「火花」をどうやって映像化?すべてを知る男・古賀プロデューサーが“裏話”を明かす
2016年6月17日 12:00

[映画.com ニュース] お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹の芥川賞受賞作を実写化したNetflixの連続ドラマ「火花」(配信中)の統括プロデューサーを務めた古賀俊輔氏が、映画.comのインタビューに応じ、裏話を語った。
売れないお笑いコンビ「スパークス」の徳永(林遣都)が、独自のお笑い論をもつカリスマ的な先輩芸人・神谷(波岡一喜)と出会い、共に上京して売れようともがく10年間を描く。「15年の6月くらいにお話をいただいて、納品が明けた3月末だと。残り10カ月くらいしかなかった」と振り返った古賀氏は、190の国と地域で配信される強みや「クリエイターズ・ファースト」と呼ばれる製作者の意図を尊重するNetflix独自のスタイル、Netflix Japanのデイビッド・リー副社長から「逃げないで(自由な表現を)やってほしい」と声をかけられ、限られたスケジュールで最良の作品を生み出すための制作体制を構築していく。
「(監督やスタッフが)10話分の準備をしてから現場に入るのを待っていられない。となると、ベースのスタッフは全部同じで、各セクションの中で準備している監督が交互に参加するのはどうか」と複数の監督体制に希望を見いだし、「きちんとした人間ドラマを撮ってくれて、なおかつスピード感に対応できて実績もある監督」と廣木隆一監督に“総監督”として白羽の矢を立てた。「廣木総監督には頭のエピソードでトーンを決めて、最終話で締めてもらう。(その他は)廣木監督よりもひと世代下で、においがあり、かつ特徴がある人たちに声をかけました」。
さらに、「廣木監督とは盟友ですから、台本を作る段階で監督のにおいが入っている」という加藤正人を脚本統括に任命し「加藤さんが全体のトーンを決めて、各監督とキャッチボールしてもらった。脚本家はこれ以上崩したらだめというのがわかっている」という体制を作り上げ、世界観の統一と各監督の持ち味の共存を図ったという。スタッフ陣の結束が伝わるエピソードとして「監督陣や脚本チーム、スタッフみんなで吉祥寺で決起集会をやって、その後(神谷の同せい相手)真樹(門脇麦)の家まで行くぞ、まず(距離感を)体感しようって言って上石神井までみんなで歩いた。途中で迷っちゃったんですけどね(笑)。それが作品にも生きていると思うんです」と明かした。
製作に当たっては「原作小説を10話分に膨らますこと」も大きな課題だった。又吉とのディスカッションの中で、世界観に対するこだわりを感じ取った古賀氏は「小説は全部徳永目線で、本作もそう。普通は息切れするから絶対やらないんですが、廣木総監督と話して小説と同じようにやろうと決めました。となると、徳永の私生活を(より深く)描くしかない。又吉さんからもアルバイトをしていたときのエピソードや事務所との関係など、“あるある”をもらって盛り込んでいきました。本作では、1シーンだけ神谷の単独シーンがありますが、(徳永がその場にいないシーンは)それ以外はないんです」と明かす。結果的に「原作にないシーンでぐっと来た」と又吉からもお墨付きをもらったと胸を張った。
キャスト陣においては、「大阪弁が元から話せる人」という又吉の要望を受け、「この作品のためにスケジュールを全部空けてくれた」という林と波岡を徳永と神谷に配し、両者の相方を演じる漫才師をオーディションで選考した。なかでも、徳永の相方・山下に抜てきされた「井下好井」の好井まさおは「シンデレラボーイ」だという。「好井くんはオーディションで(受験者の)相手役をやっただけなんです。彼が相手によって(演技が)変わっていくのをずっと見ていて、廣木総監督が『あいつが1番面白くないか?』と言った」。
林と好井の漫才は「最初は下手でヤバいなと思った(笑)」というが、「最終話で原作にもあるお客さんの“泣き笑い”を撮られるのかというのがあって、それを体感できるようになるべく順撮りでスケジュールを組んだんです。遣都も好井くんも撮影の間中ずっと練習していて、最終的にはスタッフが(解散ライブシーンに感動して)全員泣いたんですよ。あんな現場を見たことがない」と2人の成長ぶりと、出演者とスタッフが一体となった光景に舌を巻いたという。
「火花」は、廣木総監督のほか、白石和彌監督、沖田修一監督、久万真路監督、毛利安孝監督が各話の演出を手がけた。Netflixで世界190カ国に一挙配信中(全10話)。
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