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韓国の民主化闘争描く「1987、ある闘いの真実」チャン・ジュナン監督に聞く

2018年9月11日 06:00

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1987年の韓国民主化闘争の実話を映画化したチャン・ジュナン監督
1987年の韓国民主化闘争の実話を映画化したチャン・ジュナン監督

[映画.com ニュース]1987年の韓国民主化闘争の実話を描いた「1987、ある闘いの真実」が公開された。行き過ぎた取調べによって命を落とした大学生の悲劇から、韓国全土を巻き込む民主化闘争へと展開していく様を、徹底的なリサーチにより、リアルに描き出した社会派ドラマ。チャン・ジュナン監督に話を聞いた。

--1987年、監督は高校生でした。その当時の記憶や民主化闘争に対してどのようなイメージを抱いていましたか?

「私は当時、全州に住む平凡な高校3年生でした。自分の住む地域でもデモは多く行われていて、登下校の際にデモをする姿を良く目撃していました。また授業中に催涙弾の匂いのために窓を閉めきって授業していたことも覚えています。忘れられないエピソードがあります。ある日、友人に“学校の近所にあるカトリックの聖堂で不思議なビデオを見せてくれるらしいから一緒に行こう”と誘われました。好奇心旺盛だった私は友人と一緒にそれを見に行きました。その時に見たのが、「タクシー運転手~」に登場するドイツ人記者、ユルゲン・ヒンツペーターが撮影した光州事件の映像でした。劇中、カン・ドンウォンに誘われてヨニたちが見た映像です。それを見た時、とても恐ろしかった。韓国でこのようなことが起きたということが信じられませんでした。そして、その事実を大人達が誰一人として語ろうとしないことが私にとってはもっと衝撃でした」

「また高校時代のある日、道徳の時間に日頃はやらない討論を行いました。デモが悪いことだという方向に導く内容の討論でした。私は恥ずかしがり屋の学生でしたが、“大学生がデモをするのには理由があるのではないか”と質問しました。すると先生が私を睨みつけたんです。あの目は、今でも忘れられません。この時に「1987」の芽が芽生えていたのかもしれません」

--この映画を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

「1980年の光州事件については映画、小説、論文などで取り上げられています。しかし、1980年の悲しみと怒りが凝縮され爆発して起きた1987年については語られていません。私はそのことにすごくもどかしさを感じていました。独裁政権から大統領直接選挙を勝ち取った歴史的にも重要な時期について、何故、誰も語らないのかと思いました。
また、自分も子供を育てる親となり、次の世代にどのような世の中を残すべきか、何を語るべきかについて考えるようになりました。1987年を振り返り歴史の鏡とすることができるのなら、次世代への大きなプレゼントになると思ったのです」

--本作には韓国を代表する俳優たちが多く出演しています。キャスティングについてお聞かせください。

「カン・ドンウォンさんとは、前作での共演以降、時折会ってお酒を飲む間柄です。この作品の話をしたら、シナリオができたら見せて欲しいと言われました。「格好良い男子学生」という役柄を注視しながら読んで欲しいと伝えながら、出来上がったキャスティング稿を渡しました。小さな役なので引き受けてくれるとは思わなかったですが、「必ず作るべき重要な映画だ。迷惑でなければ出演させて欲しい」と言ってくれました。お陰で、苦しい時期でしたが力強くスタートを切ることができました。ありがたい俳優・後輩です」

「キム・ユンソクさんは以前ご一緒した「ファイ~」でも悪役だったので、また悪役かと冗談ぽく不満を述べていました。ですが、このキャラクターの重要性について共感してくださり、引き受けてくれました。実際に生きている実在の人物を作るためにはどうすべきか、とても悩みました。平坦な2Dの人物でなく、3Dの立体的な人物を作るよう努力しました。外見も似せるため、キム・ユンソクさんは顎下にマウスピースを入れたり、体を大きく見せるためにパッドも入れたりしました。脱北者から平安道地方の方言も習いました。この2人は、初期の段階でキャスティングが決まりました」

「キム・テリさんは、「お嬢さん」という映画を観た時、新人なのに演技が上手で驚きました。ヨニはテリさんのような姿、性格ではないかと思ったんです。実際に会ってみたら、ヨニにピッタリだと思いました。複雑で難しい演技を上手く演じてくれました。キャスティング稿が出来上がった頃に崔順実ゲートが明るみになりました。しかし、この政権が今後も続くか否かがまだ不透明な時期。それにも関わらず、多くの俳優さんが勇気を出して映画に参加してくれて本当に感謝しています」

--日本の観客へ向けてメッセージをお願いいたします。

「この映画は1987年に韓国で実際に起きた政治的な物語を描いていますが人間ならば誰しも感じられる「我々が社会的な共同体となり生きて行く美しさ」について語っている映画です。歴史や文化は違うかもしれませんが、日本の観客の皆さんにも1987年に韓国で起きたこの奇跡のような物語が心の奥深くに届いたら嬉しいです」

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