瀬々敬久監督、作品の源は事象への「嫌な感じ」 寛一郎は芝居初挑戦の苦闘明かす
2018年6月30日 19:30

[映画.com ニュース] 最新作「菊とギロチン」の公開が控える瀬々敬久監督と出演した寛一郎が6月30日、東京・早稲田大学で行われた講義「マスターズ・オブ・シネマ」にゲストとして登壇した。
多彩な映像制作者たちを招き、映画の見方、映画のつくり方を学ぶ「マスターズ・オブ・シネマ」(講師:谷昌親氏)。本講義の前には、瀬々監督の「ヘヴンズ ストーリー」(前編)が参考作品として上映された。京都大学在籍時の“自主管理”の精神、ピンク映画助監督時代の経験が「自身の人間形成に大きく影響した」という瀬々監督。「青春の殺人者」「TATTOO<刺青>あり」を鑑賞した際に「映画は、実話と殺人との親和力が強い」という認識が芽生えたことで、実際に起きた出来事をモチーフとした作品を数多く手がけるようになったようだ。
「黒い下着の女 雷魚」「HYSTERIC」を例に挙げて「(2作は)ロマンチシズムに犯罪者をとらえている。悪漢たちが“普通の社会”をうつという感覚に近い」と説明すると、「ヘヴンズ ストーリー」は「社会と個人のなかで、犯罪や事件を考えようとしていた。『2000年代は“復讐の時代”を生きている』という感覚から始まった作品」と告白。さらに、学生から「どのような問題に触れた時に、作品に投影したいと考えるのか?」と質問が飛ぶと「“嫌な感じ”がすること。言語化できないけど、生きているとそう感じることがあるはず。『なぜ、今自分は嫌な感じなのだろう』という疑問を突き詰めていった結果、その事象を映画にしようと考えますね。基本は全て“嫌な感じ”からスタートしています」と答えていた。
瀬々監督が構想30年をかけて完成させた「菊とギロチン」は、女相撲の一座「玉岩興行」とアナキスト・グループ「ギロチン社」の青年たちが「差別のない世界で自由に生きたい」という純粋な願いによって、性別や年齢を越え、強く結びついていくさまを描き出した作品。本作が芝居初挑戦の場となった寛一郎は「瀬々さんの演出は『感情を出してほしい』というだけだったんですが、その頃の僕は右脳が発達していなくて(笑)。どうやって自分の感情を出したらいいのかわからない状態だった」と述懐。クランクアップ時には、体重が7kgも落ちていたほどの苦闘の日々――瀬々監督が「プロレスに近い」と表現する日々を過ごした寛一郎は「あれがなかったら、今映画に出させてもらっていないはず。ありがたいです」と改めて謝意を示していた。
「ギロチン社」の主要メンバー・古田大二郎役に寛一郎を抜てきした瀬々監督は「オーディション時は、当然下手なわけです。今でも覚えていますが、床に寝転がって芝居をしてもらった時、寛一郎君はTシャツから出る腹をずっと気にしていた(笑)。普通の役者はそういうことは一切しない。まだ腹が見えるのは恥ずかしい状態だったんですよ」と暴露。だが「やはりオーラと存在感はあった」と感じ、起用を決断したようだ。そして、役作りに関する質問が飛ぶと「この作品に関しては、何も格好つけられない。役作りというもの自体がわからなくて、ひたすら台本を読み込んでました」と寛一郎。一方で、共演者の東出昌大からは「もらえるものがたくさんあった」と話し「自分ひとりではなく、他の人たちと一緒に役を作っていけたなと思っています」と語っていた。
「菊とギロチン」は、7月7日から東京・テアトル新宿ほか全国で順次公開。
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