「カメラを止めるな!」に続け! 大注目映画「岬の兄妹」は「伝説の始まり」
2019年2月21日 22:40
[映画.com ニュース] SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の国内コンペティション長編部門の優秀作品賞と観客賞に輝いた「岬の兄妹」のトークイベントが2月21日、東京・渋谷のユーロライブで行われ、メガホンをとった片山慎三監督、作家の樋口毅宏氏、映画評論家の森直人氏が出席。樋口氏は「『カメラを止めるな!』に続くのは、この作品です」と呼びかけ、日本映画界への不満をぶちまけた後「こういう映画がヒットしなかったら、間違いなんだよ!」と魂の絶叫。森氏も「この場から伝説が始まります」と断言した。
圧倒的な好評を得て、3月1日から全国される今作。ポン・ジュノ作品や山下敦弘作品などで助監督を務めた片山監督の初長編で、足に障がいを持つ兄・良夫(松浦祐也)が、自閉症の妹・真理子(和田光沙)を利用して売春で生計を立て、貧困から脱しようとする姿を描いた。
「ただただ、この映画に驚いている」と、青ざめながら口火を切った樋口氏。「誰もがコンプライアンスを気にする時代に、こういうのを作っていいんだ、と。自分が知らず知らずのうちに忖度していたんだと気付かされた。問題作という言葉が生ぬるい」と激賞の言葉を並べ、「あと、爽やかじゃない『ギルバート・グレイプ』ですよね。ジョニデもディカプリオも出てこないけど、やっぱり俳優がキラキラしている。『現実って嫌な感じだろ?』という貧しいところに訴えてこない。そういうところも素晴らしい」と述べた。
片山監督は「自分自身、親戚にダウン症の子がいたり(今作には)個人的な思い入れもあります」といい、「(題材を取材するため)ボランティアで絵を描く教室に参加し、実際に触れ合いました」と思いを馳せる。「取材している人に言われたのは、『障がいと言ってもいろんな個性があって、キャラがあるから、杓子定規に演出しないほうが良い。それぞれのキャラで筋が通っていれば大丈夫』と」と話し、「それに勇気づけられた。破天荒な真理子を作ってみようと思った」と感謝をにじませた。
さらに「15年ほど助監督をやっていましたが、最近の日本映画に思うところがある」と切り出す。「商業映画でデビュー作というと、普通、撮影期間は2週間くらい。それじゃあ、いい映画は絶対に作れない。自分のお金でいいから、コントロールしてすべて撮ろうと決めた。俳優さんも理解のある方々で、1年間も拘束して撮影するのは、あまり事務所などが許してくれない。わがままを通して、時間をかけて撮影することができた。感謝しています」と真摯に語り、「時間をかければ良いものができるというのを、身をもって示したかった。それが今回のもうひとつの目標でした」と思いを込めていた。
壇上には、主演の松浦と和田も登場。話題は観客の爆笑をかっさらう“ウンコバトル”におよび、片山監督がその誕生秘話を告白した。「まず、プールで子どもたちに襲われるところまで決まっていて。そこからどう脱出するかを考えた。戦国時代、人糞を投げる戦術があったと、どこかで読んだのを思い出した」といい、「人糞を作るのにも時間がかかった。赤味噌とバナナと練乳でベースを作り、天日干しにし、硬さも調整した。8時間くらいかけて作った」とこだわりを説明。和田は撮影当日を「監督がそれをタッパーで持ってきて、『何を大事そうに』と思った」と振り返り、松浦も「本番でいきなりケツに塗られて、かぶれて大変なことになった」とぼやいていた。
また舞台挨拶終了後、和田が出入り口で観客ひとりひとりを見送り、涙を流す女性客と話し込むひと幕も。NHKのテレビカメラが観客にインタビューする姿もあり、今作の注目度の高さをうかがわせた。
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