「小さな恋のうた」佐野勇斗らが沖縄で響かせた“やさしい歌”に体感温度急上昇!
2019年3月28日 13:00
[映画.com ニュース] 人気バンド「MONGOL800」による楽曲を基にした映画「小さな恋のうた」の撮影現場が2018年11月、報道陣に公開された。主演・佐野勇斗をはじめ、共演の森永悠希、山田杏奈、眞栄田郷敦、鈴木仁が“メロディ”を奏でていたのは、沖縄・中頭郡にある県立高等学校。冬季にも関わらず、夏を感じさせるような暑さ――太陽の真下で繰り広げられる熱演を見ているうちに、体感温度は急激に上昇していった。
沖縄の小さな町に暮らす高校生たちが、バンド活動を通じ、仲間、親友、家族、フェンスを隔てた米軍基地に暮らす同世代の少女といった大切な人たちに“想い”を届けようとするさまを描く。「小さな恋のうた」「DON'T WORRY BE HAPPY」「あなたに」など「MONGOL800」の名曲が多数登場する感動の物語を手がけたのは、「羊と鋼の森」「雪の華」の橋本光二郎監督。この日行われていたのは、劇中の“山場”となる重要なシーン。撮影現場へと歩を進める報道陣の耳に飛び込んできたのは、世界を変えようとする“やさしい歌”だった。
校舎の屋上にいたのは、ベースを演奏しながら歌声を響き渡らせる佐野、負けじとギターをかき鳴らす山田、そして力強いスティックさばきで的確なリズムを刻むドラム担当の森永。声が枯れてしまうのではないかと不安を感じてしまうほど、入念なリハーサルを繰り返す一同に、学祭の参加者に扮したエキストラたちの熱視線が突き刺さっていた。佐野らが歌い上げたのは、タイトルロールの「小さな恋のうた」。その“メロディ”は学校の敷地を飛び越えて、街全体に響き渡り、間近に広がる大海へと注がれているかのようだった。
佐野らは、2018年5月から約半年間、それぞれの楽器練習に打ち込んだ。「練習を通じて、難しかったり大変だったこともあるんですけど、熱心に指導していただいたおかげで、演奏できるようになりました。初めてのライブシーンでは“生の演奏”を経験したんですが、それまでの練習の感覚とは全然違いました」と真栄城亮多役の佐野が振り返ると、「カノジョは嘘を愛しすぎてる」の出演以降、ドラムを練習し続けている池原航太郎役の森永は「ドラムは、他のパートをしっかりと見ていなくてはいけない位置づけにあるんです。バンドとしてどれだけギターや歌が上手くても、リズムの管理がしっかりしていないと曲が成立しない。大事な役割だということをわかっているので、毎回毎回テンポキープを意識、そして“エモさ”を第一に頑張っています」と経験者ならではの思いを述べていた。
譜久村舞役としてギター初挑戦となった山田は「練習期間では、他のメンバーと合わせながら演奏するという難しさ、面白さを感じました。その経験は、エキストラの皆さんの前で演奏した時のゾワっとした感覚、『(演奏は)こんなに楽しいんだ』という思いに直結しています」と告白。舞の兄・慎司役として俳優デビューを飾った眞栄田は「寝るよりもギターを触っていたい」と思うほど練習にのめり込み「(練習の段階で)音楽で会話できたことが、今の良い雰囲気に繋がっている」と分析する。一方、新里大輝役の鈴木はベースと接するうちに「どんどん『楽しい』という気持ちになっていき、次第に『次はどうすればいいのか』と考えるように。合同練習では、それぞれ担当する楽器は異なりましたが、互いに刺激されて、『負けない』という気持ちが生まれました」と充実の日々となっているようだ。
佐野にとって「小さな恋のうた」は思い入れの深い曲だ。「自分自身で『この曲を聞きたい!』と思って、両親に初めてダウンロードしてもらった曲なんです。その曲を映画化させていただくことに、運命を感じています」と感慨深げ。「曲は大好きだったんですが、これまでは“歌詞の意味を深く理解する”ということはしていませんでした。でも、今回は僕が作曲したという設定。曲の意味をきちんと理解していないといけない。たくさんの意味が込められてますし、なにより演奏している僕ら自身が楽しくなる。皆を引きつけ、笑顔にする――改めて、曲の良さを実感しました」と語っていた。
「どうやったらこの子達が素敵に撮れるんだろう」と日々考えているという橋本監督。「監督であれば、全てを演出しているようなイメージを抱くかもしれませんが、彼らはシーンごとの感情をきちんと表現してくれています。僕が足すのは、ほんの少しだけ。彼ら自身、それぞれが辿ろうとする道筋が見えていて、僕たちが求めているものに向かってきてくれています。スタッフたちは、その姿を見て『逃さないぞ』という感覚で切りとる。それがこの映画の主体となっています。映画の現場として健康的、理想的な場だなと思っています」と全幅の信頼を寄せている。
「羊と鋼の森」でタッグを組んでいた佐野と森永の起用について「佐野君は、嫌みのない明るさ、素直さ、誠実さが、カメラの前で芝居をしている時にも見えてくる。森永君は、皆の背中を引っ張って(居るべき場所に)戻してくれる。5人のはじけた青春を描くなかで、誰かがお兄さん的な立場でまとめなくてはいけないんです。こんなに甘えてしまっていいのかと思うほど、頼りになっています」と説明。さらに「山田さんは爆発力のある芝居ができる方。必要な時、それをバッと出せる。それだけの技術を身につけている点が素晴らしい。眞栄田君は、ある意味未知数です。自分よりも経験値の高い子たちに囲まれているということは、きっと大変でしょう。でも、毎日刺激を受けて成長しています。(本作は)彼のドキュメンタリーのような側面があるんですよ。同年代の子に接しながら『負けないぞ』という姿勢で臨むさまは、魅力的で清々しい。鈴木君は、決めるところはしっかりと決める、そして格好良さのなかに“可愛さ”を表現できる方。そのバランスが良いんです」とキャスティングに間違いはなかったようだ。
「MONGOL800」の楽曲は「ストレートな言葉と音、シンプルな思いで構成されているような気がする」と橋本監督。その特徴から表出するメッセージ性を意識しつつも「亮多たちが高校生の立場で感じているもの、大人や社会と接するなかで抱く怒りや憤り――本作を撮るにあたり、彼らの吐き出すような“力強さ”を活写したいと思っていました。その熱い思いを優先しながら、沖縄の問題、彼らが社会的に感じている気持ちが付属するような形で表れるようにしたい」と方向性を示しつつ、作品の“核”となる部分を明かした。
橋本監督「一番感じて欲しいのは、この子たちの青春や思いが“沖縄だけ”ではないということ。日本だけでなく世界中、様々な男の子や女の子が存在し、色々な思いを抱えながら、それを歌にしている子たちがいっぱいいると思うんです。だからこそ“音楽”は生まれる。沖縄の土地柄を生かしつつ、同じ地平の物語として見てくれる人たちに届けばいいなと感じています」
「小さな恋のうた」は、5月24日から全国公開。
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