立川談春、独演会で大野智主演「忍びの国」を解説「時代劇は進化している」
2017年6月17日 06:00
[映画.com ニュース] 落語家の立川談春が6月16日、東京・新宿文化センターで独演会を行い、出演した「嵐」大野智主演映画「忍びの国」を解説した。会場には落語ファンのみならず、大野ファンとおぼしき女性客も多く見受けられ、約1800人収容の客席を埋め尽くしていた。
「のぼうの城」「村上海賊の娘」で知られる和田竜氏の小説を、中村義洋監督のメガホンで映画化。織田信長の次男・織田信雄が独断で伊賀に侵攻し、敗走した天正七(1579)年の「第一次天正伊賀の乱」を題材に、怠け者だが最強の忍者と称される無門(大野)の活躍を描いた。
出囃子とともに幕が上がり、“最もチケットが取れない落語家”と称される談春がハンドマイクを持って登場すると、客席は喝さい。映画撮影中のオフショットや、キャラクターの相関図をスクリーンに投影し、裏話や小話を交えながら約1時間にわたって物語と見どころを解説していった。撮影のエピソードとして、大野、鈴木亮平、満島真之介と待機していた際を「(5代目三遊亭円楽の)奇人変人列伝を話したら、鈴木さんが(大笑いして)パイプ椅子から落ちていた」などと軽快に振り返り、観客は沸きっぱなしだ。
一方で、異色ともいえるアクションシーンの数々には、「素晴らしいです」と脱帽の様子。「何がこんなに素晴らしいかというと、“今の時代の時代劇”にあわせた“リアル”が、この作品にはあると思った。初めて『七人の侍』『羅生門』など黒澤映画を見た時に、当時の皆が諸手を挙げて称賛したんだろうか。『何だこれ』と思った人は、必ずいると思う。そうか、リアルは時代によって変わる、時代劇は進化しているんだと感じた」と、今作から衝撃を受けたことを明かした。
15分間の休憩を挟んで始まった第2部では、「『忍びの国』のテーマに沿っているから」と、紺屋の職人と花魁の愛が主題の古典落語「紺屋高尾」を披露。終了するや万雷の拍手が鳴り響き、談春は「望外な拍手を頂き……。その代わり、公開の7月1日から、何回か(今作を)見るように」と呼びかけた。最後は「今年の夏は海賊ではなく、忍びでお願いします!」との発声とともに、ヒットを祈念した三本締めで独演会は幕を閉じた。
独演会で映画の解説をするという斬新な試みだが、談春は「大野くんファンが『忍びの国』について知りたいのが伝わってきてね。落語家がこういうことをやることは、落語ファンにとっても、大野くんファンにとってもマイナスではない」と企画の意図を語る。観客の反応については「大野くんファンは、落語ファンのおじさんたちがお金を払っていることに初めて遭遇するわけですよ。おじさんたちも、妙齢の女性と距離をはかっている(笑)。それが終わった後に皆幸せな顔をしていたりして、それを見ると悪くない、面白いと思う」といい、「やっぱりジャニーズファンはライブ慣れしているよね。盛り上がり上手だし、すごく良いお客さんですよ」とご満悦だった。
「忍びの国」は、7月1日から全国公開。なお談春の独演会“映画「忍びの国」噺+らくご”は、今後、広島、福岡、大阪、愛知でも実施される。