塚本晋也監督「斬、」にベネチアが喝采!池松壮亮&蒼井優も手ごたえ
2018年9月8日 13:30
[映画.com ニュース] イタリアで開催中の第75回ベネチア映画祭で9月7日(現地時間)、日本からコンペティション部門に参加した塚本晋也監督の「斬、」が披露され、スタンディングオベーションの喝采を浴びた。塚本監督が本映画祭に参加するのは今回が8度目、コンペティション部門は「鉄男 THE BULLET MAN」「野火」に続き3度目となった。
ベネチアにおける塚本人気は定着しており、公式上映に先立つプレス上映の際も、冒頭にタイトルがスクリーンに映し出されるや歓声と拍手が沸き起こり、上映後も大きな拍手が沸き起こった。世界中からシビアなプロの批評家たちが集まるプレス上映でこうした反応が起こるのは極めてまれだ。
レッドカーペットには塚本監督を囲んで、キャストの池松壮亮、蒼井優、前田隆成が並んだ。公式上映後、一同は日本の報道陣の取材に応じ、それぞれの感慨を語った。上映の手応えを聞かれた塚本監督は、「お客さまの反応というのはいつも予想がつかないのですが、今回はもっとも想像できないものでした。でもみなさん真剣な表情で拍手してくださって、自分がこの映画に入れた、いま現在の(世の中の)不安ですとか、いろいろなものが伝わったのかなと思いました。逆にプレス試写のノリのいい反応の方が逆に不可解でしたけれど(笑)、嬉しかったです」と語った。
池松は「自分が実際に自信を持てる作品で、こうしてベネチアに連れてきて頂き、みなさんに見て頂けて、ただただ光栄でした。映画を崇高なものとして扱っている場という印象を感じました」と発言。一方、大友克洋監督の「蟲師」に続き今回が2度目のベネチア参加となった蒼井は、「前回は弾丸の滞在による時差ぼけで断片的な記憶しかなかったのですが、今回はちゃんと覚えていられる一夜となりました。映画祭に慣れているお客様だと映画に厳しいので、帰らないで欲しいなあと思いながらお客様の後頭部を見たりして(笑)、その緊張感が映画祭に来ている実感としてありました」と語った。海外の映画祭に初参加となった前田は興奮した面持ちで、「レッドカーペットで転ばないかとか、浮かれすぎてはだめだと考えていましたが、初めてのことをたくさん経験させて頂きました。とても幸せ者でした。サインも飛行機の中で練習しました」と明かした。
さらに塚本監督は、「自分の映画はとても小さい映画で大変な現場なので、そこに果敢にも飛び込んでくれた俳優さんたちへの感謝の気持ちをこういう場で返せたらなあという思いがありました。とくに自分が初めて映画祭に来たときに、ベニスからリド島にボートで入るときに感じた『天国気分』を味わってもらえたら、という気持ちがあったので、それが果たせてほっとした感じです」と、喜びを露わにした。
「斬、」は江戸時代末期、人を斬ることに躊躇する浪人と、彼を取り囲む人々を描いた物語。塚本監督初の時代劇であり、クラシックな型から離れたこの監督らしいパワフルな意欲作である。まさに塚本時代劇としか言いようのない本作の、ワールドプレミアの手応えをしっかりと印象付けた。(佐藤久理子)
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