奇跡(1954)
劇場公開日:2021年12月25日
解説
デンマークの映画作家カール・テオドア・ドライヤーが、劇作家で牧師のカイ・ムンクによる戯曲「御言葉」を原作に家族の葛藤と信仰の真髄を問い、1955年・第16回ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた傑作ドラマ。ユトランド半島で農場を営むボーオン一家。真面目だが信仰心の薄い長男は、妻インガーをお産で亡くしてしまう。家族が悲嘆に暮れる中、精神的に不安定で自らをキリストと信じる次男ヨハンネスが失踪。しかし突然正気を取り戻し、インガーの葬儀に現れる。「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション」(2021年12月下旬~、シアター・イメージフォーラムほか)にてデジタルリマスター版で上映。
1954年製作/126分/G/デンマーク
原題:Ordet
配給:ザジフィルムズ
日本初公開:1979年2月10日
スタッフ・キャスト
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初カール・テオドア・ドライヤー作品。
正直、よくわからなかった。
信仰の在り方が人によって違うのはわかるが、
それが私の人生にどう影響するのか、
深読みが出来なすぎてスッと心に入ってこなかったのです…
どう受け止めたらいいか、全くわからなかった。
信仰に縁が無いからだろうか。
2022年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
このデンマーク映画の主題はキリスト教信仰の核心であり、それについてのある一家の挑戦である。それ故仏教徒の日本人が理解できるものには限界があるだろうし、いくら熟慮したところで私個人の信仰に及ぼす程の影響もない。しかし、この決定的に疎遠な題材でありながら、心の何処かで実は深い感銘を受けたことが不思議なくらいなのだ。キリスト教映画で、これに近い経験を持ったことがある。それは、スェーデンの巨匠イングマル・ベルイマンが神の不在を扱った「冬の光」のときで、救いを求める人間の弱さを認めたところに信仰と神の存在が必要とする一種のパラドックスの概念である。”沈黙”だからこそ、人間が創造した宗教が生み出されたのではないかと考える様に至った。神が答えてくれなくても、人間の思考から行動をより深い精神性で補うことが出来るのが宗教なのであろう。そこに導くだけの映像美が「冬の光」にはあった。
このカール・テオドア・ドライヤーの「奇跡」は、その神の不在とは対極の人間の力が及ばない生死についての神の奇跡を扱っている。「冬の光」が現実的とすると、これはとても非現実的であり、有り得ないだろうと思いながらも感動してしまう理屈では説明できない映像世界があった。それは偏に、荒涼たる北欧の風土に生きる人間の飾り気の無い、素朴にして純粋な生活を描写した映像の圧倒的な美しさと純度の高さにある。イングマル・ベルイマンやロベール・ブレッソンのモノクロ映画と類似した映像世界ではあるが、ここにはドライヤー監督独自の映像美と集中度の高い演劇的演出があり、程よい緊張感を待たせながら最後の劇的展開まで誘うのだ。これはドライヤー監督の唯一無二の演出力と感服せざるを得ない。室内シーンのカメラワークは正面から捉えたショットが中心になり、舞台劇の迫力を生み出している。原題を『ことば』とするだけの生活に密着した日常の会話劇。それでいて観る者を引き込むドライヤー監督の演出が素晴らしい。登場人物ひとり一人の人格設定とその配置は、舞台劇の戯曲のようにシンプルにして個性的に創作されている。
それは国籍や宗教の違いがあっても、芝居として人間を描いている映画の表現力と魅力に違いない。ボーエン家の家庭生活は、ひとつの生活信条を大切にして生きている人たちの住み家であり、対立するペーター家との宗派の対立も生き方の違いとしての作劇と捉えることが出来る。敢えてキリストの奇跡などあり得ないと主張する牧師を登場させることや、権威を振りかざす自信過剰な医師の存在は、主人公ボーエン家の人々の信仰心の純粋さを際立たせる役目でもあろう。これら余計なものを一切省いた信仰についての家庭劇は、最後の奇跡のクライマックスを感動の劇的終結で纏め上げている。何というストーリー、何という演劇、何という映画だろう。これは第一級の映画作品である。
1979年 2月19日 岩波ホール
1955年制作のこのドライヤー作品には、特別な驚嘆と感動に包まれました。日本公開の1979年は傑作揃いの外国映画が並び、生涯忘れられない年です。ベストテンも選定に困るくらいで、アンゲロプロスの「旅芸人の記録」オルミの「木靴の樹」ヴィスコンティの「イノセント」と合わせ順位を付けるのが憚られるほどでした。
参考までに当時の私的ベストテンを記すと
①奇跡②旅芸人の記録③木靴の樹④イノセント⑤リトルロマンス⑥プロビデンス⑦これからの人生⑧郵便配達は二度ベルを鳴らす⑨ディア・ハンター⑩女の叫び 次点 インテリア
改めて見ても、上位4作品は別格ですね。
2022年3月24日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
無宗教であることを自認し、排他的な一神教であるキリスト教やイスラム教には拒否感すら覚える者の感想です。
嫌なことがあれば信仰心が足りない、あるいはそれも神の思し召し、とにかく信仰信仰信仰、神神神。挙げ句の果てに同じキリスト教徒でありながら、その信仰のあり方の違いを理由にいがみ合う二つの家族。到底理解できない。まったくどうなってるのという感じで話は進みます。(信念ほど怖いものはない→信仰ほど怖いものはない)。
そして悲劇を迎える。悲嘆に暮れる主人公一家のもとに、いがみ合っていたはずの相手が訪れ、自分の非を認め仲直りを乞う。そんな様子に本当の信仰心とはこういうことなのかと心が洗われ、これが奇跡なのかと思っていたら、その後に本当の奇跡が起こる。神々しいクライマックスを迎える。
こういう映画、こういうクライマックスもありだと思う。幸せな気分になりました。
2022年3月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
デンマークでボーオン農場を経営してる一家。奥さんを亡くした父と長男、次男、三男、の3人の息子、長男の嫁と孫娘で暮らしていた。次男ヨハンネスは自分がキリストの生まれ変わりだと言い出して謎の行動をとりだした。三男は仕立て屋の娘に恋するが宗派が違うと両方の親から結婚を認めてもらえない。信仰心の薄い長男の妻インガーが子供を産むが残念ながら難産の末、赤ちゃんも助からず亡くなってしまった、家族が悲しみに暮れる中、精神的に不安定で失踪していた次男が突然正気を取り戻し、インガーの葬儀に現れたという話。
キリスト教に詳しくないと理解できそうにないけど、信じれば奇跡が起きるという事なのだろう。
絶賛されているが、上記理由からか自分にはあまり響いてこなかった。
この監督の作品で、以前観たジャンヌは良かったけど。