ヘンテコ家族の成長記「はじまりへの旅」マット・ロス監督が語る“家族の在り方”
2017年3月31日 15:00

[映画.com ニュース] 俳優としても活躍するマット・ロス監督が映画.comのインタビューに応じ、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのアラゴルン役で知られるビゴ・モーテンセンを主演に迎えた「はじまりへの旅」について語った。
ロス監督が、第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門で監督賞に輝き、モーテンセンが第89回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートを果たしたロードムービー。アメリカ北西部の森で自給自足生活を送るベン・キャッシュ(モーテンセン)と6人の子どもたち。ベンの厳格な教育により、子どもたちは6カ国語を操る頭脳とアスリート並みの体力を備えていたが、コーラもホットドッグも知らない世間知らずな人間に育っていた。ある日、入院中の母が死去したと聞きつけたキャッシュ家は、葬儀に参加するために森を飛び出し、2400キロ離れたニューメキシコへと旅立つ。
本作でまず目を引くのは、世間から隔絶された家族が外界を知るという独創的なアイデアだ。ロス監督は「もともと自分が父親であるというところから始まったんだ。自分の生活に思いをはせたときに、子どもたちがどんどん成長していって、あと10年経ったら娘は大学に行ってしまって家からいなくなるんだ、と気がついて『うわー! 時間があっという間に過ぎてしまう』と思った。これはどんな親も一緒だと思うんだが、僕は家を空けていることも多く、自分の仕事と家庭のせめぎ合いにすごく悩んでしまったんだ。すべての時間を子どもたちにささげることができたら、と考えたところから(今回の作品作りが)始まったのさ。ある意味、ここでは自分がなりたい父親をファンタジーで描いているんだよ」と私的な思いから派生した作品だと明かす。
ロス監督の話しぶりからは家族愛が存分に伝わってくるが、監督にとって“家族”とはどういう存在なのか? ロス監督は「難しい質問だね……」としばらく考えたのち「家族というのは妥協するものであり、協力するものであり、愛し合う人々が力を合わせるということを決める、そういう存在なんじゃないかな」と示唆に富んだ見解を述べた。本作では、ベンと義父が子どもの教育方針をめぐって対立するシーンも描かれるが「僕はこの家族がやっていることってそこまでクレイジーだとは思わないんだよ。他の子どもたちと接さない分、社会性が問題になることもあるけれども、それ以外はこの生活で彼らは素晴らしい恩恵を受けていると思う。父親の教育方針がちょっと厳しいかな、と思うこともあるが、この映画はその父親(ベン)自身も変わっていく物語なんだよね。自分はすべて正しいと思っていたわけではないんだ。彼は経験を通して進化して成長していく。そこが、この作品を見た人が得るものがあるところなんじゃないかと思うんだ。大人も学びながら誠実に生きていきたいからね」と本作がベンの成長物語でもあると強調する。
あふれんばかりの愛情を抱えながらも、子どもたちと素直に語り合えない不器用な父親像を体現したモーテンセンについては「ショーン・ペン監督の『インディアン・ランナー』を初めて見たときから、彼のことを敬愛してきた。本当に素晴らしい演技だったよ。怖くもあり悲しくもあり壊れたところもありカリスマ性もあって、複雑な演技が印象的だった」と手放しで称賛。オファーした理由を「面識はなかったんだが、アーティストとして絵も描くし、写真も撮るし、詩人でもある。そういう意味で、複雑な人物だからこそ一緒に仕事をしたいと思ったし、きっとこの役を演じる時にも、深く掘り下げてくれると思った」と語った。
俳優として「アメリカン・サイコ」「アビエイター」にも出演しているロス監督は、監督業においても独自の信条を持ち「映画で記憶に残るのは、やはり演技の瞬間じゃないかなと思うんだ。カメラの動きがいいなとか音楽がいいなとか思うときというのは、映画から1歩離れているのかも。映画館に足を運ぶときというのは、誰かの体験とつながりたいと思うものだから、俳優が居心地の良い環境を作ってあげるのが監督の1番の仕事なんじゃないかと思っているんだ」と締めくくった。
「はじまりへの旅」は、4月1日から全国公開。
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