三浦透子&井之脇海“一秒一秒”向き合った「月子」公開に感慨深げ
2017年8月26日 21:30

[映画.com ニュース] 越川道夫監督の長編映画第3作「月子」が8月26日、東京・新宿K's cinemaで封切られ、越川監督のほか、ダブル主演の三浦透子と井之脇海が初日舞台挨拶に出席。「約1年前に撮ったんですが、その時はまだ公開できるかもわからない状態」と明かした三浦が「公開を迎えられることが、こんなにも幸せなことなんだと実感しています」と思いの丈を述べると、井之脇は「公開してもレイトショーだと思っていましたが、まさかの1日3回上映。初日にこんなに多くの方が来ていただけたことが嬉しいです」と喜びを噛み締めていた。
本作は、「永い言い訳」「誰も知らない」「海よりもまだ深く」の撮影を務めた名カメラマン・山崎裕と越川監督がタッグを組んだロードムービー。父を亡くし、生き場所を失った青年・タイチ(井之脇)と、施設から逃げ出してきた知的障がいを持つ少女・月子(三浦)の旅路を描く。自閉症に関して学ぶことから役づくりをスタートさせた三浦は「調べれば調べるほどわからなくなって。今回は原作やモデルの方もいなかったので、毎日毎日あっているのかなって考えながらやっていたんです」と告白。そして「わかった気になってしまうことが一番危険だと思って演じていました。だからこそ、月ちゃんのことを“一秒一秒”必死に考え、撮影の5日間を全うしました」と振り返っていた。
越川監督が手がけた「海辺の生と死」にも出演している井之脇は「『海辺の生と死』は、満島ひかりさんの影響も含め、色々なことを“体感”した現場」と話し、ほぼ順撮りだった『月子』と共通して「相手に対して、嘘がないように反応すること」を大切にしたという。「(『月子』では)嘘をついたら必ずバレる。『演技なのか、素なのか、素はやっぱり演技なのか』と混乱することもありましたが、その感覚が気持ちよくて。体の在り方、芝居の仕方に関して、多くのことを学べました」と充実の撮影を述懐していた。
「スタッフは基本5人。車1台で移動するような撮影」と小規模の編成を組んでいた越川監督は「少人数で映画をつくるのはやっぱり楽しい」としみじみ。「『海辺の生と死』からなんですが、前日に台本に書き込んでいたものを、次の日に消すんです。引きずられたくないので。終わった時にはまったく何も書かれていない台本が1冊残る」とこだわりを明かすと「どこかでペシミスティックな思いがあったんですが、作品は肯定的なものに変化していった。それはこの2人が変えたんです」と三浦と井之脇の熱演を称賛した。
「ト書き2行に対して、どういう解釈をするか」という話し合いが何度もあったという三浦は「どこの現場でもできることではない。幸せだな」と感じたようだ。カメラマン・山崎もその話し合いにじっくりと付き合っていたようで「渋谷では4、50分ほど回してくれていた」と語ると、スクランブル交差点でのシーンを引き合いに出した越川監督は「山崎さんは、カメラの前に人を通すのが上手い」と補足。「映画の撮影は基本的には人の邪魔になるものですし、普通は怖いから寄りの絵になるはず」と一流のテクニックに舌を巻いていた。
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