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李相日監督への揺らぐことなき信頼感……渡辺謙×宮崎あおい“父娘”の告白

2016年9月15日 17:00

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親子を演じた渡辺謙と宮崎あおい
親子を演じた渡辺謙と宮崎あおい

[映画.com ニュース] 吉田修一氏の問題作「怒り」が李相日監督のメガホンによって映画化され、大人の鑑賞に耐え得る142分の長編作として完成した。日本映画界を代表するオールスターキャストが結集したことでも大きな話題を呼んだが、映画.comは今作で親子を演じた渡辺謙宮崎あおいに話を聞き、妥協を許さぬ鬼才・李監督と対峙した“千葉パート”を振り返ってもらった。(取材・文/編集部、写真/堀弥生)

映画は、「怒り」という血文字を現場に残したまま未解決になった殺人事件から1年後が舞台。整形手術をして逃亡を続ける犯人の行方が不明のまま、東京、千葉、沖縄に身元のはっきりしない男が現れる。渡辺と宮崎が出演した千葉パートは、漁港で働く槙洋平(渡辺)が、家出して新宿・歌舞伎町の風俗店で働いていた娘の愛子(宮崎)を連れ戻すところから始まる。普通の生活に戻った愛子はやがて、漁港で働き始めた田代(松山ケンイチ)と付き合うようになるが、洋平は娘の幸せを願う一方で前歴不肖の田代の過去を信用できずに苦悩するという設定だ。

渡辺は千葉パートを「距離感が生命線だと思っていた」という。「親子としてただ距離を近づけるだけではなくて、そこに大きなわだかまり、踏み込めない、理解できない壁があるなかで、そういうものをない交ぜにした距離感を『このシーンはこういう距離感です!』というところではない部分で醸し出さなければならなかった。僕も出来るだけ扉を開けながら、あおいちゃんも心の扉を開けてほしいなって願っていましたね」。口数が決して多い方ではない宮崎だが、千葉の現場では何をするでもなく渡辺のそばで過ごすことが多く、劇中と同じように「お父ちゃん」と呼んでいた。

「宮崎あおいのむき出し」を求める李監督の要望に応えるため、体重を7キロ増やして撮影に臨んだ宮崎。李監督からの出演オファーにはビックリしたそうで、「台本を読んでみたら、今まで自分がいただいたことのない役だったので、どうして私にこの役をくださったのだろう…と考えてしまいました。でも、すぐに挑戦してみたいという気持ちになりました」と明かす。“愛娘”の横顔をじっと見入っていた渡辺だが、納得がいくまでとことん粘る李監督の演出に話題が及び、宮崎が「とにかく悩みましたね。監督は『こうしてください』とはおっしゃらない方なので」と話すと、後を引き継ぐ。

「ちょっと笑顔を浮かべながら、『なんなんでしょうねえ』みたいな……、そんな疑問は投げかけてくるなよ! って思うよね。式を出してくれればなんとか答えを見出そうとするんだけど、式も出してくれませんから。ただね、『こうしてほしい』というものが“ない”というと語弊があるけれど、彼はきっと『それを言っちゃあおしまいよ』と思っているんでしょうね。それは生まれてくるものだし、にじみ出てくるものだし、噴き出てくるものだから。あっちこっちを押すものではなくて、『あなたが出すものでしょう?』って思っているから、『そこを押してごらん』とは言わない。多分、そこを押したら出るだろうとも思っていないから、時間はかかるし、悩みは深い。だからこそ、最後の最後に彼が口にする『そうですね、OKです』というのは非常に正直なので、信用できるんです。彼が本当に『大丈夫です』と言ってくれたことに対する信頼は非常に高いですよ。そこに嘘はありませんから」。隣でじっと聞き入っていた宮崎が「本当に、おっしゃる通りですね」と微笑を浮かべると、渡辺は我が意を得たりとばかりに破顔一笑してみせた。

渡辺は、「許されざる者」を撮影中の2012年10月、北海道上川郡上川町に作られた広大なオープンセットで、李監督について「『フラガール』から『悪人』が3年、『悪人』から『許されざる者』も3年。自分が描きたいものが出て来るまで待てる誠実さは、尊敬に値する」と筆者に語っている。そして、「許されざる者」と「怒り」も公開年度で数えると3年。土砂降りの雨のなか、血みどろの特殊メイクをほどこした渡辺が、大雪山まで訪れた記者団に「『許されざる者』ってさ、こういう道しか歩いたらいけないんだよ」と語りかけたことは、今でも語り草になっている。「僕たちが『許されざる者』だったよね(笑)。李組のタイトルは、必ずスタッフの気持ちを代弁しているのかもしれないなあ。『怒り』って。ははははは。李相日は、わざわざそういう題材を選んでいるんだよ」(渡辺)。

ジョークの応酬を時おり挟みながら、それでも2人の李監督に対する強い思いは疑問の余地がないほどだ。そしてそれは、完成した作品がすべてを代弁している。「李相日の作品というのは、常に答えを求めない。見終わって『さあ、何を食べに行こうか』と口に出せない、悩ましさみたいなものを最後に投げかけて後ろ髪を引かれながら劇場を出ていくじゃないですか。そういうものって、映画として僕はあるべきだと思っているから、口はばったい言い方になってしまいますが、李相日という監督は財産だと感じています。どんな形でもいいから、彼が撮りたいものを撮りたいように撮らせてあげられる環境を、いつだって作ってあげたいなと思ってしまうんだよね。なんかね、常に応援したいと思っているんですよ」(渡辺)

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