こんなひとりぼっちは絶対に嫌! 映画の「ALONE」なシチュエーション
2018年6月17日 10:30
[映画.com ニュース]砂漠の地雷原に迷い込んだ兵士が自然の脅威と過去のトラウマに襲われる姿を描いたシチュエーションスリラー「ALONE アローン」には、思わず「こんな状況、自分だったら耐えられない」と涙目になるシーンがたっぷり。映画で描かれてきた“●●な場所でひとりぼっち”――もしも登場人物があなただったら、最後まで耐え抜くことはできるだろうか?
全編のほとんどが車中の映像で構成されたトム・ハーディ主演作。妻と2人の子どもにも恵まれ、仕事でも建築現場監督として評価されていた主人公アイヴァン・ロックは、大規模なプロジェクトの着工を翌日に控えた夜、高速道路に乗り、ある目的地へ向かう。彼を待つのは、産気づいた不倫相手だった。自業自得といえば話は簡単だが、ロックが悩まされるのは、互いの表情が見えず、無論触れることも不可能な電話によるディスコミュニケーションだ。
プロジェクトの後処理を依頼した部下は過度のプレッシャーに圧し潰されてしまい、指示通りの働きを見せてはくれない。どうにかなだめすかそうとするも「こんな重大なこと、俺に頼むな!」と言わんばかりに逆上だ。不倫相手は精神虚弱状態で何度も何度もフォローを余儀なくされ、妻に“一夜の過ち”を正直に打ち明ければ「もう帰ってくるな」と突き放される。事態を知らない子どもたちとの取り繕ったやり取りに心を引き裂かれて、涙がぽろり。そして追い打ちをかけるような解雇通告。その場に居ないということが、悔やまれる展開ばかりが連続する。高速道路は1度乗ってしまえば、簡単には引き返せない――進めば進むほど、人生の全てを失っていくさまは、生き地獄だ。
スマトラ海峡3150キロで遭難した1人の男の姿を通して、生きることの意味を問う人間ドラマ。人生の晩年を迎えた男が自家用ヨットでインド洋を航海中、浮遊物に衝突するという不運に見舞われたことで遭難する。スクリーンに映るのは、名優ロバート・レッドフォード“ただ1人”という異色の構成。会話をする相手もいないため、セリフはほぼ排されている。「海は広いな、大きいな」と悠長なことを言っていられないトラブルが続くため、並みの精神力では生存を諦めたくなるはず。
最初の悲劇は、浮遊物との衝突によってヨットにぽっかりと大穴が開いてしまったこと。運悪く海水が無線機を直撃し、外部との交信が不可能になってしまう。めげずに穴を修復しても、嵐に遭遇してヨットが転覆。命からがら救命ボートで脱出するも、持ち出した飲料水に海水が混入して飲めない状態に。食料を得るべく釣りに挑めば、サメに魚を横取りされ、近くを通り過ぎた船に発煙筒で助けを求めても、全く気づいてもらえない。かすかに残った希望を砕くのは、「もうやめてください…」と懇願したくなるような2度目の嵐!
日本では「未体験ゾーンの映画たち 2016」で披露された心霊ホラー。ざらついた映像の質感、分割画面など、ルックへのこだわりを存分に感じるが、とりわけユニークなのは「成仏できない女性が霊媒師の力を借りて、自らの死の真相を解き明かす」という設定だ。劇中では霊媒師シルビアは姿を見せず、主人公の霊・エミリー(アンナ・イシダ)を声だけでサポート。エミリーにとって家の中での生活はごく当たり前のことだが、その日常は極めて異質だ。
ベッドで目覚めたエミリーは、朝食をこしらえ、掃除をし、何やら不穏な物音に耳をそばだてながらも、買い物へ向かう――これらのシーンが延々と繰り返されるのだが、実はこの光景に理由がある。シルビアいわく、ある“因果”をひも解かなければ、エミリーは成仏することなく、孤独な毎日をリピートし続けるとのこと。さらに適切なルートを辿らなければ、「わたしはゴースト」というエミリーの気づきは抹消され、再び無限ループへと陥ってしまう。エミリーは、どうにかミッションをクリアしていくのだが、最終的に明かされる衝撃の事実は、「知らなければよかった」と後悔するほどショッキングなので要注意。
アーミー・ハマーが主演と製作総指揮を兼任した同作は、テロリスト暗殺のミッションに失敗したアメリカ兵マイクが主人公。緊急避難先となる村へと歩みを進めるなか、3000万以上もの地雷が埋まる土地に足を踏み入れてしまう。行動をともにしていた仲間は目の前で爆死、自身も地雷を踏んでしまったマイクは、援軍が到着するまでの52時間、1ミリたりとも動くことができない状況に追いやられる。ひとりぼっち系映画として有名な「127時間」「オデッセイ」は「自ら行動を起こさないと死ぬ」という点を意識した作品だったが、こちらは「動いたら死ぬ」。ただひたすらに待つという“静”の行為が、これほど過酷なものになるとは…。
52時間という永遠にも思える時間、マイクには多くの“壁”が立ちはだかる。容赦なく照りつける灼熱の太陽、夜は一転して身震いするような寒さが襲う。砂漠地帯特有の砂嵐に吹き飛ばされそうになるだけでなく、群れをなした猛獣のターゲットにされ、疲労は徐々に蓄積していく。悲鳴を上げた肉体が要求するのは、死に直結する睡眠、残りわずかとなった水と食料。不眠不休で助けを待つマイクは、幻覚に苛まれるようになり、「さらに17時間待ってくれ」という無情の通告を受けて、限界寸前。それでも助けを待つか、楽になるために“1歩”を踏み出してしまうか――まさに絶望という言葉が相応しい状況だ。
「ALONE アローン」は、全国で公開中。
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