仏の日本映画祭キノタヨ 「牡蠣工場」と「ハッピーアワー」が最高賞
2017年1月18日 20:45
[映画.com ニュース]仏パリで開催中の第11回日本映画祭キノタヨの授賞式が、現地時間の1月16日にあり、最高賞にあたるソレイユ・ドール(金の太陽)賞を想田和弘の「牡蠣工場」と、濱口竜介の「ハッピーアワー」が分け合った。
本映画祭の特徴は、最高賞が観客の投票で決められる点にある。つまり観客賞とも言えるわけだが、統計の結果によれば、両作とも20満点中18点を超える高得点を記録し、「牡蠣工場」はアンケートを出した全員が「好きだった」と回答。また「ハッピーアワー」は1人を除いた全員が「好きだった」と回答したそうで、2作が同時受賞することになったという。
壇上に上がった想田監督は、記念撮影でうれしそうにピースのポーズを決め、「145分のドキュメンタリーで、ナレーションも音楽もないのに、観客の方が好いてくれた。これは最高の栄誉だと思います」と満面の笑顔で語った。また監督のパートナーでもある柏木規与子プロデューサーは、「題材が(フランスでも人気のある)牡蠣だったのが良かったかなと思いました」と語り、笑いを誘った。
「ハッピーアワー」の高田聡プロデューサーも、「観客から支持される賞を頂くことができてとてもうれしいです。まずは濱口監督と、最後までカメラの前に立ってくれた出演者のみなさんにお伝えしたい」と語った。また今回パリに来ることができなかった濱口監督は映画.comのためにコメントを寄せてくれた。「ソレイユドール賞受賞、とても光栄なことです。目の肥えたパリの観客の投票で選ばれる賞、ということで素直に誇らしく思います。これをきっかけにまた多くの観客に『ハッピーアワー』が出会いますよう。メルシーボークー!」
審査員が選ぶ審査員賞には、富田克也の「バンコクナイツ」が選ばれた。審査員を代表してスピーチをした作家、ジャーナリストのジュリアン・ベクールは、「今年のセレクションはとてもバラエティに富み、強力だったと思う。感情面でも暴力的でありながらも可笑しかったり、メランコリックだったりといろいろだった。そのなかでも「バンコクナイツ」は、いま言ったようなさまざまなクオリティを併せ持っていると同時に、とてもオリジナルなやり方で観客を旅に誘ってくれる。タイの売春に関する慎みのある視点と感情を揺さぶるキャラクターたち、そして異なる文化の背景のなかで日本人の姿を浮きあがらせ、違う視点から日本社会を描いている点に惹かれた」と評価した。
授賞式後、審査員と話したという富田監督は、「新しい映画の息吹を感じたと言われました。ずいぶん深い理解のもとに観てくれていることがわかって、とてもうれしかったです」と語った。
また審査員賞とはべつの顔ぶれで構成されたメンバーが選んだ映像賞は、「俳優 亀岡拓次」に送られた。こちらには黒沢清の「ダゲレオタイプの女」で撮影監督を務めたアレクシ・カビルシーヌと、諏訪敦彦がフランスで撮影した次回作で撮影監督を務めたトム・アラリがいた。アラリは授賞の理由を、「映像は演出術など他の要素とも繋がっており、映像だけを切り離して考えることはできない。本作は、派手さはないものの映画制作の現場を題材にしたユーモラスな場面や幻想的な場面などが映像により的確に表現されているところに力を感じた」と語った。
授賞式は終わったものの、各作品の上映は21日までパリでおこなわれ、その後リヨン、サン・マロ、ストラスブールなどの地方都市に巡回し、2月16日に幕を閉じる。パリのみならず、フランス国内各地で観客に多彩な日本映画が届けられる、絶好の機会であることは間違いない。(佐藤久理子)
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
犯罪が起きない町で、殺人事件が起きた――
【衝撃のAIサスペンス】映画ファンに熱烈にオススメ…睡眠時間を削ってでも、観てほしい
提供:hulu
映画料金が500円になる“裏ワザ”
【知らないと損】「映画は富裕層の娯楽」と思う、あなただけに教えます…期間限定の最強キャンペーン中!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
【史上最高と激賞】人生ベストを更新し得る異次元の一作 “究極・極限・極上”の映画体験
提供:東和ピクチャーズ
予想以上に面白い!スルー厳禁!
【“新傑作”爆誕!】観た人みんな楽しめる…映画ファンへの、ちょっと早いプレゼント的な超良作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。