「タクシードライバー」のロジックでブレッソン、ベルイマンを包みこんだ P・シュレイダー「魂のゆくえ」
2019年4月21日 19:00

「タクシードライバー」「レイジング・ブル」の脚本家として知られる、ポール・シュレイダーの監督作「魂のゆくえ」が公開された。イーサン・ホーク主演、信仰と資本主義社会の間で生きることに苦悩する牧師を描く人間ドラマだ。ベネチア国際映画祭でシュレイダーの最高傑作と評され、その後各国の映画祭で受賞、今年のアカデミー賞脚本賞にもノミネートされた話題作だ。シュレイダーが本作を語るインタビューを映画.comが入手した。
「はい。それに他の芸術家や場所から盗んだものを再構築し、再び新鮮なものに作り変えようと努力しています。ロベール・ブレッソンの『田舎司祭の日記』のキャラクター、イングマール・ベルイマンの「冬の光」の設定、タルコフスキーの空中浮遊シーン、カール・ドライヤーの『奇跡(1955)』のエンディング。その全てを『タクシードライバー』のロジックできつく包みこんだのです(笑)」
「我々は自分たち自身が生み出したテクノロジーによって配線を組み替えられてきました。あなたの父親がしていたのと同じやり方で映像の情報を理解してはいないでしょう。テクノロジーは我々を組み替えてしまうのです」
「私は歴史のスイートスポットに生きています。戦後世代でベビーブーマー。貧困や飢餓が最も少なく、教育が最も盛んで、最も娯楽的な時間です。歴史上、最も楽観的な時代だといえるでしょう。そしてこの驚くべき環境で私たちは何をしているでしょうか? 子孫のために、それを台無しにしただけです。我々は最高の世代の産物であるがゆえ、最も欲深い世代でもあるのです」
「60年代、私は自分たちが物事を進化させられると思っていました。明らかに、もうそう思ってはいません。私はずっと考え続け、両親の世代が死に絶えた時、我々は彼らの代わりになるのだと思っていましたが、実際にはそうではなく、ただ両親たちと同じ存在になってしまったのです!」
「彼自身もそう思っています! 自分で言っていました。彼はルネサンス的な男です。ミュージシャンであり劇作家で映画監督で小説家でもある。なんでもやるんです。私は彼の後退的なモードが好きなんです。そういう役者が好みなのです」
「いいえ。脚本を書きながら彼を思い浮かべていて、彼に送った翌日に電話をくれ、『やりたい』と言いました。誰かが決定する前にね。私の頭の中には3人の役者が思い浮かんでいました。1人はジェイク・ギレンホール、もうひとりはオスカー・アイザックです。イーサンは彼らより10歳ほど年上で、その10年の差はとても重要でした。彼は46歳で、ちょうどよい年齢だったのです」
「彼は病気を抱えています。それはキルケゴールのいう『死に至る病』であり絶望です。ですから彼が若いメアリーの夫に出会った時、彼は『死に至る病』について話をし、『君はそれに苦しんでいる』というのです。それは彼自身の苦しみであり、たくさんの治療方法があります。日記を書くこと、祈り、礼拝、アルコール。それら全ての方法を試しています。そして若者からウイルスをもらいます。環境保護ミッションというウィルスです」
「種が決断を下したのだと思います。もうとっくに手遅れです。未来の生存よりも、現在の快適さを選択したのです。テクノロジーに思うままに翻弄されている。我々は進化の移り変わりの時期にいるのだとも思います」
「ある作品に取り組んでいます。いくつかの企画です。でも急いではいません。何かを急いで作るよりも今を味わいたいのです。でも完成には近づきたいと思います。いくつかはお金のために書いていますが、個人的な作品を書くときも近づいていると考えています」
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