軍事アナリスト小川和久&「FAKE」森監督、「アイ・イン・ザ・スカイ」が象徴する“戦争の合理化”に警鐘
2016年11月29日 15:00
[映画.com ニュース] ヘレン・ミレン、故アラン・リックマンさん、アーロン・ポールの共演で、軍事用の無人戦闘機(ドローン)を使った現代の戦争の裏側を描くサスペンス「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」の公開記念トークショーが、11月28日に東京・渋谷のユーロライブで開催。ゲストの軍事アナリストの小川和久氏と「A」「FAKE」で知られるドキュメンタリー監督・森達也が意見を戦わせた。
ナイロビに潜伏しているテロリストを捕獲するため、イギリス軍のキャサリン・パウエル大佐(ミレン)は国防相のベンソン中将(リックマンさん)と協力して、ドローンを使った英米合同軍事作戦を指揮している。そんななか、標的のテロリストが大規模な自爆テロ計画を準備していることが判明し、英米軍は“民間人を巻き添えにしてもテロリストを爆撃するか否か”という究極の決断を迫られる。
小川氏と森監督は、「非常に重い映画。人間が永遠に悩む問題に対し、1つの答えを突きつけているから重い。重いからこそ評価が高い」(小川氏)、「色々なジレンマが戦争にはあると感じたが、本作はまず理屈抜きに無茶苦茶面白い。傑作だと思います」(森監督)と本作のクオリティを絶賛する。それぞれに「命令を下す側(指揮官)」「命令される側(ドローン・パイロット)」の立場に分かれてシミュレーションを開始。小川氏が「躊躇(ちゅうちょ)なく攻撃を命令しちゃう。躊躇しているのは、当事者じゃないから。(テロリストを攻撃した場合に巻き添えになってしまう)少女の目を見ないようにして命令を下すだろう」と答えたのを受け、森監督も「パイロットだとしたら押します。こうした事態も含めて、メンタルトレーニングしていると思う。どっちがましかという話ですよね。すさまじいプレッシャーや引き裂かれる思いはあるし、映画を見ていてもパイロットには感情移入した」と感想を絡めて語った。
小川氏は、同じくドローン戦争を題材にした「ドローン・オブ・ウォー」を引き合いに出し、「『ドローン・オブ・ウォー』で強調されたのは、パイロットは常に躊躇するという点。本作では、人権意識をどう整理するかを今一度考えられた」と語りつつ、映画「ブラックホーク・ダウン」でも描かれたソマリアの将軍の捕獲作戦の失敗が転換期となり、「人的被害を避ける」ためにドローンの投入が加速されたと解説した。小川氏の言葉に聞き入っていた森監督は「戦争は最大の矛盾。人類は進化しているのに、なぜ今だに戦争をしてしまうのか。ジレンマの集大成が、ドローンによって表れてしまった」と考察。「人を殺す実感がない」(森監督)ドローン投入に象徴される“戦争の合理化”に警鐘を鳴らしていた。
「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」は、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」や、オスカーに輝いた「ツォツィ」のギャビン・フッド監督がメガホンをとり、「キングスマン」や「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」でも活躍するコリン・ファースが製作を務めた。12月23日から全国公開。
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