったが、それから何度も収録を重ねた結果、2人は飛躍的な成長を遂げたようだ。自信に満ちあふれた彼らの表情は、新海監督が導き出した「森嶋帆高=醍醐虎汰朗」「天野陽菜=森七菜」という方程式の正しさを証明していた。
アフレコ収録前、醍醐と森はスタジオの外で猛特訓を重ねていた。この日、2人が声を当て込むシーンには、帆高と陽菜がある有名楽曲を歌うという場面が含まれていた。スマートフォンで音源を流し、自らが演じるキャラクターとして何度も、何度も歌い上げる。報道陣の待機場所にまで響き渡る歌声、そして充実の日々を送っていることを示すかのような笑い声――予告アフレコ収録以来の対面、期待に胸が膨らんでいく。
「グランドエスケープ(Movie edit)feat.三浦透子」のボーカルとして参加している三浦透子も見守るなか、本番がスタート。特筆すべきは、醍醐と森を“作品をけん引する者”と認めたうえで与えられる高度な要求だ。対話の最中に生まれる感嘆の声をアドリブで求められ、キャラクターの姿勢が発音に影響するという点にも容赦なく言及される。アドバイスを受けながら“正解”を模索していく醍醐と森。新海監督の演出方法もユニークだ。2人の“声”を決して否定せず「素敵でした」と一言添えてから、新たなテイクへと誘う。まるで全ての“正解”のなかから“最上の正解”を選び続けているかのようだった。
収録の途中、作画監督・田村篤氏がサプライズプレゼントを贈るひと幕もあった。醍醐と森に手渡されたのは、激励のメッセージを添えた帆高と陽菜のイラスト。テンションが急上昇した2人は、そのモチベーションのまま、陽菜の弟・凪役の吉柳咲良も参加する歌唱シーンへと臨むことになった。帆高&陽菜として“歌う”――キャラクターとしての歌唱はなかなか難しいようで、1発OKとはいかず。しかし、醍醐と森の表情は、常に晴れやかだ。予告アフレコ収録時に「“楽しいことが沢山ある”という気分でスタジオに来ていただけたら」と語った新海監督の言葉通り、心の奥底から作業を楽しんでいるようだった。
収録後に行われた囲み取材では、「最初の頃は緊張してしまって、あまり“ほぐれていない”感じだったんです。でも、今では仕事をしにきているのか、遊びにきているのかわからないくらいの感覚でアフレコに臨めているので、すごく楽しい。今は“自分=帆高”であることに少し自信を持ててきました」(醍醐)、「スタッフの皆さんが本当に優しくて。最初の頃の固い感じがなくなって、今はのびのびやらせていただいています。(醍醐と同様に)『私が陽菜だ』という決意みたいなものが芽生えてきましたし、(かつて感じた)プレッシャーは、今ではほぼないんです」(森)と心境を打ち明けた。
森「最近、新海監督から『声の芝居が、声優さんっぽくなってきたね』と言っていただけました。声優さんのお芝居を間近で見ることかできているので、テクニックも身に付いてきたのかな。現場で学んだことをメモして、醍醐君と教え合ったりしながら、成長しています」
醍醐「具体例を挙げるとすれば、声の距離感。相手が何処にいるかによってボリュームを変えたりしていますし、息遣いに関して言えば、少し声を入れるのか、全く声を入れないか、それだけで聴こえ方が全く異なるんです。声優の方々は、様々な音を組み合わせて、全て違うバージョンでやっていらっしゃいます。これは教えていただかないと気づかない部分でした」
互いに切磋琢磨し、固い絆で結ばれた醍醐と森。「(芝居の方向性が)わからなくなってしまう時は、とことんわからなくなってしまって、自己嫌悪に陥ってしまうんです。醍醐君は、そういう時に『こうした方がいいよ』『大丈夫』と励ましてくれる。時々、先生みたいな感じなんです(笑)」と森が語れば、醍醐は「七菜ちゃんは“天気みたいな子”」と表現。「感情がころころ変わるので、一緒にいて楽しいです。陽菜と同じ部分がある一方で、全然似ていないところもあるのが面白いですよね。たまにどっちと接しているのかわからない瞬間があるんですが、それを“ひななちゃん”と呼んでいます(笑)」と説明してくれた。
森「(“ひなな”について)特に意識していないんですけど、たまに『今、陽菜だったよ』と言われる時があるんです。劇中に登場する相づちを無意識に使っていたり。ずっと『天気の子』と一緒にいるので、その影響があるのかもしれません。醍醐君は、帆高と顔が似ていると思っていました。だんだんと絵が完成してきて、それまでわからなかった表情が見えてくると『あれ? 帆高って、醍醐君みたいだ』と感じることがあります」
田村氏からのプレゼントについて尋ねてみると「新海監督が『(作業が)大変なんです』と仰っていたので、私たちで何かできないかなと思って――寄せ書きとイラストを描いたものをプレゼントさせていただいたんです。(田村氏からのイラストは)比較にならないほどのお返しです」とほほ笑んだ森。すると、醍醐は「実は寄せ書きを最初に提案したのは、七菜ちゃんなんですよ。『スタッフの皆さんは疲れているだろうから、何かできることはないかなって』って言ってくれて、スケッチブックを持ってきたんです。いつもそうやって気配りしてくれる」と補足していた。
醍醐と森のアフレコ収録が全て終わったのは、6月5日。取材時は、その“終わり”が見えつつあった。「(アフレコ作業の終わりが近いことについて)考えないようにしています。収録に来るたびに帰るのが辛くなってしまいますから…。今は後先考えずにやっています」(醍醐)、「寂しいですね。初めて声優をやってみて、想像以上に楽しかったんです。だから、今は残りの時間を大切に過ごしています」(森)と胸の内を明かす。忘れがたいひと時を過ごした“新海ワールド”――2人が感じた魅力とはなんだったのだろうか。
醍醐「新海監督にしか描けない絵があると思います。(『天気の子』は)新海監督の作風が好きな人であれば、さらに新海作品が好きになって圧倒されてしまうはず。それに“感情の揺れ幅”という部分が、見ていて面白い部分です。感動したり、ハラハラしたり――これだけ感情を揺さぶられながら、最後にはホクホクとした感じで終わる映画。本当に素敵な作品なんです」
森「物語には何回も触れているんですが、気持ちが薄くならない。何回見ても、気持ちが満杯になって終わるんです。最近では、天気を気にするようになりました。晴れになっても、雨になっても、複雑な気持ち。天気によって、(本作の)物語を思い出すようになっているんです」
「天気の子」は、天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄される少年・森嶋帆高と少女・天野陽菜が自らの生き方を“選択”する物語。7月19日から全国公開。
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