ミューズ安藤サクラがドッキリ発言? 「シナリオを食べて、ウンコを出す」
2017年10月29日 20:48
[映画.com ニュース]第30回東京国際映画祭の「Japan Now 銀幕のミューズたち」部門で、「かぞくのくに」が10月29日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、ヤン・ヨンヒ監督、主演の安藤サクラがQ&Aに登場した。
同作は父が楽園と信じた北朝鮮から25年ぶりに帰ってきた兄ソンホ(井浦新)とヒロイン、リエ(安藤)の再会と別れを描いた人間ドラマ。ヤン監督の実体験を基になっている。2011年夏、約2週間、ほぼ順撮りで撮影した。
劇映画初挑戦だったヤン監督は「ドキュメンタリー2本撮った後のド初心者で、シナリオも初めてだったので、スタッフ・キャストは信頼できる人に任せたいと思っていました。リエ役は安藤サクラさんのような人と思っていたら、本人が出てくれた。お金集めでは苦労したが、口を出す人もいない。第一希望の2人に断られる覚悟で手紙を書いたんです」と話した。
安藤は「何も知らないで、ヘラヘラと『やります』と言いました。一昨日、見直したのですが、初めて台本を手にした時の記憶がない。その後のことが濃すぎた。監視をされる覚悟をした方がいいのかな、とか、北朝鮮にみんなで行けるのかなと思ったりしました、馬鹿だね、私」と振り返った。
リエ役はヤン監督がモデル。安藤は「監督本人を演じるのは特別。あの時の感覚は説明するのが難しい。つらかったとしかいえない。自分は役を演じただけだけど、心の深いところに刺さった気がします。いつか癒えることがあるのか。女優をやるということは、そういうものが積み重なっていくんだろうなと思った」と話した。
ヤン監督自身も撮影中、気分が悪くなり、トイレで吐いたこともあった。「物語はデフォルメしていますが、ほとんど事実。私には3人の兄貴がいますが、全員をブレンドしたようなお兄ちゃん」。オフの時に当時、婚約中だった安藤が「婚約指輪ってどうすればいい?」と聞き、井浦が答えている姿を見て、自分と兄の分身のように感じて、幸せだったという。
監視員(ヤン・イクチュン)によって、兄が北朝鮮に連れ戻されるラストシーンは事実とは異なっている。「車を見送った時、ブーンといってしまった。悔しかった。車くらい蹴飛ばせば良かった。数時間、呆として悔し涙を流した。1回、現実通りに撮ったけど、違うなと思った。そんな時、ヤン・イクチュンが『自分ができなかったことを映画でやればいい』と言ってくれて、(安藤に)『私ができなかったことを何かやってください』と頼んだ。とても困ったと思います」とヤン監督。
安藤は「いざやったら、何か生まれるだろうと思ったけど、動けるのか。芝居じゃないプレッシャーを感じていました。車が走り出すなんて決まっていなかった。ヤン・イクチュンさんが『出せ』と言ったんです。だからカメラが追いついていない。タイヤが私のサンダルの先を走っていったけど、『これが映画だよ』と思った。動く車を止めている時の感触はいまだに残っている」と話した。
ヤン監督は芝居を止めることなく、「申し訳なかった」と言ったが、安藤は「止められたら、今まで撮影してきた2週間は何?ってと思った。撮影が終わってから、メイキング用にインタビューを撮ったが、声が一つも出なくて、涙しか出なかった。当時のマネジャーさんの胸の中で大泣きしたんです。フィクションなのに、ドキュメンタリーのようだった」と話した。
映画は数々の賞をもたらしたが、ヤン監督は「私のグッジョブは“しなかったこと”、人に任せながら『OKです』といったことです。動きではなく、気持ちを伝えたら、(安藤は)スポンジみたいに吸収して、出してくれた」。安藤は「『シナリオを食べて、ウンコを出している』と言っていましたね?」と監督の独特の表現を披露。2人のトークは予定時間を過ぎても、盛り上がりを見せ、安藤は「まだまだ話したいことがあったのに……」と名残惜しそうにしていた。
第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。