柳楽優弥主演「夜明け」の広瀬奈々子監督、アミール・ナデリも称賛
2018年11月22日 15:00
[映画.com ニュース] 柳楽優弥主演の映画「夜明け」が11月21日、有楽町朝日ホールほかにて開催中の映画祭「第19回東京フィルメックス」コンペティション作品として上映。上映終了後、広瀬奈々子監督が観客からの質問に答えた。
是枝裕和監督、西川美和監督の作品で監督助手を務めた広瀬の監督デビュー作となる本作。地方の町で木工所を営む哲郎(小林薫)は、河辺で倒れていた青年(柳楽優弥)を助け、木工所で働かせることにするが、やがて青年の過去が明らかになる……という物語だ。本作の成り立ちを「わたしが大学を卒業した年に、震災があったんですけども、就職先が決まっていなくて結構悶々としていた時期がありまして。社会との関わり方に悩んでいたということをベースにしたということと、当時、社会的に絆とか社会愛とかがうたわれていたので、そこに懐疑的な目線を加えたいなと思い。絆とか関係性に対して、美しい部分と闇の部分を見つめて描こうとしたらこうなりました」と説明する。
広瀬監督は、是枝、西川両監督が立ち上げた制作者集団「分福」に所属。師匠・是枝監督に数々の企画をぶつけたという広瀬監督は、「10数本ほどプロットで書いては見せたりしたんですが、なかなか企画は通らなかった。でもこの『夜明け』でなんとかという感じでした」と述懐するが、今回の監督デビュー作について、「是枝さんとの関係性もあり、本当に恵まれた環境だと思う。ラッキーでした」と付け加えた。
ある秘密を抱え、苦悩しながら日々を過ごす主人公・シンイチに柳楽。そして、シンイチと心を通わせる木工所の社長に小林。その他、YOUNG DAIS、鈴木常吉、堀内敬子ら実力派俳優が張り詰めた物語をしっかりと支えている。キャスティングに関して「先に小林さんにオファーをしました」と語る広瀬監督は、「正直言うと、主人公はものすごく受け身な人間。なかなか動き出さなくて、自分でも脚本が書き進められずに困っていたんですが、その時にプロデューサーから柳楽さんの名前があがって。彼の顔を思い浮かべたら筆が進んだ。宛て書きというわけではないですが、柳楽さんが持っている生きる欲求が筆を動かしたかなと。柳楽さんは師匠が見出した人なので、そういった因縁がうまく作用するかもしれないと思いました」と振り返った。
映画を観賞したばかりの観客からは称賛のコメントが続々と寄せられた。そして客席には「駆ける少年」「CUT」などで知られるイランの鬼才アミール・ナデリ監督の姿もあり、「素晴らしい映画でした!エンディングも素晴らしかったし、役者の演技も素晴らしかった。見せすぎない、ミニマムで留める演出も素晴らしかった。これからが楽しみな監督が出てきた。あなたのような人材が映画業界には必要。今後を期待してます」と興奮気味にメッセージを送った。
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