フィクション+ナマの成長の記録 三宅唱監督新作「ワイルドツアー」3月30日劇場公開決定
2019年1月9日 07:00
[映画.com ニュース] 三宅唱監督の最新作「ワイルドツアー」が、3月30日から劇場公開されることが決定。あわせて、写真家ホンマタカシ氏のポートレートが使用されたメインビジュアル、場面写真がお披露目された。
2月8日から東京都写真美術館で開催される「第11回恵比寿映像祭」で東京初上映となる本作は、山口情報芸術センター(YCAM)が実施する映画制作プロジェクト「YCAM Film Factory(ワイカム・フィルム・ファクトリー)」の第4弾として製作された作品。「YCAM Film Factory」では、柴田剛監督作「ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし」、映像制作集団「空族」の「バンコクナイツ」をもとに、マルチスクリーン・インスタレーションとして作られた「潜行一千里」、染谷将太がメガホンをとった短編映画「ブランク」(2月16日公開)が発表されている。
「Playback」「THE COCKPIT」といった意欲作に加え、18年に公開された「きみの鳥はうたえる」も話題を呼んだ三宅監督。本作は、YCAMの研究開発チーム「YCAMインターラボ」と協働し、約8カ月間の滞在制作の中で作り上げたもの。キャストは、ほぼ演技経験のない10代の中高生たちが参加。三宅監督と出演者たちが一緒に脚本や演出を考えながら撮影を重ねた結果、フィクション作品でありながら、時に彼らの“ナマの成長の記録”が映し出された珠玉の青春映画が完成した。
舞台は山口県山口市にあるアートセンター。大学1年生の中園うめ(伊藤帆乃花)は、「山口のDNA図鑑」というワークショップにファシリテーター(進行役)として参加している。参加者は、これから自分たちが暮らす街の様々な場所を歩きまわり、どんな植物が生えているのかを調べていく。ウメは中学3年生のタケ(栗林大輔)とシュン(安光隆太郎)を連れ、「新しい種」を求めて近くの森を探索し始める。
「YCAM Film Factory」の杉原永純氏から「最終的に映画でなくてもかまわない」というオファーを受けた三宅監督は「滞在制作中、映画以前からある演劇やダンス、また地域での芸術教育プラグラム、そしてSFのような最先端テクノロジーやバイオラボに囲まれ、なぜ芸術(施設)が人生や社会に必要なのかを日々模索しているYCAMスタッフらと共に、映画の役割を探った」と語る。そして「まずは日々のあれこれを記録するビデオダイアリーの手法から出発し、それをインスタレーション作品『ワールドツアー』として再構成しながら、ある時、僕らにはやっぱり物語や劇も必要だと気づいた」と振り返った。
その気づきを与えてくれたのは、地元の中高生たちだったようだ。「21世紀うまれの彼らと山や海や街角でなにかを発見したり、セリフを作ったり、何度も演じたりしながら、ようやく映画を発見できた気がした。。高校受験やら将来やら恋やら、人生の岐路に立って日々真剣に生きている彼らの姿は野生の動植物のように格好いい。リアルとかナチュラルでは収まらない、人間やこの社会の『ワイルド』な部分を捉えたいと思った。ぜひ彼らと『発見のよろこび』を共有してほしい」とコメントを寄せている。
「ワイルドツアー」は、3月30日から東京・渋谷のユーロスペースほか全国順次公開。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
旧ソビエト連邦史上最悪の連続殺人鬼を追う刑事の戦いを、実在の連続殺人犯たちをモデルに描いたサイコスリラー。 1991年、何者かに襲われて怪我を負った女性が森の近くで保護された。女性の証言によると、彼女に怪我を負わせた犯人の手口は3年前に捕まったはずの連続殺人犯のものと酷似しており、3年前の犯人は誤認逮捕だったことが判明。本当の連続殺人犯は10年以上にわたって残忍な犯行を繰り返し、36人を殺害していた。捜査責任者イッサは新たな容疑者アンドレイ・ワリタを追い詰め、尋問をする中で彼こそが真犯人だと確信していく。やがて、ワリタの口から驚くべき真実が明かされる。 本作が長編デビューとなるラド・クバタニアが監督・脚本を手がけ、1978年から90年にかけて50人以上を殺害した容疑で逮捕されたアンドレイ・チカチーロをはじめとする数々の連続殺人犯をモデルに、刑事や精神科医、犯罪学者にインタビューをしながら犯人の人物像を組み立てた。刑事イッサ役に「葡萄畑に帰ろう」のニカ・タバゼ。
休暇をもらって天国から降りてきた亡き母と、母が残したレシピで定食屋を営む娘が過ごす3日間を描いたファンタジーストーリー。 亡くなって3年目になる日、ポクチャは天国から3日間の休暇を与えられ、ルール案内を担当する新人ガイドととも幽霊として地上に降りてくる。娘のチンジュはアメリカの大学で教授を務めており、そのことを母として誇らしく思っていたポクチャだったが、チンジュは教授を辞めて故郷の家に戻り、定食屋を営んでいた。それを知った母の戸惑いには気づかず、チンジュは親友のミジンとともに、ポクチャの残したレシピを再現していく。その懐かしい味とともに、チンジュの中で次第に母との思い出がよみがえっていく。 母ポクチャ役は韓国で「国民の母」とも呼ばれ親しまれるベテラン俳優のキム・ヘスク、娘チンジュ役はドラマ「海街チャチャチャ」「オーマイビーナス」などで人気のシン・ミナ。「7番房の奇跡」「ハナ 奇跡の46日間」などで知られるユ・ヨンアによる脚本で、「僕の特別な兄弟」のユク・サンヒョ監督がメガホンをとった。劇中に登場する家庭料理の数々も見どころ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
インドで被差別カーストの女性たちが立ちあげた新聞社「カバル・ラハリヤ」を追ったドキュメンタリー。 インド北部のウッタル・プラデーシュ州で、カースト外の「不可触民」として差別を受けるダリトの女性たちによって設立された新聞社カバル・ラハリヤ(「ニュースの波」の意)は、紙媒体からSNSやYouTubeでの発信を中心とするデジタルメディアとして新たな挑戦を開始する。ペンをスマートフォンに持ちかえた女性記者たちは、貧困や階層、ジェンダーという多重の差別や偏見にさらされ、夫や家族からの抵抗に遭いながらも、粘り強く取材して独自のニュースを伝え続ける。彼女たちが起こした波は、やがて大きなうねりとなって広がっていく。 2022年・第94回アカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたほか、2021年サンダンス映画祭ワールドシネマドキュメンタリー部門で審査員特別賞&観客賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門で市民賞を受賞するなど高く評価された(山形国際ドキュメンタリー映画祭上映時のタイトルは「燃え上がる記者たち」)。