第18回東京フィルメックス最優秀作品はコンペ初出品のインドネシア映画2作に!
2017年11月25日 23:50
[映画.com ニュース] 第18回東京フィルメックスの授賞式が11月25日、東京・有楽町朝日ホールで行われ、インドネシアのモーリー・スリヤ監督がメガホンをとった「殺人者マルリナ」、同国出身のカミラ・アンディニ監督作「見えるもの、見えざるもの」が最優秀作品賞に輝いた。コンペティション部門初出品となったインドネシア映画が、いきなり戴冠するという異例の事態。また、特例として審査員特別賞を排し、2作が最優秀作品賞に選ばれるのは、同映画祭史上初のことだ。
「殺人者マルリナ」は、インドネシアを代表する映画監督ガリン・ヌグロホの原案を基にして構築されたもの。第70回カンヌ映画祭監督週間でも上映され、西部劇を彷彿させる風景が見どころのひとつとなっている。タレンツ・トーキョーの修了生でもあるスリヤ監督は「7年前に参加した映画祭で、まさか受賞することになるとは思いもしませんでした」と感動しきり。さらに「カミラとともにこの場に立てることが光栄です。また、コンペティション部門に初めて出品されたインドネシア映画が、2本も受賞できたことを誇りに思っています」と喜びをかみしめていた。
「見えるもの、見えざるもの」は、バリ島の伝説をモチーフにしてつくり上げた幻想譚。ヌグロホ監督の娘としても知られるアンディニ監督は「信じられない気持ちでいっぱいです」とニッコリ。「(スリヤ監督とは)映画をつくるアプローチは全く異なっていました」と説明すると「だからこそ、この場でインドネシア映画の多様性を表現できたのではないかと感じています。今回の受賞でさらなる後押しを得ました。どんどん良い作品をつくっていきます」と思いの丈を述べていた。
審査委員長・原一男監督は、2作の受賞理由を“詩的なトーン”で明かした。「殺人者マルリナ」については「女性自らが、新しい女性像を作ること、肉体的にも精神的にも、タフな、女性像。エンターテイメント型アクション映画に込められたメッセージ。闘うヒロイン像を作り出した、イキのいい痛快な傑作の誕生です」、「見えるもの、見えざるもの」は「伝統と現代、現実とファンタジー、光りと影、昼と夜、過去の記憶と一瞬の現在、それらの混在こそが地上のパラダイス。新しくて懐かしさに満ちた傑作です」と激賞し、そのほかにノミネートされた作品の感想も発表していた。
観客賞は、原監督の最新ドキュメンタリー「ニッポン国VS泉南石綿村」に贈られた。開口一番「驚いていらっしゃる? 私、審査員です」と話して笑いを誘うと、「山形国際ドキュメンタリー映画祭2017」に続く2度目の観客賞に喜びを爆発させた。「自分がつくっておきながら『この映画は面白いのかしら?』という思いがありました。(今回の受賞で)自信を持っていいんだなと。心底嬉しくて」と語ると、12年間も撮影を続けている水俣病を題材にした作品を「1年後に完成させて、この場所で上映できるように頑張ります」と誓っていた。
学生審査委員賞は、ダミアン・マニベル&五十嵐耕平が共同監督を務めた日仏合作の「泳ぎすぎた夜」。学生審査委員の鈴木ゆり子氏の評を受けた五十嵐監督は「この映画は出合うことについての作品だと思っています。観客の皆さんには、この映画と出合うことで、関係性を育んでいってもらえたら嬉しいです」と語っていた。
締めの挨拶では、原監督は「作家を育てるのが映画祭。でも、あえて言うならば、観客も作家を育てます」と発言し、観客の“映画を読み解く能力の低下”に危機感を抱いていることを告白した。「それは国民の生きる力、センス、価値観の劣化を意味します。自分はどう生きるのかということを、映画と向き合いながら探ってほしい」とメッセージを投げかけていた。
▼タレンツ・トーキョーアワード:「I wish I could HIBERNATE」
▼スペシャル・メンション:「Doi Boy」
第18回東京フィルメックスは、11月26日まで開催される。
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