トトロやネコバスに息吹を注いだ“彩色”に迫る ジブリ美術館の新企画展示
2018年11月25日 12:00
[映画.com ニュース] 東京・三鷹の森ジブリ美術館で新企画展示「映画を塗る仕事」が開催中だ。
1年半ぶりの新企画となる本展示会は、スタジオジブリ作品の「彩色」を通して、故高畑勲監督と宮崎駿監督の作品作りに迫る。「登場人物とその日常を丁寧に描き、実写とは違ったリアリティをもたせることで、観客の心に訴えることができる作品」を目指した両監督。196枚のセル画を用いて、色彩設計として両監督を支えた故保田道世さんらスタッフ陣の知恵と工夫を紹介しながら、“色で何を表現したのか”をひも解いていく。
安西香月館長は、本展開催のきっかけを「2年半前にこちらの建物を大規模修繕した際に、常設展示室に飾っているセル画を張り替えようと思い、ジブリに『セル画を見せてください』と言ったところ、手の込んだものがたくさんでてきました。手の込んだセル画が、ものすごい枚数でたまっていたので、宮崎監督に『これって1枚ずつ(スタッフに)描かせていたんですか』と聞いたら、『そうだよ』と言われて。それがきっかけでした」と説明。「現在、セル画は使われておりません。『もののけ姫』が最後です。セル画を使っていた方々もお年を召していらっしゃいます。『セル画とはどういうのものだったのか』ということを見ていただけたら。今回、デジタルも少し紹介していますが、メインはセル画です」と本展に込めた思いを明かした。
展示ブースでは、「アニメーションにおいて“色”とはなにか」を37枚のパネルで紹介。大きく展開されている「となりのトトロ」ブースでは、ネコバスを描いた3つのセル画「ネコバス黄昏色」「ネコバス夕方色」「ネコバス街灯色」を通して「時刻によって変わる色」を解説しており、安西館長は「スタジオジブリ作品は時間の流れを細かく描写している作品が多い。それを表現するために、細かくシーンを分けてあります」と語った。
高畑監督と宮崎監督は水や光の表現にもこだわり、安西館長は「水中の描き方など表現の工夫をし続け、常にブラッシュアップさせてきました。両監督の要望によって、スタジオジブリ作品は“情景の豊かさ”を作ってきた」と胸を張る。展示ブースでは、「紅の豚」のポルコや、「もののけ姫」のアシタカとサンが水面から顔を出す場面のセル画などを用いて、水の表現を「いろいろな水」「水面を塗る」「水中を塗る」「水の映り込みを塗る」などに分類しながら解説。光の表現に迫るコーナーでは、「光を塗る」と題し、「天空の城ラピュタ」でシータとパズーの顔が飛行石で照らされる場面など、光の表現が際立っているセル画を多数展示している。
「映画を塗る仕事」は2019年11月まで開催予定。三鷹の森ジブリ美術館の入場は日時指定の予約制。
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