神木隆之介&有村架純、憎しみではなく信頼を 「3月のライオン」で確かめた絆
2017年3月19日 13:00
[映画.com ニュース] 神木隆之介と有村架純の間に、言葉は要らない。「3月のライオン 前編」「3月のライオン 後編」では、嵐のような思いが荒れ狂う義理の姉弟に扮したが、有村が「特別、話し合って撮影していないんです。感覚です」とほほ笑めば、神木も「なぜかというと信頼しているからです」と言い切る。感情に火を点け生み出したシーンの数々は、見る者の胸をざわめかせる確かな“魔力”があった。(取材・文/編集部、写真/江藤海彦)
2人の役づくりは困難なものだったという。最大の理由は、原作漫画の特色である豊かで複雑な人物描写だ。原作者・羽海野チカ氏は、コミックス11巻のあとがきで「子供の日々から大人になる間に『境目』というものはありませんでした。何千何万という出来事を受け止めて、少しずつグラデーションがついていくだけなんだなぁ…と思っています」と述べている。そんな思いで創出された多面的・重層的な人物たちが、物語に魅力的な奥行きを持たせる。
神木「なので、とても悩んだんです。零の第一印象は物静かな男の子。ですが実際はそうではない。役づくりでは『大人しい人物』と一括りにしなかったんです。誰よりも負けん気が強く、年相応のやんちゃさもあります。そして職人気質で、小さいころから強く生きなければならなかった。監督とは『マットな感じが良い』と話していて、僕が零として感じたことを肉付けし、マットな質感から徐々に艶やかになり、最後は希望を持っていければいいなと撮影しました。序・中・終盤ではまったく違う顔つきになるよう、演じました」
今作で神木と有村は、およそ良好とは言いがたい、憎しみで繋ぎとめられた義理の姉弟を演じている。家族を交通事故で亡くした幼い零(神木)は、父の友人でプロ棋士の幸田柾近(豊川悦司)に引き取られる。幸田家には4歳年上の香子(有村)と同い年の歩がおり、プロ棋士を目指し柾近の指導を受けることが、すなわち愛の享受だった。しかし零が恐るべき練習量でメキメキと頭角を現すと、香子と歩は柾近から「零に勝てないなら奨励会をやめろ」と告げられる。香子は「父の愛情を奪われた」と思い込み、憎悪の対象となった零は幸田家から離れていく。
だが香子が零を遠ざけるかというと、そうではない。着かず離れずで零の内面を波立たせ続けるさまは、有村のダークサイドを見てしまったような錯覚に陥るほど。「姉弟にも、他人にもなりきれない」関係を続ける香子の心情を、有村はこう分析する。「香子はどうして、憎い零に歩み寄るんだろう。役づくりではそれを考えていました。香子は周囲に『助けて』と言えば、いくらでも助けてもらえるはずなんです。なのに自分から離れる選択をして、そのくせ1人になることがすごく怖い。だから零にちょっかいを出して、私はここに居るとアピールしているんです」
神木と有村の本格的な共演は、宮藤官九郎脚本のホームドラマ「11人もいる!」(2011)以来。「SPEC」シリーズでもクレジットに名を連ねているが、神木いわく「打ち上げですこし話したことくらいしか、接点はなかった」そうだ。
神木「『11人もいる!』は楽しい関係でした。なので、今作のような真剣さは初めてです」
有村「今回、最初は照れくさい感じがしたよね。『変なの』って思わなかった?」
神木「僕は、嬉しかったよ」
有村「私もまたお芝居が出来て嬉しかったけどさ。なんか、仲が良いぶん、ね」
声を弾ませながら、関係が近いからこそ感じる恥ずかしさを明かした有村。歪んだ愛情が暴発する激しいシーンの数々でも、神木は「『こんな感じがいいよね』というくらいで、感覚で演じました。信頼しているから、安心して、気を使わない。だからできたんです」と話す。言うは易いが、感覚の共有は特別なものにほかならない。2人の絆と信頼が、対峙する場面にエモーショナルな凄みを与えている。
また、互いの芝居に抱いた思いは?
神木「有村さんは素敵な人だなと。ほんわかしたイメージだったので意外でした、あの攻撃性の演技は。本当にいろいろな引き出しをもっている方なんだと、改めて思いました」
有村「嘘くさいよ(笑)! 神木くんは5年前に共演したときと、全然変わっていないです。本番の声がかかっても『はい、やります!』という感じが全くしないんです。スーッと入って、スーッといなくなる。すごくナチュラルだと改めて感じましたね」
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